「プロジェクト未来遺産2023」に4プロジェクトの登録が決定! ~地域の‟たからもの”を100年後の子どもたちへ~
13回目となる本年度は、全国から19件の応募があり、未来遺産委員会(委員長:西村幸夫/國學院大學教授)での最終選考を経て、今回が県内初となる長崎県のプロジェクトを含む4件が登録されることとなりました。4月以降に、各登録地において登録証伝達式を開催する予定です。
※都道府県順
2009年の開始以降、現在までの「プロジェクト未来遺産」の登録数は全国41都道府県で計83件となりました。新たに登録が決定した4件を含む全83のプロジェクトの詳細は、未来遺産運動のウェブサイトでご覧いただけます。
<未来遺産運動ウェブサイト>
https://www.unesco.or.jp/activities/isan/heritage-for-the-future-project/
「プロジェクト未来遺産2023」登録プロジェクト紹介
1.巨大防浪堤を未来へ~岩手県宮古市田老の津波防災伝承活動~
特定非営利活動法人 津波太郎/岩手県宮古市
岩手県宮古市田老地区は明治29年と昭和8年の三陸大津波によって壊滅的な被害を受け、昭和9年から村長の掛け声のもと、村民たちが石を運んで積み上げた最初の防浪堤(防潮堤)が今も残る。
特定非営利活動法人津波太郎は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた田老地区の復興支援を推進してきた団体を前身とし、未来に向けた「まちのこし」活動を行っている。その活動は、防浪堤をシンボルとしつつ、津波被害の実態や記憶を記録・伝承し、地元の教育機関と連携した防災教育を主軸とするものである。津波防災の先進地として、海と共存しながらふるさと愛を醸成し、日本そして世界の津波防災・減災の取り組みにつなげていくことを目指している。
2.伝統芸能石見神楽を未来に継承サポートプロジェクト
どんちっちサポートIWAMI/島根県浜田市
「どんちっちサポートIWAMI」は、島根県西部の石見地域を中心に伝承される石見神楽の後継者育成と、石見神楽を通じた青少年育成を目的に設立された。
「どんちっち」とは子どもの言葉で石見神楽を意味し、浜田市内の11団体に所属する各子供神楽の相互連携を図り、総合的な公開の場として「いわみ子供神楽フェスタ」の開催や、神社清掃、自主製作した「石見神楽カルタ」を用いたカルタ大会を実施している。
自身の所属する団体だけではなく、市内全体を視野に入れた活動に参加することで子どもたちの伝承意欲を高め、実際に子供神楽を経験した青年らが神楽のために地域に残り、本団体の活動を支え、石見神楽の伝承を確実なものにしている。
3.歩こう子どもたち!~未来につながる「備中とと道」~
備中とと道トレイル推進協議会/岡山県笠岡市、矢掛町、井原市、高梁市
「備中とと道」とは、明治から昭和初期にかけ、瀬戸内海沿岸の笠岡市金浦から新鮮な魚を吉備高原山中の吹屋まで、屈強な魚仲仕(うおなかせ)が夜掛けのリレー方式で運んだ南北約60㎞にわたる山道である。近代化によりこの道は使命を終え、森の中に放置されたが、「備中とと道トレイル推進協議会」の前身団体や地元の個人らによる膨大な作業の末、2017年に1本の道を同定した。この復元した道を「歩く遺産」として後世に残すため多様な活動を展開している。定期的な草刈り、沿道の歴史、文化、自然に触れるトレイルウォーク大会の開催や地元の学校での出前授業、道標整備、ガイドブックの発行等、沿道地域の歴史文化や暮らしの記憶を発掘し、次世代へ継承している。
4.五島に残る玉之浦神楽 ~子どもたちへの伝承プロジェクト~
白鳥神社神楽保存会/長崎県五島市
五島列島では神楽が盛んで、福江島の西端に位置する玉之浦町も、400年以上前から、白鳥神社の例大祭などにおいて、宮司と社人によって玉之浦神楽が舞われてきた。そして国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に指定された2001年に、白鳥神社神楽保存会が設立された。しかし、地区の高齢化と人口減少により、近年は例大祭において神楽を舞うことができていない。このため、かつて賑わっていた商店街の店の一部を改装した常設の演舞場を創設し、いつでも神楽を舞い、稽古ができる体制を整え、演舞会や子ども神楽教室を開くなど、例大祭の場に限定せず、現状にあった持続可能な形で神楽の継承に努め、子どもたちが地元の伝統文化に触れられる機会を創り出している。
未来遺産委員会 委員長 総評
今回応募のあったプロジェクトの多くは、困難の中でも活動を継続し、コロナ禍という大きな試練をも乗り越えてきた力のある素晴らしいものばかりでした。その結果、例年以上に「プロジェクト未来遺産」の趣旨に合致するものが多く、議論は白熱し、審査は非常に難航しました。最終的に選ばれたプロジェクトは、携わる人びとの熱意と工夫が詰まった活動であり、100年後の子どもたちに継承すべき活動でした。また、例年であれば登録に至っていた可能性のある活動も、厳しい競争の中で残念な結果となってしまいましたが、今後も活動を継続していただきたいと思います。
未来遺産委員会 委員長 西村 幸夫 (國學院大學 教授)
■未来遺産委員(2024年3月22日現在)
西村幸夫(委員長) 國學院大學 観光まちづくり学部 学部長
木村 法雄 東日本旅客鉄道株式会社 常務執行役員
齊藤 裕嗣 國學院大學 文学研究科 兼任講師
酒井 暁子 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授
佐藤 桂 武蔵野大学 工学部建築デザイン学科 准教授
鈴木 佑司 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 理事長
高橋 俊雄 日本放送協会解説委員室 解説委員
竹原 興 読売新聞東京本社 編集局社会部 部長
土屋 誠 琉球大学 名誉教授
永山 健作 ジェットスター航空 マーケティング&PR本部長
西山 厚 奈良国立博物館 名誉館員、帝塚山大学 客員教授
西山 徳明 北海道大学 観光学高等研究センター 教授
矢野 和之 株式会社文化財保存計画協会 代表取締役
吉田 拓 住友ゴム工業株式会社 人事総務本部 総務部 社会貢献推進グループ 課長
鷲谷 いづみ 東京大学 名誉教授
※五十音順、敬称略
未来遺産運動について
日本の豊かな文化や自然を100年後の子どもたちに伝えていくことを目指し、2009年から行っている「未来遺産運動」は、地域の“たからもの”を未来の子どもたちに伝えたいという想いのもと、未来へと継承していくための地道な努力を続ける “人”と“活動”に光をあて、応援するものです。
市民による草の根の活動を「プロジェクト未来遺産」として登録することで、次世代を含む個人や企業、行政による理解と協力や、さまざまなつながりを生みだし、さらには日本全国に運動の輪を広げていくことを目指しています。
未来遺産運動は、以下の企業などにご協力いただいています。
特別協力:東日本旅客鉄道株式会社、住友ゴム工業株式会社、ジェットスター
後援:読売新聞社、環境省、文化庁、日本ユネスコ国内委員会
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