名張毒ぶどう酒事件再審棄却―真実から目を背ける司法の判断

強要された自白が新証拠を退ける

強要された自白で死刑判決を受け投獄されて40年有余年、奥西勝さんは、世界でも最年長の死刑確定者だ。その再審請求が棄却された。一貫して無罪を訴えてきた奥西さんは、現在医療刑務所内の病床にある。今回の棄却により、罪が晴れないまま亡くなる可能性が高まっている。当局は時間切れになる前に、事実と向き合い、再審という正義を果すべきである。
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最高裁は10月16日、奥西確定死刑者(87歳)の再審請求を棄却した。これは再審請求が訴える事実から目をそむけ、果たすべき正義を怠った茶番である。アムネスティ日本は、この決定に対して強い懸念を表明するとともに、日本の司法プロセスに大きな疑問を投げかけたい。

奥西さんは1961年、毒物を混入したぶどう酒を飲ませ5人の女性を殺害したとして、逮捕された。弁護士に相談もできず、5日間にわたる長時間の警察の取調べの中、犯行を「自白」をした。

今回の再審請求では、実際にぶどう酒に入れられた毒物が、奥西さんが自白した農薬だったのかが争点となったが、最高裁は、弁護側による別の農薬の可能性を示した鑑定結果は奥西死刑確定者の自白の信用性に影響を及ぼさないと判断した。

奥西さんが「自白」を撤回した一審で、裁判所は証拠が不十分だとして無罪判決を下した。しかし、高等裁判所でこの判決は覆り、死刑が言い渡された。今回の再審請求棄却は、最高裁判所も「自白」を取り消したとしても最初の自白の信憑性は損なわれない、と判断したということになるだろう。

強いられた自白に基づき死刑を言い渡された死刑確定者は、奥西さんだけではない。現在、日本の死刑確定者は130人を超え、過去半世紀で最も多い水準にある。なかでも最も差し迫っているのは、1968年に死刑を宣告された袴田巌さんのケースである。

袴田さんは、世界で最長となる47年もの間、死刑確定者として拘束されてきた。そして、長年の独居拘禁生活で、精神を病んでいると言われている。

袴田さんも、警察署で20日間にもおよぶ取調べを受けた後に「自白」した。裁判の中で自白を撤回し、取調べ中に暴行を受け脅迫されたことも明らかにした。証拠の信憑性もあいまいだった。しかし、自白をもとに裁判は進み、勤務先の上司とその妻らを殺害したとして有罪となった。

死刑判決を言い渡した3人の判事のうちの1人は、袴田さんは無罪であるとしていた。

現在、第2次再審請求中だが、その過程で、犯行時の着衣とされた衣類に付着した血痕は、袴田さんのDNAとは一致しなかったことが明らかになった。有罪となった根拠の土台を揺るがす新証拠である。

アムネスティは、死刑制度の廃止はもちろん、真実を歪める自白の偏重や、長時間の苛酷な取調べなどを含め、日本の司法制度が、人権を尊重し国際基準に適ったものとなるよう、これからも求めていく。

 

▽名張毒ぶどう酒事件について

http://www.amnesty.or.jp/news/2013/1018_4240.html

 

▽袴田事件について

https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/hakamada_201310.html

 

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03-3518-6777
代表者名
阿部 理恵子
上場
未上場
資本金
-
設立
1970年04月