レゾナック、ZenmuTechとの共創により秘密計算を活用したMI基盤を構築 ~機密データを開示せずに企業間での材料開発データ活用を可能に~

株式会社ZenmuTech

株式会社レゾナック・ホールディングス(社長:髙橋秀仁、以下「レゾナック」)は、株式会社ZenmuTech(社長:阿部泰久、以下「ZenmuTech」)が開発する、秘密計算*1ライブラリ「QueryAhead®」を採用し、機密データを開示せずに企業間で材料開発データを活用できるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)*2基盤を構築しました。さらに、レゾナックのサプライヤーである化学メーカーA社(社名非開示)の協力のもと、本基盤を用いた実証を実施し、各社が保有する機密性の高い材料開発データを開示することなく解析に活用できることを確認しました。

実際の材料開発テーマでは、互いの機密データを開示せずにレゾナックと化学メーカーA社のデータを活用し、単独のデータを用いた場合と比べ、物性の予測誤差を約78%減少させました。化学業界では、半導体材料の品質や性能向上のためにサプライチェーン全体でのデータ活用の重要性が高まる一方で、知的財産や機密情報の保護が課題となっています。本取り組みは、そうした課題の解決に向けた新たなアプローチとなることを目指します。

材料サプライチェーン全体をつなぐ秘密計算データ基盤

1. 背景

近年、材料開発の高度化に向けてMIの活用が進んでいます。一方で、化学業界では企業ごとに蓄積された実験データや評価データが競争力の源泉となっており、企業間でのデータ共有には大きな制約があります。そのため、サプライチェーン全体でのデータ活用によって大きな効果が得られると期待されながらも、機密情報保護との両立が課題となっていました。

例えば、半導体用の材料開発は、複数のサプライヤーから供給される材料を組み合わせて進めます。各サプライヤーは、自社が供給する材料に関するデータを保有しています。一方、それらを配合して製品を開発する企業は、配合の条件と評価の結果を保有しています。MIによる予測の精度を高めるには、これらを突き合わせて解析することが有効です。しかし、いずれも各社の中核となる技術情報であり、秘密保持契約を締結しても開示できない情報が残ります。そのため、複数社にまたがるデータを突き合わせた定量的な検討に踏み込めないことが、開発を進めるうえでの制約となっていました。レゾナックでも、こうしたデータ共有の難しさを2023年ごろから解決すべき課題として認識してきました。

2. これまでの経緯(ZenmuTechとの連携)

秘密計算を材料開発に適用するには、一般的な解析ソフトウェアをそのまま利用できないため、必要な解析手法を秘密計算環境上に実装する必要があります。レゾナックの計算情報科学研究センターは2023年からZenmuTechと連携し、同社が提供する秘密計算ライブラリ「QueryAhead®」を活用して、材料開発に必要な解析手法の設計と実装を主導してきました。ZenmuTechによるライブラリの機能拡張と組み合わせることで、材料開発データに適用できる実用的な基盤へと発展させています。なお、QueryAhead®は、国立研究開発法人産業技術総合研究所による理論研究を礎に、ZenmuTechが実用化した秘密計算プラットフォームです。

3. 技術のポイント

データを秘匿したまま扱う技術のうち、データを複数の断片に分割して安全に保管する「秘密分散」*3はすでに実用化が進み、幅広く利用されてきました。一方、データを秘匿したまま計算処理まで行える「秘密計算」は、近年ようやく実用的な段階に入りつつある技術です。

秘密計算にはいくつかの方式があります。レゾナックが用いているのは、このうち秘密分散にもとづく方式です。この方式は、2024年3月に国際規格ISO/IEC 4922-2*4として発行され、計算の手順が国際的に規定されました。また、国の研究開発プログラムである内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム*5においても、秘密計算の社会実装が研究開発テーマの一つとして進められています。

秘密計算環境上に実装した解析手法には、データの傾向を把握する主成分分析*6や、物性を予測する回帰分析*7などがあります。この過程で得られた知見は、2026年3月の電子情報通信学会総合大会において発表しました。

4. 今回の取り組み

今回、当社レゾナックの計算情報科学研究センターとZenmuTechが構築した基盤を用い、化学メーカーA社の協力のもとで共同実証を行いました。半導体の基幹材料に関する開発テーマで、化学メーカーA社が保有する材料の物性に関するデータと、レゾナックが保有する配合条件および評価結果を、双方とも開示しないまま基盤上で結合し、解析しました。

その結果、単独では十分な精度が得られなかった予測が、両社のデータを持ち寄ることで成立しました。秘密計算環境上で行った主成分分析と線形回帰は、通常の環境で行った解析結果を再現しています。両社のデータを結合した予測モデルでは、流動性に関する物性の予測誤差が、レゾナックのデータのみの場合に比べて約78%減少しました。得られた回帰係数は、化学メーカーA社の研究者からも、材料に関する既存の知見と整合すると評価されています。

さらに、構築した予測モデルを用いて未評価サンプルの物性値を予測し、評価実験の前に性能を見積もれることを確認しました。

5. 本取り組みの意義

秘密計算は、企業間の機密保持とデータ利活用の両立を可能にする技術です。特に材料開発分野では、原材料メーカーから最終製品メーカーまで複数企業が関与するため、データ連携の実現は開発効率向上や新材料創出につながることが期待されます。本取り組みは、従来は共有が難しかったデータを活用するための基盤技術として、化学業界における新たな協業モデルの実現を目指すものです。

6. 各社のコメント(掲載枠)

株式会社レゾナック・ホールディングス 執行役員 CTO 福島 正人

「半導体サプライチェーン全体での材料開発高速化に向けては、自社のデータだけでなく、各社が持つデータを組み合わせて活用することが、ますます重要になっています。今回の取り組みでは、互いのデータを開示しないまま解析できるMI基盤を構築し、実際の材料開発テーマで、データを持ち寄ることの効果を確認しました。この基盤により、企業どうしが機密を守りながらデータに基づいて議論し、開発の方向性を早い段階で見極めるという進め方が、共同開発の中に自然に組み込まれていくことを期待しています。MIを自社内で完結する取り組みから、企業の枠を越えて活用できる研究開発基盤へと発展させることで、化学業界における新たな協業のかたちを広げ、イノベーション促進に貢献していきたいと考えています。」

株式会社ZenmuTech 代表取締役社長CEO 阿部 泰久

「2023年から共創を開始させて頂いて以来、レゾナック様は、企業の競争力の源泉である機密データを守りながら、その価値を最大限に引き出すという新たな領域に先駆けて挑戦されてこられました。今回、組織間で機密データを開示することなく安全に分析し、物性予測の精度向上という具体的な成果につながったことは、レゾナック様の更なる競争力向上に向けた大きな一歩であると同時に、ZenmuTechにとっても秘密計算技術を社会に広げていく大きな一歩だと考えています。その一歩を共に踏み出せたことを大変嬉しく思います。今後も秘密計算技術を更に磨きながら、この成果の先にある可能性を追求し、レゾナック様の次なる挑戦を支え、新たな価値創造へとつなげてまいります。」

国立研究開発法人産業技術総合研究所 サイバーフィジカルセキュリティ研究部門 首席研究員 花岡悟一郎

「レゾナック様とZenmuTech様の連携により材料化学分野における秘密計算の社会実装がさらに加速されるものと思います。産総研発の技術が両社の取り組みを通じて社会に展開されていくことを期待しています。」

7. 今後

 今回の実証により、秘密計算環境上で回帰分析を行い、材料物性を予測する技術の有効性を確認しました。今後は実運用に向けて、計算結果の開示範囲や開示先など、企業間でデータを持ち寄る際に必要となる運用ルールを、システムと契約の両面から整備してまいります。あわせて、今回の実証テーマ以外へも対象を広げ、活用事例を積み上げてまいります。レゾナックは、秘密計算を活用した企業間のデータ連携を通じて、材料開発の高度化とイノベーション創出に取り組みます。

【注釈】

*1 秘密計算:データを秘匿したまま計算する技術。計算を行う側も、他社が提供した元のデータの内容を知ることができません。

*2 MI(マテリアルズ・インフォマティクス):実験や計算で得られたデータを統計や機械学習で解析し、材料開発を効率化する手法。

*3 秘密分散:データを複数の断片に分割して別々に保管する技術。断片の一部が漏れても、元のデータを復元できません。

*4 ISO/IEC 4922-2:秘密分散を用いた秘密計算の手順を定めた国際規格。国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が2024年3月に発行しました。この規格により、標準に沿った秘密計算を実装できるようになりました。

*5 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP):内閣府が府省の枠を超えて推進する国家プロジェクト。2023年度から始まった第3期では14の課題が設定され、その一つとして、秘密計算などを用いてプライバシーを保護しながらデータを解析する技術の社会実装が進められています。

*6 主成分分析:多数の項目からなるデータを、少数の指標に要約して全体の傾向を把握する統計手法。

*7 回帰分析:複数の条件と結果の関係を数式で表し、条件から結果を予測する統計手法。

以上

【Resonac(レゾナック)について】

レゾナックは、2023年1月に昭和電工と旧日立化成が統合して発足した機能性化学メーカーです。

2025年度の半導体・電子材料の売上高は、約5,000億円に上り、特に半導体の「後工程」材料では世界トップクラスの企業です。2社統合により、材料の機能設計はもちろん、自社内で原料にまでさかのぼって開発を進めています。社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE:共鳴する・響き渡る」と、Chemistryの「C」の組み合せです。今後さらに共創プラットフォームを生かし、国内外の半導体メーカー、材料・装置メーカーとともに技術革新を加速させていきます。詳しくはウェブサイトをご覧ください。

株式会社レゾナック・ホールディングス https://www.resonac.com/jp/

【ZenmuTech(ゼンムテック)について】

秘密分散技術は、データを「それ自体では意味を持たないいくつかの分散片」に分け、それぞれの分散片を別の環境で管理することで、データの保護と安全性を高める技術です。 ZenmuTechは、秘密分散技術をソフトウェア開発キット(SDK)として提供するZENMU EngineやPCからの情報漏洩を防ぐ 「ZENMU Virtual Drive」をはじめとする自社製品を開発・販売し、多くの企業様にご利用いただいております。 また、データを秘匿したまま計算できる秘密計算の分野では、産総研との協働による研究や社会実装に向け、秘密計算データベースプラットフォーム「QueryAhead®」を提供しています。

「QueryAhead®」はZenmuTechの登録商標です。

ウェブサイト https://zenmutech.com/

◆本件に関するお問い合わせ先   

株式会社レゾナック・ホールディングス 

ブランド・コミュニケーション部 メディアリレーショングループ

メール:pr_med@resonac.com

株式会社ZenmuTech IR担当

メール:ir@zenmutech.com

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会社概要

株式会社ZenmuTech

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URL
https://zenmutech.com
業種
情報通信
本社所在地
東京都中央区新川2-22-1 いちご新川ビル 5階
電話番号
03-6260-6195
代表者名
阿部泰久
上場
東証グロース
資本金
4億3435万円
設立
2014年04月