【対談インタビュー】城南信用金庫 林理事長とneoAI CEO千葉が語る、生成AIで再定義する地域金融

信用金庫は対面での信頼関係を基盤とする金融機関ですが、業務には定型事務が多く、長年の経験に依存した属人化も課題として残されています。職員がお客様と向き合う時間をいかに生み出すかは、地域金融の本質的なテーマです。
城南信用金庫では、neoAIの法人向け生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」を2024年7月に導入。文書作成や情報収集に加え、営業支援、ロールプレイング、補助金提案など信用金庫業務に根差したユースケースを現場とともに設計し、事務にかかる時間をお客様と向き合う時間へ転換してきました。その実践は、信用金庫業界横断のAI活用コミュニティ「GEN×しんきんラボ」を通じて業界全体へ共有されています。
本対談では、生成AIの導入で現場に何が起きたのか、属人化という構造的課題にAIはどう作用するのか、そしてAI時代に金融機関の「人間力」はどこで問われるのかを議論しました。
(本リリースは、城南信用金庫様へのインタビューのうち、林 理事長との対談パートのみを抽出した抜粋版となります。さらに詳細なインタビューについては、こちらのページもご覧ください。)
人と会う時間を作るために、AIがある
―生成AIを、経営の観点からどのように捉えていらっしゃいますか。
林理事長 信用金庫ですから、やはり一番大切なのは、人と会う時間をいかに作り出すかだと思っています。金融機関は定型事務が非常に多く、これまでもさまざまなデジタル化に取り組んできましたが、十分に機能しきれていない部分もありました。
neoAI Chatをご提案いただき、生成AIを実際に使ってみると、スピードがまったく違いました。たとえば、企画部が何日もかけて作成していた挨拶文の草案が短時間で作れますし、情報収集も、これまで新聞を読んで切り抜いて蓄積していたような作業を、AIで効率化できます。事務や調査にかかる時間を減らし、その分をお客様と向き合う時間に変えていく。そのための手段として、AIには大きな可能性を感じています。
neoAI 千葉 城南信用金庫様は、導入初期から「AIをどう使うか」だけでなく、「AIによってどのような時間を生み出すか」を非常に重視されていた印象があります。単なる業務効率化ではなく、地域金融としての本質的な価値にどうつなげるかという視点が、活用の広がりにつながっていると感じています。
―導入を進めるうえで、neoAIの伴走支援についてはどのように感じられましたか。
林理事長 以前、別のAIツールを試したこともありましたが、正直なところ、なかなか使いこなせませんでした。AIは、ただ導入すれば自然に使われるものではありません。よほど関心の高い職員でなければ、自分から触って、試行錯誤して、使い方を身につけるところまではなかなか進まないと思います。
その点、neoAIさんは導入して終わりではなく、伴走して寄り添ってくれました。職員が実際に使える形にするまで一緒に考えてくれたことが大きかったですね。AIそのものの性能ももちろん重要ですが、それ以上に、現場で使われるものにしていくプロセスが大切だと感じています。
neoAI 千葉 我々としても、城南信用金庫様の業務を理解しながら、現場で本当に使われるアシスタントを一緒に作っていくことを重視してきました。特に信用金庫業務は、マニュアル検索だけでなく、営業支援、ロープレ、補助金提案、地域企業の支援など、業務に根差したユースケースが非常に多い領域です。現場の皆様と対話しながら作り込めたことが、定着につながったのだと思います。

属人化を越え、組織全体の力を底上げする
―金融機関ならではの属人化の課題に対して、AIはどのように役立つとお考えですか。
林理事長 金融機関に限らないかもしれませんが、長年同じ業務を担当している職員が、体で覚えたやり方で仕事をしているケースは少なくありません。マニュアルが十分に整備されていないまま、その人がいなくなると業務が分からなくなってしまう。これは組織として大きな課題です。
たとえば監査業務のように、従来は経験豊富な職員でなければ難しかった領域でも、AIがあれば、どこに何が書かれているのかを自分で調べられるようになります。もちろん、AIがすべてを代替するわけではありませんが、一人前になるまで何年もかかっていた業務理解を早め、全職員の知識レベルを底上げできる可能性があります。
neoAI 千葉 まさに、AIを一部の詳しい人だけが使うのではなく、組織全体の知識基盤として使える状態にしていくことが重要だと思います。城南信用金庫様では、今後システム部の方々がアシスタントの作り手になり、各部門へ展開していく構想も伺っています。これは非常に理想的な進め方だと感じています。
林理事長 今後は、勘定系システムの移行で余裕ができたシステム部の人材を先行して育成し、各部に展開していきたいと考えています。さらにその先には、お取引先の中小企業にもAI活用を広げていきたいですね。中小企業でも、社長や一部のベテラン社員に業務ノウハウが集中しているケースは多いと思います。そうした属人化した知識や技術を整理しておくことは、事業承継の場面でも重要になります。
まずは私たち自身が使いこなし、その経験をもとに、お客様にも「ここから始めるとよいですよ」とご提案できるようにしたいです。最初から大きなことをやる必要はありません。スモールスタートで成功体験を積み重ねていくことが大切だと思います。
AIに使われるのではなく、AIを使う側であり続ける
―AIが高度化するなかで、人間にしかできない役割はどこにあるとお考えですか。
林理事長 人と人との信頼関係は、AIでは代替できません。知識を得るためにAIを使うことは非常に有効ですが、最終的にお客様との関係を築けるかどうかは、職員一人ひとりの人間力にかかっています。AIによって知識習得や事務作業の時間を短縮し、その分、人と向き合う時間を増やす。AIは、そのための手段です。
neoAI 千葉 経営者の方々とお話ししていると、「AIが進化すると、どの会社も同じAIを使い、同じような提案になってしまうのではないか」という懸念を伺うことがあります。その点については、どのようにお考えですか。
林理事長 AIが出した回答をそのまま使うだけであれば、確かに似たような結果になると思います。それは、AIを使っているというより、AIに使われている状態に近いのではないでしょうか。
大切なのは、AIの回答に対して「もっとこうできるのではないか」「自分たちならどう考えるべきか」と問い直すことです。自社の知識や経験、経営理念を重ねていける人がいれば、同じAIを使っていてもまったく違うものが生まれます。AIと人間が共に進化していく関係を作ることが、これからの差別化につながると思っています。
neoAI 千葉 その意味では、AI活用が進むほど、企業理念や組織としての判断軸がより重要になるということですね。
林理事長 そう思います。AIで答えが出る時代だからこそ、「何のためにこの仕事をしているのか」という本質を、今まで以上に職員へ伝えていかなければなりません。判断に迷ったときに立ち返る軸がなければ、組織はぶれてしまいます。企業理念や文化をしっかり共有しておくことが、AI時代にはますます大切になると感じています。

一金庫の取り組みを、信用金庫業界全体の力へ
―GEN×しんきんラボを通じた業界全体への展開について、込められた想いを教えてください。
林理事長 一つの金庫だけで取り組むよりも、多くの金庫がそれぞれの強みを活かしてAI活用を進め、知見を共有することで、より大きな価値が生まれると考えています。信用金庫はそれぞれ独立した組織ですから、取り組みたいテーマも異なります。営業支援、事務効率化、ビジネスマッチングなど、それぞれの成果を持ち寄ることで、業界全体として優れたAI活用のモデルができていくと考えています。
neoAI 千葉 我々としても、GEN×しんきんラボは単なるユーザー会ではなく、信用金庫業界全体でAI活用の知見を育てていく共創の場だと考えています。城南信用金庫様が自庫での実践をもとに、他の信用金庫にも知見を共有されていることは、業界全体にとって非常に大きな意味があると感じています。
林理事長 信用金庫は、地域とのつながりの中で成り立っている金融機関です。一つひとつの取り組みがつながっていくことで、大きな輪になって行きます。AIも同じで、各金庫が自分たちの地域や業務に合った使い方を見つけ、それを共有していくことが大切です。
neoAI 千葉 城南信用金庫様のように、まず自分たちが使い込み、その実践知を業界や地域へ還元していく姿勢は、まさに信用金庫らしいAI活用のあり方だと感じます。
林理事長 最終的には、お客様にも同じようにAIを使っていただき、地域全体で共通の基盤やネットワークができていくと面白いですね。金融機関だけで完結するのではなく、地域の企業やさまざまな業種の方々とつながりながら、新しい価値を作っていく。そのためにも、まずは私たち自身が使いこなし、良いものを育てていきたいと思っています。
最後は人。そのためにAIを使う
―今後、AI活用をさらに広げていくうえで、neoAIに期待することはありますか。
林理事長 AIにはまだまだ使い道があると思っています。当金庫でも、使い切れていない部分は多いですし、これから各部門でさらに活用を進めていく必要があります。職員がAIを使いこなし、お客様に対してより良い提案ができるようになる。その先には、地域企業の業務改善や事業承継支援にもつなげていきたいです。
neoAI 千葉 城南信用金庫様が目指されているのは、単なる事務効率化ではなく、地域金融の価値そのものを高めるAI活用だと理解しています。我々としても、プロダクトの提供にとどまらず、現場で使われる仕組みづくり、アシスタント設計、業界全体への展開まで、引き続き伴走していきたいと考えています。
林理事長 やはり最後は人です。お客様が本当の悩みを打ち明けてくださるかどうかは、「この人に相談したい」と思っていただけるかどうかにかかっています。それはAIでは代替できません。
ただ、信頼を得るための準備や知識武装は、AIが大きく支えてくれます。人と会う時間を作り、人間力を磨き、お客様との関係を深める。そのためにAIを使うというのが、当庫の基本的な考え方です。
株式会社neoAI 概要
株式会社neoAIは、「あらゆる産業に、知能を。」をミッションに掲げる東京大学 松尾研究室発のAIスタートアップです。生成AIに特化したソリューションを開発・提供し、AIエージェントプラットフォーム「neoAI Chat」「neoAI Work」による「知能基盤」の提供と、カスタムAI構築による「知能実装」を通じ、生成AI・AIエージェントの社会実装を推進究開発からコンサルティング、社会実装までを一気通貫で提供しています。
社名:株式会社neoAI
代表者:代表取締役CEO 千葉 駿介
設立:2022年8月
所在地:東京都港区虎ノ門1-10-5 KDX虎ノ門一丁目ビル
事業内容:生成 AI に特化したソリューションを開発・提供。AI エージェントプラットフォーム「neoAI Chat」「neoAI Work」による「知能基盤」の提供と、カスタム AI 構築による「知能実装」を通じ、生成 AI・AI エージェントの社会実装を推進
コーポレートサイト:https://neoai.jp/
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