第8回「こども食堂の現状&困りごと アンケート」調査結果発表
~ 5類感染症への変更後、会食形式の実施がコロナ前の7割まで回復。一方、物価上昇等による影響で費用負担も増加傾向~
<アンケート結果サマリ>(回答数:742人)
「会食形式(複数活動も含む)」が前回調査結果から21.8pt増加の70.6%
5類感染症への変更後に「会食形式のこども食堂を同程度の規模で開催」が46.6%、「規模もしくは頻度を拡大」が21.1%
今後、感染状況がさらに落ち着いた場合でも食材配布の実施意向は90.7%
「必要な人(貧困家庭など)に支援を届けること」に困りごとを感じているこども食堂が56.3%と最も多く、続いて、「運営資金の不足」が49.6%となり、前回と同様の傾向
「物価上昇による影響を感じている」が88.3%と前回より5.6pt上昇
物価上昇によってこども食堂を開催するにあたり、「何等かの変更をしている」のが9.3%・「する予定」と回答しているのが15.4%で、合わせると24.7%
物価上昇による変化として77.3%が「費用の負担が増えた」と回答
物価上昇による行政支援は34.2%、民間からの物資・資金支援が増えた食堂は4割を超える
■会食形式のこども食堂を開催していると回答した割合は70.6%でした(上記図3参照、会食形式のこども食堂「これまで通りみんなで一緒に食べる」35.0%、会食形式のこども食堂「これまでと異なり人数制限、屋外開催などをする」2.8%、複数活動「会食形式のこども食堂を含む」32.8%の合計)。昨年10月から11月に実施した前回(第7回)調査と比較すると、こども食堂を開催している割合48.8%から、21.8pt増加する結果となりました。
■一方で、今後、感染状況がさらに落ち着いた場合での食材やお弁当配布の実施意向は90.7%ありました。食材配布の規模や頻度を、現在の同規模以上で実施したいとの回答も72.6%で、高水準となりました。
■その理由としては、「食材配布やお弁当配布の活動を続けてほしいという利用者ニーズが大きいから」(62.7%)、「食材配布やお弁当配布の活動を通じてつながりたい人と繋がれたから」(59.1%)との回答が寄せられました。
■物価上昇による影響を感じているとの回答が計88.3%となり、前回の82.7%より5.6pt上昇しました。そのうち、「物価上昇前と比べて開催頻度や料金、食事の内容を既に変更している」との回答が9.3%、「変更する予定」との回答が15.4%で、合わせると24.7%となり、前回調査の21.0%から3.7pt増えました(上記図10参照)。
■物価上昇の影響を感じつつも、6割を超える63.6%のこども食堂が、これまで通りの頻度、内容を継続しています(上記図10参照)。
■こども食堂が抱える困りごととしては、「必要な人(貧困家庭など)に支援を届けること」を選んだこども食堂が56.3%と最も多く、「運営資金の不足」(49.6%)が続きました。困りごとの傾向は、前回調査と同様であることがみてとれます。
第8回こども食堂の現状&困りごとアンケート調査結果(PDFリンク)
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2023/07/musubie_Q8_sheet_0718.pdf
★2023年7月18日(火)16:00~17:00に報道機関の記者の皆様を対象とした懇談会・本アンケートの報告会を実施いたします。参加ご希望の方は本リリース下部のお問い合わせメールアドレスまでご連絡ください。
※本イベントはメディア関係者様のみご参加いただけます。
【調査概要】
回答期限:2023年06月07日(水)~2023年06月21日(水)
回答対象:各地の「こども食堂の地域ネットワーク」および「こども食堂ネットワーク」とつながるこども食堂
回答数:47都道府県 742件
実施:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
【調査内容】
■第1部:こども食堂の現状&困りごとアンケート vol.8
・こども食堂開始年
・こども食堂の運営母体
・アンケート回答時点のこども食堂の開催状況、開催していない理由
・会食形式のこども食堂の再開時期
・コロナ5類感染症変更前後における変化
・活動に関する困りごと
■第2部:物価上昇によるこども食堂への影響
・物価上昇による変化
・支援の状況
・物価上昇による困りごと(自由記述)
■第3部:活動に関する困りごと(自由記述)
◇ ◇ ◇
■本アンケート結果を受けての今後の活動
今回のアンケート結果は、上記の通り、会食形式のこども食堂を開催している割合が70.6%となり、「コロナがあけたらみんなで食べたい」という願いが叶った食堂があることをうれしく思いました。一方で、会食実施を悩んでおられるところ、会食をスタートしたけれどやむを得ずパントリーと併用しているところ、ボランティアの負担が増えてしまっているところ、資金や物資の調達に苦労をされているところ、本当にたくさんの状況や思いがあることも同時に明らかとなり、言葉で言い表せない気持ちになりました。
むすびえは、そんなこども食堂の皆さんの思いを受け止めて、皆さんと一緒に、地域につながりが紡がれる社会を作っていきたいと考えています。しんどさやとまどいの中にあるたのしさや希望を、少しでも感じてもらえるように。そんな思いで、以下の取り組みを企画しました。
1.みんなで一緒に過ごすたのしさを応援。
①最大500団体に対して「お菓子の詰め合わせ」をお届けします。
夏休みや秋の行楽シーズンの思い出が、ちょっとだけプラスされるように願いをこめて全国のこども食堂(北海道・沖縄・離島も含みます)に送ります。
https://musubie.org/news/7011/
②「おもちゃライブラリー」の希望団体を募集します。
みんなのつながりと笑顔のために、東京おもちゃ美術館と協働して「おもちゃライブラリー(第二弾)」を実施します。8月1日には第一弾実施団体から、活動の様子をうかがうとともに、第二弾募集の説明会を実施します。世界中のあたたかいおもちゃやゲームを通じて、こども食堂、家庭、お友達とのつながりづくりを応援します。
https://musubie.org/news/6993
2.安心・安全な運営を応援。
①会食や食材配布(フードパントリー)活動の不安な気持ちや悩みを語り合う場「『みんなどうしてる?』オンライン座談会」を開催します。
「会食は再開しつつも、3年あまりも継続してきた食材配付をやめられない。頼りにされていることも見えてきているのでできるかぎり継続していきたい。」そんな正直な気持ちや名状しがたい思いを語り合う場を作りました。不安な思いや戸惑い、葛藤を、みんなで分かち合います。
A)2023年7月19日(申込締切7月18日17:00)
https://musubie.org/news/6928/B)2023年8月3日(申込締切8月1日17:00)
https://musubie.org/news/7008/
②「こども食堂食品衛生なんでも相談会(仮)」を開催します。
夏場の食中毒やお弁当配布の不安を和らげるために、こども食堂運営者の皆さんが、直接専門家に相談できる機会を設けます。安心・安全な運営を後押しします。
(詳細は、確定次第ご案内します)
3.資金・物資の調達を応援。
②Amazonほしい物リストの作成をサポートします。
欲しいものを登録しておくと、Amazonユーザーから物資が届く仕組み「Amazonほしい物リスト」の登録完成に向けた作成方法をオンラインセミナーでお伝えします。食品だけでなく、衛生グッズや電化製品など、Amazonに出品されているものはなんでも登録ができます。
https://musubie.org/news/6984/
①内閣官房 「孤独・孤立対策活動基盤整備モデル調査」~アートによる社会包摂を通じた「福祉を超えた」協働モデルの構築事業を公募します。
こども食堂等のネットワーク(中間支援)団体が、地域の文化芸術団体とこども食堂を含む地域の居場所、孤独・孤立状態にある(ないし、そのおそれがある)人たちとつながりのある団体・機関・事業者の連携をコーディネートし、「アートを通じた社会課題解決」「アートによる社会包摂」のためのワークショップの実施を支援します。
https://musubie.org/news/6961/
◇ ◇ ◇
■むすびえ理事長 湯浅誠よりメッセージ
コロナの5類変更後、初めての調査でした。アンケートにご協力いただいたこども食堂のみなさま、告知にご協力いただいた地域ネットワーク団体のみなさまに深く感謝します。
今回、私たちの最大の関心事は、コロナ禍が始まった2020年4月の第1回アンケートでは約1割まで落ち込んでしまった「会食形式でのこども食堂」がどこまで戻ってきているか、でしたが、結果は7割を超えるところまで「復活」していました。コロナ禍は完全に収まったわけではありませんが、こどもたちがつながりを感じられる時間と空間を取り戻しつつあることを、まずは喜びたいと思います。
しかし、以下のように気になるコメントもありました。「子どもたちにとってのこの3年ほどは、取り戻せないショックで、特にその期間に卒業入学を迎えた子どもたちは、今も抜け出せないトラウマのようなものを持っているように思います」。こどもの居場所づくり、およびその環境整備は、単にコロナ禍前に戻す以上の「V字回復」が必要でしょう。
同時に私たちは、会食形式だけを顕揚するのではなく、弁当・食材配布を続けたいという方たちの意向、続けざるを得ない方たちの事情も等しく尊重します。その活動を通じて本当に支援を必要としている人とつながれたという実感や手応えは重要なものだし、止めてほしくないという利用者の方たちの声を無下にできないやさしさは、こども食堂を普及させた原動力であって、否定されるべきものではありません。私たちはみなさんと一緒に悩み考え、みなさんが納得感をもってそれぞれの道に進むことを、すべて応援します。
そして最後に、こども食堂を「貧困」と強く結びつけることへの懸念の声は、相変わらず多く寄せられました。それは地域みんなの居場所になるための〈つながりづくり〉を行っている多くのこども食堂の実態と異なるだけでなく、本当に困っている人をこども食堂から遠ざけることにもなります。
メディアや行政の方は、こども食堂に「貧困対策という枕詞」をつけようとするとき、次のコメントを思い出してください。
「貧困と子ども食堂を結びつけることによって支援が集まりやすいという側面はあると思いますが、それによって食堂に来にくくなる子もいて、結果的に子どもの利益にならないこともあります」「『貧困支援』を出してしまうと利用しにくい、自らが貧困者だと思いたくない、子どもがいじめにあう等、ネガティブなことが多く聞こえてきます。すると本当に支援をしたい方に益々届けにくくなるという負のサイクルに入ってしまいます」
こども食堂の多くは、みんなの中に困っている誰かをさりげなく包み込んでいます。その智恵もまたこども食堂の強みであり、社会の財産だと私たちは受け止めています。
むすびえ理事長 湯浅 誠
<プロフィール>
社会活動家。東京大学先端科学技術研究センター特任教授。
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。1969年東京都生まれ。東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1990年代よりホームレス支援に従事し、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。内閣官房社会的包摂推進室長、震災ボランティア連携室長など。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。2014〜2019年まで法政大学教授。
◇ ◇ ◇
【謝辞】
本アンケート実施にあたりご協力くださいました地域ネットワーク団体・こども食堂の皆さま、本当にありがとうございました。
また、今回の調査活動につきましては2022年12月~2023年1月にて実施しましたクラウドファンディング企画「コロナ、物価上昇にも負けずに活動する「こども食堂」の支援を通じて、子どもたちの育ちを支えたい。」にて集まったご寄付の一部を活用して実施させていただいております。改めまして、ご支援をいただきましたみなさまにも深く御礼申し上げます。
▼クラウドファンディングについて
https://congrant.com/project/musubie/5898
◇ ◇ ◇
【過去のこども食堂の現状&困りごとアンケート調査結果】
第1回 2020年4月13日~17日 実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2020/04/musubie_Q_sheet_0423.pdf
第2回 2020年6月19日~25日 実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2020/07/musubie_Q2_sheet_0713.pdf
第3回 2020年9月20日~28日 実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2020/10/musubie_Q3_sheet_1020_02.pdf
第4回 2021年2月1日~10日 実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2021/03/musubie_Q4_sheet_fix0312.pdf
第5回 2021年6月23日~7日実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2021/07/musubie_Q5_sheet_0716.pdf
第6回 2022年6月2日~16日実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2022/07/musubie_Q6_sheet_0701.pdf
第7回 2022年10月26日~11月9日 実施
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2022/12/musubie_Qvo7F_14.pdf
※過去に実施した全国子ども食堂実態調査とは調査方法及び回答数が異なっているため、比較分析の対象外としております。
第1回全国こども食堂実態調査 2021年10月15日から12月15日
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2022/03/a7043c68eccf433117d7c6238c32ac0e.pdf
【こども食堂とは】
地域食堂、みんなの家などという名称にかかわらず、子どもが一人でも安心して来られる無料または低額の食堂。「子どもの貧困対策」と「地域交流拠点」の2つの大きな軸があり、制度の裏付けはないが、箇所数は7,363(2022年12月現在)あることが明らかになっている。(参考:全国の小学校は約2万校、中学校は約1万校、児童館は4,000か所。)
「こども食堂が大事にしていること/これからも大事にしていきたいこと」https://musubie.org/news/5031/
【認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ】
代表者 : 理事長 湯浅 誠
所在地 : 東京都新宿区西新宿1丁目20番3号 西新宿髙木ビル7階
設立 : 2018年12月(2021年5月認定NPO法人取得)
むすびえは、ビジョンである「全国に広がるこども食堂を通じて誰も取りこぼさない社会をつくる」ために、こども食堂が全国のどこにでもあり、みんなが安心して行ける場所となるよう環境を整え、こども食堂を通じて、多くの人たちが未来をつくる社会活動に参加できるように活動しています。具体的には、こども食堂の実態を明らかにし普及・啓発する調査研究、各地域のこども食堂ネットワークを支援する地域ネットワーク支援事業、企業・団体とこども食堂支援を行う企業・団体との連携事業を行っています。2022年度は、のべ1,302団体に約5.2億円の助成を行った他、のべ11,052団体に対し約5.3億円(売価計算)の物資等支援を仲介した。
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