日本政府とJICA、アルメニアにおける避難民の子どもたちのメンタルヘルスと心理社会的支援のため、UNICEFを通じて5億円の無償資金協力を実施
保健、社会、教育システムの改善を通じたメンタルヘルスや社会心理的なウェルビーイングの向上により、約30万人の子どもたちと10代の若者が恩恵を受ける。

2025年2月27日 エレバン(アルメニア)発
日本政府と国際協力機構(JICA)は、アルメニア系の避難民とホストコミュニティの子どもたちや10代の若者、その保護者にメンタルヘルスと心理社会的支援を提供するため、国連児童基金(UNICEF)を通じて5億円の無償資金協力を実施します。本支援により、UNICEFは様々な分野で子どもたちのために活動する5,600人のサービス提供者と連携して支援を拡大させます。これにより、約30万人の子どもたちや10代の若者、最大15万人の保護者に対して、幅広い活動と支援方法でメンタルヘルスに関するサービスを提供することが可能となります。
本事業は、分野横断的な連携を改善し、教育や保健、社会福祉サービスにわたるメンタルヘルスや心理社会的ウェルビーイングのサービスに取り組むために計画されたものです。UNICEFは子どもたちのウェルビーイングを支える国家システムの強化に向けて、各自治体をはじめ、保健省、教育・科学・文化・スポーツ省、労働・社会問題省、地域行政・インフラ省など、アルメニア政府と協力して支援を行います。
UNICEFはコミュニティ・レベルにおいて、保健医療従事者、心理学者、ソーシャルワーカーなどのサービス提供者に対する支援を行います。これには、メンタルヘルスに関する支援を行うための幅広いツールやリソースを活用できるようにするための技術的専門知識の強化を目的とした研修やカウンセリング、照会制度の提供が含まれます。また、アルメニア政府と協力して、サービス提供者及び機関の活動の指針となる政策、規制の枠組み、管理制度の構築も行われます。
涌井純二 JICAジョージア支所長は、「多くの国において、メンタルヘルスのための人的・財政的資源が不足しており、支援を必要としている人々が適切なサービスを受けられていません。また、世界各地で紛争や災害が続いており、こうした支援の必要性が高まっています。日本は地震などの災害に頻繁に見舞われる国であり、1995年の阪神淡路大震災以降、被災者のメンタルヘルスケアに関する幅広い知識が培われてきました。JICAはこうした知見を活用して、多くの被災者にメンタルヘルスと心理社会的支援を提供しています。」と語りました。
青木豊 駐アルメニア共和国日本国特命全権大使は、「私たちの目標は、紛争の影響を受けた子どもたち一人ひとりのニーズに合った、思いやりのある支援を提供することです。そして、子どもたちが過去の紛争のトラウマを乗り越え、再び希望を見出すことができるように支えていく所存です。子どもの福祉に関するUNICEFの豊富な専門知識をもとに、子どもたちをエンパワメントし、彼らがより明るい未来を思い描き、その未来を信じて歩んでいけるように努めていきます。本資金協力は、2021年にアルメニアの緊急の人道的ニーズに対応するために実施された緊急無償資金協力で培われた、UNICEFとのパートナーシップを基に実施されます。」と述べました。
UNICEFアルメニア事務所代表のクリスティーン・ヴァイガンドは、「すべての子どもたちが精神的に健康でウェルビーイングの保たれた生活をする権利を実現するためには、コミュニティ・レベルでの総合的なアプローチにより、分野を横断した取り組みを行う必要があります。男の子と女の子双方のニーズや、乳幼児期から青年期までの異なる年齢の子どもたちのニーズを考慮して、支援方法や手段を調整していかなければなりません。また、本支援を通じて、必要に応じてメンタルヘルスや心理社会的支援サービスを受けることができるよう、人々の前向きな姿勢を促進していきます。」と述べました。
保健ケア分野において、UNICEFはパートナーと協力し、心理教育とメンタルヘルスに関する問題の早期発見・対応に関する、保健ケア提供者向けの標準的な研修とカウンセリングの教材を開発します。また、アルメニア系の避難民の子どもたちやホストコミュニティの子どもたちとその保護者を対象にしたカウンセリングを定期的に開催します。UNICEFは、最前線で支援を提供する心理学者やソーシャルワーカーに心理的応急処置の研修を行うとともに、そうした専門家の数が限られたコミュニティでも支援を拡大するために、準専門家とも連携して活動を行っていきます。
また、アルメニアの教育心理センターと協力して学校におけるメンタルヘルス・サービスを10校で試験的に実施し、全国に拡大していくための支援モデルを策定します。そして、働く若者や若い支援ボランティアが同世代の子どもたちを支援するための能力育成を行うとともに、燃え尽き症候群を防ぐ取り組みも行います。さらにUNICEFは、メンタルヘルスについて楽しく学ぶことのできるオンライン教材や放送教材を制作し、子どもたちの社会的・情動的スキルやセルフケア、レジリエンス(回復力)を促進します。
■UNICEFについて
国連児童基金(UNICEF)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190以上の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。
※UNICEF国内委員会が活動する33の国と地域を含みます
※UNICEFの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■UNICEF 東京事務所
UNICEF東京事務所は、ニューヨーク本部直轄の国連機関事務所として、日本政府からの政府開発援助(ODA)による資金協力や、国会議員、国際協力機構(JICA)、非政府組織(NGO)等との連携を促進しています。
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