【イベントレポート】TENGA20周年記念企画　「松本光一展」　トークイベント『TENGAの始まり そして現在と未来』実施

「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」　TENGA誕生の発明の軌跡と開発者・松本光一の半生を辿る展覧会開催中！

株式会社TENGA（東京都中央区/代表取締役社長 松本光一） は、本年7月7日（月）に創業20周年を迎えます。TENGAが誕生して20年となるこの節目を記念して、6月20日（金）から25日（水）までの6日間、TENGAの生みの親で創業者・松本光一の“ひらめき”と半生を辿る展覧会「松本光一展」を、東急プラザ原宿ハラカド3階のBABY THE COFFEE BREW CLUB ギャラリースペースにて開催いたします。

開催初日の20日（金）には、松本光一本人が会場に登場し、「カルチャーと⽂化を、接続する」を使命に掲げるクリエイティブ集団Qetic Inc. 宍戸麻美 代表とトークイベントを開催しました。会場は、TENGAのファンの皆様をはじめ、メディアや関係者など100人に及ぶ人たちで席が埋め尽くされ、これまで TENGA 誕生の裏側や歩んできた20年の道のり、今後のビジョンなど、注目の話題を来場者と共有しました。

創業20周年を記念し、弊社創業者で TENGA を生み出した、松本光一の “ひらめき” をたどる本展では、TENGA誕生の軌跡、数々のプロダクトが形になるまでの裏側、そして20年にわたるさまざまな挑戦に隠されたエピソードを紹介します。

TENGAは、かつて車の整備士だった一人の男が、ふと立ち寄ったアダルトグッズ店で感じた「違和感」から生まれました。

「性をもっとポジティブに、もっと自由に語れる社会を。」

その想いのもと、前例も前提もない道を切り開いてきたのが、TENGA創業者・松本光一です。

メインの展示となるギャラリールームでは、「松本光一のひらめき」をテーマに、発明の素となる数々のアイデアや、本邦初公開となる初期のTENGAデザインスケッチをはじめ、松本の思考の痕跡、そしてプロダクトに込められた想いを展示。さらに、TENGA誕生の原点とも言える、松本がたったひとりで製品開発に没頭した当時の「開発デスク」も再現。机に残る図面、道具、戦いの痕跡、そのすべてが、ひとつの発明が誕生するまでの“リアル”を語ります。

ギャラリールームに隣接する全長約8mのアートストリートには、TENGA20年の歴史とともに、松本光一が歩んできた20年の物語、世界を変えていくストーリーを詰め込みました。

「性」を、もっと想像的に、もっとポジティブに。本展を通じて、TENGAの原点、そしてこの先の未来まで。

――20年という時間を、一人の発明家の歩みとともに、あなたの五感で感じてみてください。

「松本光一展」　開催概要

展覧会名：松本光一展

会期：2025年6月20日(金)〜6月25日(水)　会期中無休

開催時間：11:00～21:00 ※最終日は18:00まで

会場：東急プラザ原宿「ハラカド」3F ギャラリースペース（東京都渋谷区神宮前6丁目31−21）

入場料：無料

本トークイベントの前半では、TENGA誕生から創業までの松本自身のさまざまな苦難や壁に突き当たりながらも乗り越えてきた半生と、発売初年に100万個売れるまでに至るストーリーについて、後半では創業後から現在に至るまでの歴史と描いた未来について語りました。

トークイベントダイジェスト

「TENGAの始まり 〜なぜ整備士だった男がTENGAを作ったのか〜」（前半）

人に喜ばれるものづくり、TENGAの原点

トークイベントで松本ははじめに、自動車整備士、中古車販売営業を経て、TENGA 開発・販売に至るまでの経緯を語りました。

松本は1967年 静岡生まれ。当時はスーパーカーブームで、フェラーリやランボルギーニといった名車に憧れ、自動車整備士に。愛知での自動車整備士時代には、修理・整備を経て、朽ちた名車をよみがえらせる“レストア”という仕事に夢中になります。

「一台一台分解して、お客さんのご希望に合わせてつくり上げていきます。レストア作業後に、お客さんにクルマをみせると、本心からよろこんでもらえたんです。こうした、よろこんでくれる姿を見るたびに、ものをつくる楽しさを実感しました。このとき感じた、人がよろこんでもらえる、笑顔になる、幸せになるものづくりが、TENGAの原点です」（松本）

究極まで追い込まれて気づいた『食』と『性』の大切さ

しかし、前途は多難です。クルマのレストア事業が軌道に乗り始めた当時、勤めていた会社が経営悪化し、ついには給与が得られない状態に陥ります。

「僕は自分が頑張ればこの会社は必ず良くなると信じ、全力で仕事をしていました。半年ぐらいは貰えてないので、家賃は半年溜まる、電気は毎月停まるようになっていきました。このころ、月の食費3,000円ぐらいでした。日に日に厳しくなっていって、どんどん自分が追い込まれていくなかで、人にとって『食』と『性』が、とても大切である。人がもともと持つ根源的で、すごく重要なことだと心の深いところで気が付きました」（松本）

世界中の人に喜んでもらえるプロダクトをつくりたい

松本は、レストア事業時代に追い込まれた愛知の会社を退社し、生まれ育った静岡に戻り、中古車販売の会社に転職し販売営業員として再出発します。レストア事業時代につくった多額の借金も抱えながらのリスタートで、必死に働きました。

「それまで12年、クルマの整備仕事で培った経験もあって、クルマを見ればその状態がよくわかったので、お客様に丁寧に説明していくと、入社した月から販売成績トップになり、久々に一般的な給料を貰えました。ようやく普通に暮らせるようになったころ、また“ものづくり”への想いがふつふつと沸いてきました。『いまは無いもの、新しいものをつくって、世界中の人に届けたい。世界中の人に喜んでもらえるプロダクトをつくりたい』…そういう想いが内側から湧いてきました」（松本）

ひとり調べまくって気づいた「商品の安心・親切・やさしさ」の大切さ

松本は、“ものづくりの喜び”を再び体得したく、ひとりで世の中のあらゆるプロダクトを手に取り調べていきます。休日には家電店、ホームセンター、自動車用品店など、いろんなところに行き、なにがヒット商品か、どんな販売手法があるか、いまユーザーが求めているニーズはなにか、新しい技術がどう活かされているか、デザインや広告表現のトレンドは……そのひとつひとつを、ひとりで調べていきました。

「たとえばパソコンは、メーカー各社それぞれが、新技術や特長を唄い、デザインも個性的でした。同時に、保証内容・保証期間・問い合わせ先など、ユーザーを安心させるすべてが記載されていて、とてもわかりやすくやさしくて、親切でした。つくり手も売り手も、良いものを届けようとしていました」（松本）

人への思いやりが削られていくなかで誓った3つのこと

究極まで追い込まれた松本は、“人に対する思いやり”が削られていくことに気づき、ひとり、3つの誓いを唱えます。

「思いやりが減るということはね、人間として半分失うということで、思いやりというのがいかに大切か分かりました、二度とそういうことはしないと誓ったんです。一つ目は『ものづくりで人に喜んでもらうことの嬉しさ』。二つ目は『食や性が人の根源欲求であり、すごく尊重されるべき重要なことである』と。三つ目は『思いやりの大切さ』です。追い込まれていくなかで、人に対する思いやりが減っていく。それは、人間として半分失うということ。僕はどんなに大変でも二度とそのようにならないと誓いました。人の根源欲求の大切さの部分がTENGAの基礎に大きく関係してきます。もちろんこの時に僕はそんなこと、まったく分かっていません」（松本）

そして TENGA 開発の原点に突き当たる

松本は久しぶりにビデオショップに行くと、「違和感と不安な気持ち」を抱き、衝撃的な発見に出会います。このときがまさにTENGA開発の原点となります。

「ビデオショップのアダルトグッズコーナーに入り、すぐに違和感と不安な気持ちになりました。その違和感の原因はすぐにわかりました。それは、それまで見てきた家電店等とは異なり、ここにあるアダルトグッズ類は、メーカーもブランド、そしてデザインも、存在しませんでした。さらに、会社名、保証、問い合わせ先も記されてない。バーコードや生産国なども記されてないものもありました。これでは安心して楽しく使えない。このとき、『これがアンダーグランドなんだ』と気づきました」（松本）

性は人にとって大切で尊重すべき根源欲求、強烈な決心がここで

松本は、その当時ひっそり販売されていた既存のアダルトグッズをみて、「性は人にとって大切で尊重すべき根源欲求である」と確信します。その店舗に入って15分後に…。

「従来のアダルトグッズは、女性器の形、裸のパッケージがほとんどで、『卑猥で猥褻で特殊なので、より猥褻な気持ちで使ってください』と実感しました。これは間違っている。性は人にとって大切で尊重すべき根源欲求であって、性に対するプロダクトが、このようなものしかないのなら、自分がつくろうと決心しました。もっとポジティブで、フレンドリーで、“一般のアイテム”として、人の性生活を豊かにする、新しいカテゴリーのものをつくろう。そして革命を起こすんだ。その場で完全に決心しました」

これが、TENGA 開発への道のりのはじまりです。

成果なし、誰にも貢献してない、喜ばれていない…苦難を乗り越えた“気づき”

松本はこの決心から1年半、必死に働き1000万円を貯めて独立。ひとりで研究開発を始めます。あらゆるアダルトグッズを片っ端から買い込み、朝6時から夜は2時まで、アイテムの構造を研究し、松本にしかできない独創性・安心快適性を追求します。

「思い返すとこの自主制作時代が、ものすごく大変な時でした。何日もかかって形にして、自分で作って、自分でボツにするのはなかなかキツイです。何がつらいかというと、アダルトグッズは一般の新しい物として世の中に存在していないから、ひたすら研究しても何の成果もない、誰にも貢献できてない、誰にも喜ばれていない。この1年半の期間は、すごくきつい日が続きました。いまが一合目なのか三合目なのかも分からない。つまり、ゴールが無い。そこで考えを切り替えました。『途中でやめるから失敗と言われる。そうだ、成功するまでやればいいんだ』と、もう開き直っちゃいました。後で気が付いたけど、これが本当の意味で覚悟を決めた瞬間なんだと思います」（松本）

支えてくれる人たちとの出会いに感謝し、ついに量産化

松本は、このひとりで研究開発していた時代を振り返り、「支えてくれる人たちに恵まれた」と繰り返します。金型職人との出会いもそのひとつ。TENGA を量産するには、金型が要ります。資金が尽きるころ、その金型職人に思いを伝えると、「あんたは本気だ。信じて金型をつくる。金は成功して売れてからでいい」と。

そうした人との出会いで支えられて、2005年7月7日、TENGA 最初の5種類がついに発売されます。

発売初年に100万個！2万を超える販売先、73の国と地域へ

「誕生した5種類の TENGA は、『5000個売れればヒット』という時代に、最初の1年で100万個も売れました。販売店も当初の500店から、ドラックストア、百貨店、通販サイトなどへと広がり、2万4000店へと拡大。ここ日本で生まれた TENGA はいまや、海外へと広がり、73の国と地域で販売されるようになりました。25年前、たった一人で決意しスタートしたけど、いまではこうして多くの社員、そしてここにいる皆さんをはじめ、多くの方々が支えてくださったおかげで、いまの TENGA が存在し、僕はここに立っています。皆さんに感謝しかありません。本当にありがとうございます」（松本）

「描いた未来と今」（後半）

「性を表通りに誰もが楽しめるものに変えていく」愛される TENGA 、次は女性向けブランドへ

TENGA が世界中から愛されるようになり、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というビジョンを掲げ、松本は女性向けブランドの確立を構想します。このとき突き当たった壁が、「男性に女性向けアダルトグッズはつくれない」でした。

「当時あった女性向けアダルトグッズは、『男性が女性に使いたいもの』を、男性がつくっていました。女性のアイテムでありながら、主体は男性にありました。太くてゴツゴツしていて、そこには男性のエゴを感じます。TENGA がつくる女性用アイテムとは、女性が主役でなければなりません。そこで、女性社員たちからなる開発チームが、女性の心に寄り添った商品を開発し、2013年に女性ブランド『iroha』が生まれます」（松本）

          
ブランドメッセージ「『⽣きる』をよろこぶ世界へ」

「TENGA は、性⽣活を豊かにすることで⼈⽣がよりすばらしいものになり、世界中の⼈を幸せにできると考えています。だから私たちは、性を後ろめたいものではなく みんなの『⽣きるよろこび』として誰もが楽しめるものにしていきます。」（松本）

その実現のために年齢や性別、⽂化に関係なく 誰もが性を楽しむためのプレジャーアイテム、⼤切な⼈とふれあうきっかけをつくり、肌のふれあいをより愉しいものにするスキンシップアイテム、 医療・福祉・教育の専⾨家と連携し性にまつわる悩みや問題の解決に繋げる製品やサービス、⼈それぞれの⾝体に寄り添いデリケートな部分を健やかに保つための デリケートゾーンケアアイテムの研究開発を⾏なっています。

さらに、世の中の性愛の捉え⽅をアートの⼒で多⾓的に拡張するコラボレーションプロジェクトを展開し、障がい者⾃⽴⽀援プロジェクトにより働き⽅にも多様性と可能性を広げます。このように愛と遊び⼼にあふれた発想でさまざまな取り組みを⾏ない 「⽣きる」をよろこぶ世界の実現を、TENGA は目指していきます。

エンディング 松本からメッセージ

「私たちはこうして、それぞれの時間で感じたことをひとつずつ形にしていきました。ここまで成し遂げてきたことは、自分一人ではなく、いろんな人の力を借りて、さまざまなプロダクトを出してきました。そうすることで、より多くの人と関われるようになりました。これからも、もっと楽しくて、心が躍るようなモノづくりで、皆さんと、楽しく関わっていけるよう、進化を続けていきます」（松本）