時間とともに失われるハリ感を太陽で取り戻す
紫外線を味方につけ、サンスクリーン膜のハリをアップ
■ 日中のハリ感の維持は困難
紫外線は日焼けやシミの原因になるだけでなく、肌へダメージを与え、シワやたるみを促進します。そのためサンスクリーン製品は、肌を健やかに美しく保つために有効です。加えて、近年では紫外線カット機能だけでなく、日中の美肌を叶える機能もサンスクリーン製品に期待されています。なかでもハリ感に対するニーズは高く、一般的に被膜剤を用いてサンスクリーン製品が作る膜の張力を高め、肌上にピンとした膜をつくることで対応をしてきました。しかし被膜剤を増やしても、製剤中の親水性成分が汗や水に馴染みやすいため、使用中に膜全体の構造が緩くなり張力が弱まってしまう傾向にあります。そのため、塗った直後はハリ感を実感できても、汗をかくような環境ではハリ感の維持が困難でした。
そこでポーラ化成工業では、多くの方に美肌効果を実感していただきたいという思いから、サンスクリーン製剤のハリ感を維持できる新たな技術の確立を目指しました。
■ 日中を過ごす中で膜の張力をアップさせる新しいアプローチに挑戦
これまでの製品開発では、張力の高い塗布直後の膜を保持することでハリ感を維持しようとしてきましたが、汗や水の親水性成分への影響を止めることは困難でした。そこで発想を転換し、日中の環境変化を利用して膜の張力を高めるという攻めのアプローチに挑戦しました。時間とともに膜の張力が向上する仕組みを構築できれば、汗や水の有無にかかわらず肌のハリ感を維持できると考えたのです。
■ 紫外線を利用し有害ガスからイオンを生成する自社技術を膜の強化へ転用
サンスクリーン製剤を使う際の日中の環境変化として、「紫外線」に着目しました。ポーラ化成では、紫外線を利用し大気汚染ガスであるアセトアルデヒドを分解する製剤技術(※1)を有しています。この技術では、アセトアルデヒドが分解される時に酢酸イオンが生まれます。これは膜のpHが酸性側に傾くことを意味しています。そこで、このpH変化を利用して膜の張力につなげられないかと考えました。
数ある素材の中から着目したのは、pH応答性ポリマーでした。これはpHの変化により状態が変化するポリマー(高分子)で、溶液のpHが低下すると凝集し、互いにつながり合う性質を持ちます。pH変化が膜の張力強化につながるか検証するために、このポリマーを含む膜に酢酸水溶液を噴霧しpHを変化させたところ、実際に肌のハリ感に繋がる膜の変化が確認されました(補足資料1)。
本研究により、自社技術とpH応答性ポリマーを組み合わせることで、肌の敵である紫外線をも味方につけた日中の肌のハリ感を高められるサンスクリーン製剤が可能になりました(図1)。
※1「ガス状の大気汚染物質を分解する製剤技術を開発 独自の酸化チタンが、炎症をもたらす成分から肌を守る」(2021年5月20日発行) https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20210520_01.pdf
■ 【補足資料1】 イオンとの反応による膜の張力の変化
本研究で着目したpH応答性ポリマーについて、イオンとの反応による膜の張力の変化を実験的に確認しました。
実験では、イオンと反応することで状態が変化するpH応答性ポリマーの水溶液を不織布に浸み込ませて一定時間乾燥させました。その後、その不織布の上にそのままおもりを乗せた場合と、酢酸イオンを含む水溶液を霧状にして吹きかけてからおもりを乗せた場合で、それぞれおもりの基準面からの高さを計測しました(図2)。
その結果、酢酸イオンを含む水溶液を吹きかけると、おもりの基準面からの高さが高くなる、つまり膜の張力が向上し不織布がたわみにくくなることが分かりました(図3)。
以上より、pH応答性ポリマーを含んだ膜が酢酸イオンと反応すると、膜の張力が高まることを確認できました。配合したサンスクリーン製剤を実際に肌に塗った時も、肌上でアセトアルデヒドが分解されて酢酸イオンが生じると同様の反応が起こり、サンスクリーン膜がピンと張ることでハリ感が向上することが期待されます。pH応答性ポリマーを配合した開発品を専門評価者20名にて評価したところ、実際に95%が自社既存品以上にハリ感の持続性を感じると回答しました(図4)。
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