現場対応力の強化を支える「AIデブリーフィング技術」を開発

Naivyを中核としたフィジカルAIオーケストレーションシステムに統合し、作業者・AI・ロボットの共進化を支援

株式会社 日立製作所

 株式会社日立製作所(以下、日立)は、現場作業者とAI・ロボットが現場で得た知見を、組織全体で活用できる「AIデブリーフィング(振り返り)技術」を開発しました。現場では、AIエージェントやロボットの活用が進む一方、突発的な事象への対応は熟練者の経験と判断に頼っています。本技術は、作業者の「なぜ(根拠)」を起点に複数のAIと対話しながら振り返り、判断に至った因果関係を整理するものです。作業者が判断の背景を自分の言葉で説明できる状態へと導くことで、主体性と応用力の向上に加え、個人の経験を組織全体で活用できる知見へとつなげます。

 さらに本技術を、次世代AIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy*1」(以下、Naivy(ナイヴィー))を中核とする「フィジカルAIオーケストレーションシステム*2」に統合することで、安全性・生産性の向上に加え、突発的な事象にも対応できる「現場対応力」の強化を支援します。現場データとドメインナレッジを統合し、経験を知見として定着させる「知識深化支援」と作業を支える「タスク実行支援」を一体で提供することで、AI・ロボット・作業者の連携による人とAIが共に成長する新たな価値を創出します(図1)。

 今後、お客さまとの実証実験を通じて本技術やシステムの有効性を検証し、適用領域を拡大していきます。Naivyを産業分野向け次世代ソリューション群「HMAX Industry」のソリューションとして展開し、今回開発した技術はその主要技術の一つとして位置づけます。これにより、産業現場や電力・鉄道など社会インフラの持続可能な運用と人財育成・技能継承の変革に貢献していきます。

図1. Naivyを中核とした「フィジカルAIオーケストレーションシステム」の全体構成(イメージ)

*1 現場作業における心理的負担軽減と作業効率化を支援する次世代AIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy」を開発:2025年7月3日

*2 単独では難しい複雑な課題に対し、複数のAIモデルやツール、システムを連携・統合・管理し、自動で協調動作させる仕組み。Naivyにおいては、メタバースやAIエージェント群を起点としながら、ロボット制御や各種機器・装置の自動操作など現場での具体的なアクションを担うフィジカルAI群、現場作業者・監督者との高度協調を実現する。

背景および課題 

 社会インフラや産業現場では、労働人口の減少や熟練者不足が深刻化しており、現場対応力の維持と技能継承が急務となっています。日立はこれまで、Naivyを開発し、現場の状況に応じた直感的なナビゲーションなどのタスク実行支援を通じて、非熟練者の心理的負担軽減や業務効率化を進めるとともに、Naivyを活用したリスク危険予知支援システム*3により、現場の安全性向上にも取り組んできました。

 一方で、AIエージェントやロボットの活用が進む現場ほど、作業者が判断の根拠を十分に理解しないまま作業が進むリスクがあります。突発的なトラブルや例外的な事象に柔軟に対応するためには、作業の実行にとどまらず、手順や判断の背景にある「なぜ(根拠)」を理解し、個人の経験を組織全体の知見として蓄積・定着させる仕組みが不可欠でした。

*3 日立の次世代AIエージェント「Naivy」を活用し、現場の安全性を高めるリスク危険予知支援システムを新開発、現場安全性・効率性向上の効果を実証:2025年10月7日

フィジカルAIオーケストレーションシステムおよび開発技術の特長 

 そこで日立は、生産性・安全性と現場対応力の向上を支え、現場全体のタスク実行支援と知識深化支援を一体で提供するNaivyを中核とした「フィジカルAIオーケストレーションシステム」を構築し、知識深化支援を支える主要技術として、作業後の学びを整理・定着させる「AIデブリーフィング技術」を開発しました。その特長は以下の通りです。

1. 作業者・AI・ロボットをつなぐ現場オーケストレーション 

 Naivyに蓄積した現場固有のドメインナレッジを活用し、複数のロボットやAIのタスク実行をオーケストレーションします。さらに日立が培ってきた現場知見に基づき、施設の温度異常・機器故障など現場で発生する物理現象の因果関係をデジタル上で整理・可視化し、作業者・AI・ロボットへ最適な形でフィードバックします。これにより、現場作業の確実な実行を支援します。

2. AIデブリーフィング技術による判断根拠の理解と知識定着の支援

 ファシリテーターAI、ピアAI(同僚役)、エキスパートAIなど、役割の異なる複数のAIが協調し、作業者の「なぜ(根拠)」を起点に作業後の振り返りを進行します(図2)。作業データや手順と連動して、判断に至った因果関係や原理原則を整理し、作業者が自分の言葉で説明できる状態を支援します。これにより、経験を知識として定着させ、突発的なトラブルや例外的な事象にも応用できる現場対応力の向上につなげます。空調保守業務を模擬した社内検証では、従来の1対1によるAI対話(チャットボット形式)と比べ、知識定着テスト*4のスコアが約70%向上しました*5。さらに、DASH*6による評価やアンケートにより、学びの質や主体的に取り組む集中度の改善を確認しました*7。

*4 現場熟練者へのヒアリングをもとに作成した独自の知識テスト(記述式4問、選択式2問の計30点満点)。 

*5 Naivyを用いて特定タスクを実施後、参加者を2グループに分け、一方は従来の1対1によるAI対話(チャットボット)、もう一方は本技術で振り返り(デブリーフィング)を実施。その後に実施したテストスコアをもとに算出。 

*6 DASH: Debriefing Assessment for Simulation in Healthcareの略。医療シミュレーションのためのデブリーフィング評価(DASH)日本語版 | Center for Medical Simulation

 *7 DASHでの振り返りプロセスの質と、AIとの対話への集中度(没入度)や興味などをアンケートにより評価。

図2. 本システムの「知識深化支援」におけるAIとの現場作業振り返り(イメージ)

3. 人とAI・ロボットが共に進化するタスク実行と知識深化の循環

 作業の実行と振り返りで得られた学びを、個人の経験にとどめず、組織全体の知見として蓄積し、AIによる支援にも反映します。蓄積した知見は、次のタスク実行支援や教育に活用できます。これにより、人とAI・ロボットが実行と学習を繰り返しながら現場対応力を高めていく「知識深化」の循環を実現し、技能継承と持続可能な運用に貢献します。

 今後の展望 

 今後、日立は、製造・建設・電力など幅広い現場業務を担うお客さまやパートナー企業と連携し、単なる自動化・効率化にとどまらない「人とAIの共進化」による新たな現場価値の創出をめざします。具体的には、ユーザーの習熟度や作業内容、進捗状況に応じてAIの役割や支援レベルを動的に調整する仕組みに加え、多様なインタラクション機能の強化を進めます。また、フィジカルAI技術や、日立が掲げる「Integrated World Infrastructure Model (IWIM) *8」などを組み合わせることで、現場で得た経験の知見化と活用を広げていきます。さらに、日立は、NaivyをLumada 3.0を体現する産業分野向け次世代ソリューション群「HMAX Industry」のソリューションとして展開し、今回開発した技術はその主要技術の一つとして位置づけます。これにより、産業現場や電力・鉄道など社会インフラの持続可能な運用と、人財育成や技能継承の変革に貢献していきます。

*8 日立が 2025 年 11 月に発表したフィジカル AI や HMAX の構築を支えるモデル。日立が蓄積してきた社会インフラ領域のナレッジ/手法に、AI技術を統合することで、フィジカル世界の現象を正確に理解/推論/応答できるようにするもの。これにより、現象予測/計画・制御など現場で連続的・自律的に進化できる AI 基盤を構築します(自律進化型製造オートメーションなど)

 なお、本成果は2026年5月20日に開催される「Hitachi Physical AI Day」で展示予定です。

「Hitachi Physical AI Day」の開催概要 

日時:2026年5月20日(水)

会場:ザ・プリンス パークタワー東京  東京都港区芝公園4丁目8−1

Hitachi Physical AI Day|Lumada:日立

商標注記 

記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

日立製作所について

 日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、社会インフラをデジタルで革新し続けるグローバルリーダーをめざし、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2025年度(2026年3月期)売上収益は10兆5,867億円、2026年3月末時点で連結子会社は606社、全世界で約29万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.com/ja-jp/をご覧ください。

  

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 

研究開発グループ

問い合わせフォーム:https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hqrd/news/jp/form.jsp

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会社概要

株式会社 日立製作所

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URL
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業種
情報通信
本社所在地
東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
電話番号
03-3258-1111
代表者名
德永 俊昭
上場
東証プライム
資本金
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設立
-