6月の訪日客、前年割れの真相
~「中国だけ」と切り捨てるのは早計だ JNTO2026年6月推計値から
7月15日、日本政府観光局(JNTO)が発表した2026年6月の訪日外客数推計値は314万8,600人。前年同月比▲6.8%、人数にして▲22万9,385人の減少だった。
ニュースの見出しは軒並み「中国の落ち込みが響いた」。間違ってはいないが、それだけで片付けてしまうのは正直もったいない。
思えば、訪日外国人消費動向調査の目玉だった「一番満足した日本食」ランキング。寿司からラーメンへ、ラーメンから肉料理へ。国ごとに好みが移り変わる様子を毎回楽しみに追いかけていたが、あの調査は2024年で終了してしまった。国別の面白さを追いかける場所がまた一つ減ったな、と寂しく思っていたところに今回のニュースがあり、「これはまだまだ国別に数字を追う価値がある」と感じたので改めてレポートしたい。
中国だけで、総数の減少幅を上回っている
2025年6月の中国からの訪日客は79万8,001人。それが2026年6月には34万700人。1年で▲45万7,301人、率にして▲57.3%という急落だ。
ここで気づくのが、総数の減少幅(▲22万9,385人)よりも、中国単独の減少幅(▲45万7,301人)の方がはるかに大きいという事実。つまり中国以外の国・地域を全部足し合わせると、実は+22万7,916人、率にして+8.8%の増加になっている。
中国以外は、押し並べて好調
主要な国だけを見ても、二桁近い伸びが並ぶ。
インド +26.1%
中東地域 +29.7%
北欧地域 +20.6%
スペイン +12.9%
英国 +8.0%
イタリア +6.8%
ロシア +7.1%
マレーシア +6.4%
カナダ +5.8%
唯一マイナスだったのはドイツ(▲14.3%)。ただし月次で見ると4月も▲15%。1月は+44%と振れ幅が大きく、構造的な下降トレンドとは考えにくい。
つまり今回の「前年割れ」は、中国という一国の急落が、他の多くの国の伸びを打ち消してなお余りあるほど大きかった、というのが実態に近い。
「まさか昨年の万博効果の反動では?」を検証
2025年4月から10月まで開催された大阪・関西万博。「あの押し上げがあったからこそ、その反動で今年は苦戦しているのでは」と考えたくなるところだが、これも数字を見る限り根拠は薄い。
万博期間中(4~10月)の前年同月比の平均は+15.7%。それ以外の期間(1~3月、11~12月)は+17.0%。むしろ万博期間外の方がわずかに高く、万博が総数を特別に押し上げていた形跡は見当たらなかった。
数字が語るのは「多角化」の物語
中国のウェイトが依然として大きいのは事実だが、他の市場が着実に育ってきていることも、今回のデータははっきり示している。インドや中東、北欧といった、これまで存在感が薄かった市場が二桁成長を続けているのは、中長期で見れば喜ばしい変化だ。
「中国減速=インバウンド失速」という単純な図式に乗っかる前に、自分たちの商圏に来ている(あるいは来ていない)国籍構成を一度見直してみてはどうだろうか。

余談:終了したあの調査でも、中国の「変化」は数字に出ていた
そういえば、と思い立ち、終了前最後の年となった2023年の「一番満足した日本食」データ(訪日外国人消費動向調査)を掘り起こしてみた。これがまた実に面白い。
肉料理(焼肉・ステーキ・しゃぶしゃぶ等)を選んだ人の割合を年ごとに追うと、近隣4カ国はすべて右肩上がりだが、伸び幅は中国が頭一つ抜けている。

|
肉料理 |
2015 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2023 |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
中国 |
16.9% |
16.9% |
20.4% |
24.0% |
28.7% |
41.1% |
|
香港 |
23.9% |
22.3% |
24.3% |
29.3% |
34.2% |
36.1% |
|
台湾 |
16.1% |
19.0% |
21.1% |
26.1% |
29.1% |
33.6% |
|
韓国 |
24.4% |
28.2% |
27.8% |
29.2% |
31.7% |
32.3% |
2015年には近隣4カ国の中で最下位クラスだった中国が、2023年には調査対象20カ国・地域の中でトップの41.1%にまで駆け上がっている。
一方で中国における寿司支持率は2015年14.3%から2023年11.6%へとじわじわ低下。ラーメンも2018年の23.1%をピークに、2023年は15.1%まで下がった。
2015年、2019年と2023年を比べると、伸びる国・沈む国がはっきり出る

この表は前述の、2024年1~3月まで実施されていた「訪日外国人消費動向調査」の日本食に対するアンケート結果である。2015年、2019年と2023年を比較すると、例えばインドとフランスでは、この4年でラーメンの人気が急激に高まったことが読み取れる。
インドは11:0%→15.9%→22.8%、
フランスは11.6%→17.8%→23.5%と、いずれも2倍前後に上昇している。
また、ロシアでは寿司の人気が失われた。2019年に33.3%あった支持率が、2023年にはわずか13.8%と、半分以下にまで急落している。
実際に私どもは2024年からパリに3店舗のラーメン店をオープンし、このデータの通りの展開を成功裏に実現している。
→当時、発表していたレポート「2023年訪日観光客消費動向調査を読み解きます」 https://blog.assentia-hd.com/inbound2.0/20240330
インバウンド上位4カ国の「好きな日本食」トップ3、2015年からの変遷
最後に、インバウンドの数として上位4カ国(韓国・台湾・香港・中国)に限定して、2015年からの「好きな日本食」上位3位の内容を並べてみた。インバウンド相手の外食事業を国内で行う上では、非常に重要な情報だと思う。

統計の中から、自社の勝機を見出してほしい。
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