MSF、「ワクチンの10年」計画に、価格引き下げと利便性向上の目標が欠如していると指摘
国境なき医師団(MSF)は、1月21日から行われている世界保健機関(WHO)執行理事会会合に参加する各国政府代表に対し、今後数年間の国際社会におけるワクチン問題への取り組みを方向づける計画の重大な欠陥を是正すべきだと訴えている。是正がされない場合、多くの子どもたちが世界中で予防接種の対象外になっている根本原因が解決されないままになってしまうと警鐘を鳴らしている。
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高騰続けるワクチン価格
議題となっているのは「世界規模でのワクチン供給計画(Global Vaccine Action Plan)」の効果測定と、活動の方向付けを担う監視と評価の枠組みについてだ。高いワクチン価格が予防接種プログラムの持続性を著しく脅かしているにもかかわらず、この枠組みには価格監視の方策が含まれていない。
MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクターで医師のマニカ・バラセガラムは「子ども1人の予防接種費用が、この10年で2700%も高騰したにもかかわらず、今後10年のワクチン計画に価格を引き下げるという目標が含まれないことに違和感を覚えます。MSFの活動地の政府も、資金援助が先細りになった場合、ワクチン費用をどうまかなえばいいのかと懸念を募らせています。価格設定について説得力のある指標があれば、少なくともこの問題に対する懸念が的外れではないということが示せるでしょう」と述べている。
2011年、子ども1人あたりの予防接種費用は、BCG、ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳、はしかで構成される基本的なパッケージで1.37米ドル(約120円)だった。その後、他のワクチン、特に肺炎球菌とロタウイルスのワクチン(現在の子ども1人あたりの費用の75%弱がこの2つのワクチンの費用)が追加されたことで、子ども1人あたりの費用は最低でも38.80米ドル(約3430円)まで高騰した上、実際には多くの国がはるかに多くの費用を支出している。
バラセガラムはさらに「価格競争を後押しする新興メーカーの市場参入を促すなど、ワクチン価格引き下げの方策にもっと注目すべきです。『ワクチンの10年』計画には、およそ500億米ドル(約4兆4260億円)が費やされると見られており、ワクチン費用だけでも莫大なお金がかかるでしょう。これは見逃せない事実なのです」と訴えている。
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遠隔地での使用にも耐えるワクチンを
さらなる懸念として、この計画が、既存ワクチンの多くが開発途上国での使用に適していないという問題に積極的に取り組んでいないという点が挙げられる。過去5年間で、合計1億1200万人の子どもたちが、小児には致命的となりうる病気に対する最低限の予防接種さえ受けられていない状況があるが、既存ワクチンは都市圏以外の遠隔地などでは使用が難しいことが主な理由となっている。例えば、低温での保存、訓練を受けた保健医療スタッフによる注射、複数回の通院による複数回投与などが求められるからだ。
こうした問題が急を要するにもかかわらず、計画では、新たに案出された予防接種技術のうち、たった1つだけを2020年までに使用するという控えめな目標しか設定されていない。マスクや空気圧を用いた、注射針を使わないワクチンの新しい接種法など、有効性についてWHOの承認目前という新技術が複数あるにもかかわらずである。
MSF必須医薬品キャンペーンの予防接種計画顧問、ケイト・エルダーは「遠隔地で暮らす子どもたちに、低温保存が必要なワクチンで予防接種を行うことは、MSFのような輸送手段を持つ団体にとっても、本当に難しく、そうした子どもたちが接種対象から漏れてしまうのです。子どもに対し簡便に接種できる製剤が必要であり、これが今後10年間の重要な目標であるということが示されるべきでしょう」と話している。
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