日系企業で初めてベトナムで森林におけるCO2吸収量の推定見える化に成功【ONE-VALUE(株)】総務省委託案件
ベトナム林業にICTソリューションを導入してCO2吸収量を推定見える化。クレジット創出に向けた取り組みを今後拡大
サマリー
ベトナムは豊富な森林資源を有する国で、近年注目が高まる森林由来のカーボンクレジットに高いポテンシャルがあると考えられています。しかし、ベトナム林業はDX導入が遅れており、ベトナムのもつ森林から、カーボンクレジットでどの程度の収益を得ることができるかは、明確には分からない状況でした。そこで、ONE-VALUE株式会社は総務省「ベトナム社会主義共和国における林業ICTソリューションの導入に関する実証の請負」として、ベトナム大手林業公社ビナフォー社と連携し、日系企業がもつ林業ICTツールを活用して、ベトナム林地におけるCO2吸収量を推定見える化の実証実験を行いました。CO2吸収量を見える化するICTソリューションが、過去にベトナムに導入された実績はなく、本実証実験は日系企業によるベトナム初の事例となりました。その結果、ベトナムがもつ森林カーボンクレジットのポテンシャルは、約2兆6,730億円と試算(ONE-VALUE(株)による)されました。森林カーボンクレジットの一人当たりの恩恵額に換算すると、農村部人口の年間所得の約45%を占める額となり、森林カーボンクレジットの高いポテンシャルが確認される結果となりました。
実証実験の概況
2024年1月から2月、ベトナム大手林業公社ビナフォー社が提供したベトナム南部ドンナイ省の林地にて、CO2吸収量を推定見える化を実施しました。ONE-VALUE株式会社が全体統括を担い、日本の大手通信事業者が林業ICTソリューションを提供し、ビナフォー社は林地の提供および林業ICTソリューションの運用・管理を担当しています。
ベトナムでは、2028年に国内でカーボンクレジット市場を設立予定としており、ベトナムの林業事業者は、自社が保有する森林資源から得られるカーボンクレジットのポテンシャルに大きな関心をもっています。一方で、森林によるCO2吸収量を数値化する手法は確立されておらず、ポテンシャルが不透明であることが課題となっていました。そこで、本実証実験を通じて、CO2吸収量を推定見える化するとともに、ベトナム現地の林業事業者であるビナフォー社が林業ICTツールを運用・管理できる体制とすることで、将来的には、ベトナム現地の林業事業者が、自らICTソリューションを活用し、カーボンクレジットのポテンシャルを試算できるようにしています。実証実験では、ベトナムがもつ森林カーボンクレジットのポテンシャルは、約2兆6,730億円と試算(ONE-VALUE(株)による)されました。これは、森林カーボンクレジットの一人当たりの恩恵額に換算すると、農村部人口の年間所得の約45%を占める額となり、非常に高い森林カーボンクレジットのポテンシャルを有することが確認されました。今後はCO2吸収量を見える化する林業ICTソリューションを、様々な林業事業者に展開するとともに、直接森林カーボンクレジット発行につなげることが可能な、より精度の高い実証実験を展開することを予定しています。
ベトナムは豊富な森林資源をもち、森林カーボンクレジット販売を推進している
ベトナム統計局によると、ベトナム全国の森林面積は14,790,100 ha、森林被覆率は約42.0%(2022年時点)と、豊富な森林資源を有する国です。また、ベトナム政府は2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロを表明しており、環境保護と二酸化炭素排出に関する国際的な公約達成に向けて、ベトナム政府はカーボンプライシングの整備を迅速かつ積極的に進めています。ベトナムは、森林関連の経済的なポテンシャルのみならず、今後のカーボンプライシングにおける排出権取引においても、高いポテンシャルが期待されています。
出典:World Bankとベトナム総合統計局のデータを基にONE-VALUEが作成
2023年12月末には、ベトナムで初めて1,030万トンの森林カーボンクレジットが正式販売され、約5,150万ドルの収益を上げたことが、ベトナム農業農村開発省より発表されました。ベトナム農業農村開発省と国際復興開発銀行が締結した「北中部地方での温室効果ガス排出削減購入契約(ERPA)」第一段階に基づき、最初の支払いとして、ベトナム森林保全開発基金が4,120万ドルを受領しています。
ベトナム林業はDXが遅れ、森林カーボンクレジットのポテンシャルが不明確であった
ベトナムの林業では、森林管理に関する環境データの見える化、特に現地における森林カーボンクレジット市場の将来的な確立を見越した、CO2吸収量の推定見える化が進んでいませんでした。そのため、森林カーボンクレジットからどの程度の収益を得ることができるか、ポテンシャルの算出は行われてきませんでした。しかし、世界的な脱炭素の動きからも、CO2を吸収する森林への注目が高まっており、ベトナム現地の林業事業者によるCO2吸収量の推定見える化へのニーズが非常に高まっています。この状況をふまえ、ベトナム林業におけるCO2 吸収量の推定見える化を目指し、ONE-VALUE株式会社は、ベトナム大手林業公社ビナフォー社および日系企業と共同で実証実験を実施することとしました。
ベトナムは2兆円以上の森林カーボンクレジットのポテンシャルを有している
実証実験では、ベトナム大手林業公社ビナフォー社が提供したベトナム南部ドンナイ省の林地において、日系企業が提供した林業ICTソリューションを活用してCO2吸収量を推定しました。なお、CO2吸収量を見える化するICTソリューションが、過去にベトナムに導入された実績はなく、本実証実験はベトナム初の事例となりました。その結果、ベトナムがもつ森林カーボンクレジットのポテンシャルは、約2兆6,730億円と試算(ONE-VALUE(株)による)されました。これは、森林カーボンクレジットの一人当たりの恩恵額に換算すると、農村部人口の年間所得の約45%を占める額となり、非常に高い森林カーボンクレジットのポテンシャルを有することが確認されました。CO2吸収量がすべて森林カーボンクレジットに変換されることはなく、また取引価格も変動があるため、上記の数字が必ず獲得できるという訳ではないですが、ベトナムがもつ豊富な森林は、現在所得水準が比較的低い林業従事者にとっても、経済的に非常に多くの恩恵をもたらす可能性があることが確認できました。
今後の展開
本実証実験を通じて、導入時に考慮すべき事項(日射量・通信環境等)や、運用・管理上で考慮すべき事項(デバイス設置場所を通常業務の範囲内とする)、ベトナム特有の樹種に対応できるCO2吸収量推定アルゴリズム構築など、様々な知見を得ることができました。今後はCO2吸収量を見える化する林業ICTソリューションを、様々な林業事業者に展開する予定です。また、ベトナム政府は、2028年にCO2クレジット市場設立を目指しています。本実証実験では、あくまでCO2吸収量の算出であり、CO2固定量ではないため、今回算出された森林カーボンクレジットのポテンシャルは試算値にとどまっています。ONE-VALUE株式会社は、今後とも、直接森林カーボンクレジット発行につなげることが可能な、より精度の高い実証実験を展開することを予定しています。
ICTソリューション設置の様子
写真右側:ベトナム大手林業公社ビナフォー社 左側ONE-VALUE株式会社担当者
会社紹介
創業以来、ベトナム人材活用および経営コンサルティングのプロとして、活動しております。様々な業界のお客様に対して、日本・ベトナム間のビジネス展開に関する深い専門知識と豊富な実務経験を活かして、サービスを提供してきました。これからも弊社は常に、お客様にとって最も効果的なソリューションをご提案し続けます。ベトナムにフォーカスし、ベトナムに関する幅広いネットワークと業界の深い知見を有することがONE-VALUEの最大の強みです
【経営コンサルティング事業】
ONE-VALUEはベトナム進出に関する経営コンサルティングサービスを提供しています。市場調査、企業調査、消費者調査、ベトナム市場進出に関する戦略立案、投資アドバイザリー(合弁設立、事業の立上等)、ベトナム企業のM&Aアドバイザリーなどお客様のご要望に応じてオーダーメイド式でご提供しています。
【M&A】
ONE-VALUEでは、ベトナム市場に特化したM&Aアドバイザリーサービスを提供しています。私たちは、日本企業とベトナム企業の合併・買収において、独自の深い市場理解と豊富な経験を活かし、クライアントに最適な戦略を提案します。
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