<紫外線での肌トラブルが本格化するこの季節>トマトジュースの摂取で紫外線により暗くなった肌の色調の回復が促進される可能性があることを確認
<第30回日本カロテノイド研究談話会(2016年6月25日~26日)で発表>
肌は、紫外線を浴びると炎症による赤みを帯び、これは紅斑(こうはん)と呼ばれています。さらに、肌の色調が暗くなりますが、この程度は特に紫外線の照射1日後までに著しいことが知られています。
■本研究の目的
トマトは、リコピンなど強い抗酸化作用をもつ成分を多く含みます。そのため、紫外線を浴びることにより皮膚で発生する活性酸素を消去することで、肌の赤みやその後の色素沈着などの皮膚のダメージを予防・軽減する効果を示すことが期待されています。実際に、海外の研究機関による試験においては、トマトペーストの摂取が、紫外線によって生じる肌の赤みを抑制することが報告されていました。
そこで本研究では、トマトジュース(160 g当たりにリコピンを12 mg含む)と、高リコピントマトジュース(160 g当たりにリコピンを24 mg以上含む)を使用し、肌質の異なる日本人でも同様の効果が見られるかを、肌の赤みと明度とを指標に検証しました。
■結果
今回の試験では、海外の先行研究から期待された、紫外線を浴びることで生じる肌の赤みをトマトジュースの摂取が抑制する効果は認められませんでした。一方で、紫外線照射後に低下した明度の改善が確認されたことから、トマトジュースの継続飲用(12週間)は、紫外線により暗くなった肌の色調の回復を早める可能性があると考えられました。本効果の有効成分については、今後検討して参ります。
<まとめ>
◆トマトジュースの飲用により、日焼けにより暗くなった肌の色調の回復が促進される可能性があることをヒト試験により明らかにしました。
◆本研究成果は第30回日本カロテノイド研究談話会(2016年6月25日~26日)にて発表しました。
■方法
25歳以上50歳未満の健康な日本人の男女75名に12 mgのリコピンを含むトマトジュース、24 mg以上のリコピンを含む高リコピントマトジュース、そして対照として2 mg以下のリコピンを含むトマト漿液飲料のいずれかを1日160 g(一缶)、12週間摂取していただき、上腕の内側に紫外線を照射した後の肌の赤みと明度(L値)とメラニン量(メラニン・インデックス)を経時的に測定することで肌の色調を評価しました。
■結果
①紫外線照射後の肌の赤みに与える影響
トマトジュースを飲んだ方と対照群であるトマト漿(しょう)液(えき)飲料を飲んだ方を比較して、肌の赤みに有意な差は確認できませんでした。赤みを抑える効果を報告している海外の研究では、紫外線を浴びると肌が赤くなり、その後に白く戻る肌質を持つ被験者を対象としていましたが、今回は紫外線を浴びると肌が赤くなり、その後黒くなる肌質を持つ日本人を対象としています。この肌質の違いから、日本人では赤みに対する顕著な効果が見られなかったと考えられます。
②紫外線照射後の肌の色調の低下に与える影響
トマトジュース(トマトジュース、高リコピントマトジュース)を飲んだ方は、対照群であるトマト漿液飲料を飲んだ方に比べて紫外線を浴びることにより暗くなった肌の色調の回復が促進されることがわかりました。
また、L値はメラニン量(メラニン・インデックス)と逆相関を示すことが知られています。本試験においても紫外線照射28日後のL値とメラニン量には、有意に高い逆相関が見られ、L値の変化はメラニンの生成と関与していることが示唆されました。このことを踏まえると、本試験において見られたトマトジュースの飲用によるL値の回復は、肌のメラニン量の減少によるものであると推察できます。
■トマトジュースの飲用による肌の色調の回復を改善するメカニズム
本試験において、紫外線により低下したL値の回復が改善したメカニズムとして、①メラニンの生成が抑制されたことと、②ターンオーバーが促進されたことが考えられます。
①メラニンの生成抑制
紫外線を浴びるとメラニンが肌の内部で生成され、表皮に移行することで肌の色が決まります。本試験では、トマトジュースに含まれる成分により、メラニンの生成が抑制された可能性が考えられます。
②ターンオーバー(新陳代謝)の促進
メラニンは肌のターンオーバーに伴い肌表面に押し出され、排出されると言われています。本試験では、ターンオーバーが促進されたことでメラニンの滞留が減少したことが考えられます。
■まとめ
トマトジュースの継続飲用(12週間)は、紫外線により暗くなった肌の色調の回復を早める可能性があることを確認しました。
■今後の展望
今後は、今回の試験では解明に至らなかった、肌の色調の回復を促進する有効成分やその作用メカニズムについて検証して参ります。
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