生成AIと数理最適化技術で、生産ラインの構成を自動立案する技術を開発

分散した製造知識を活用し、現場の要請に応じた複数のライン構成案を定量的に導き、業務効率化や迅速な意思決定を支援

株式会社 日立製作所

 日立およびHUN-REN Institute for Computer Science and Control(以下、SZTAKI)は、製造業における安定供給と生産効率向上を両立する生産体制の構築を支援するため、需要変動や人員不足、設備故障などの変化に応じて、生産ラインの運用・改修方針の策定から、ライン構成案の導出までを一貫して自動で立案する技術を開発しました。本技術は、生成AIと数理最適化*1技術を連携させることで、「生産量を20%増やしたい」といった現場の要請に対し、部署やシステムに分散している製造知識を集約・整理して活用しながら運用・改修方針を定め、必要なパラメータ*2の項目や値を段階的に決定した上で、現場に即した複数のライン構成案を定量的に導きます。これにより、従来、担当者の知識に依存しがちであった工程分割や設備割り付けを含むライン構成の見直し業務を効率化し、現場の迅速な意思決定を支援します。バッテリー製造ラインの構成見直し業務における検証では、熟練者が検討した案と同等のライン構成品質*3を保ちながら、見直し業務の工数を従来の手作業と比べて最大87.3%削減できることを確認しました。

 今後、日立は、製造業のお客さまとのPoCや現場適用を通じて、導入効果を検証し、知識を蓄積することで、バッテリー、自動車、医薬機器、産業機械など幅広い分野への展開をめざします。また、生産ラインの運用・改修の高度化・迅速化を支援することで、製造業の競争力強化および持続可能なものづくりに貢献していきます。

 SZTAKIは、生産システムおよび数理最適化に関する研究知見を活かし、本技術をさらに高度化するとともに、適用範囲の拡大や、最新の生成AIアプローチの適用可能性の探求に向けた研究開発を継続していきます。

*1 数理最適化: 与えられた条件や数値のもと、コストや生産性などの目的関数を最大化・最小化する最適解を数学的に求める手法。

*2 パラメータ: ライン構成や設備の割り付けを検討する際に必要となる条件(項目)や数値。

*3 同等のライン構成品質: バッテリー製造ラインの構成見直し業務において、熟練者が検討したライン構成案と比較し、工程分割や設備割り付けなどの観点で評価しました。

背景および課題

 製造業では、需要変動や人員不足、設備故障などの変化が続く中でも、安定供給と生産効率向上を両立できる生産体制の構築が求められています。そのため、生産ラインの運用・改修方針や構成を状況に応じて見直し、供給への影響を抑えながら柔軟に対応することが重要です。一方で、こうした見直しでは、現場の要請を踏まえた運用・改修方針の策定から、工程分割や設備割り付けなどの具体的なライン構成の検討まで、多くの判断が必要です。近年は数理最適化モデル*4の活用が進んでいますが、現場に即した方針を定めるには製造現場や生産技術の知識が必要であり、その方針を最適なパラメータ設定へ落とし込むには数理最適化技術の知識も求められます。これらの知識を横断的に有する熟練者は限られているうえ、検討に必要な情報が複数の部署やシステムに分散していることもあり、変化に応じたライン構成の見直しを迅速に進めにくいことが課題でした。

*4 数理最適化モデル: 生産ラインの条件を数式で表し、最適な工程分割や設備割り付けを求めるためのモデル。

課題を解決するために開発した技術・ソリューションの特長

 そこで日立およびSZTAKIは、生成AIにより現場の要請を生産ラインの運用・改修方針へ整理し、必要なパラメータを設定するとともに、数理最適化技術により、方針に沿いながら現場で実行可能なライン構成案を導出する、一貫した自動立案技術を開発しました。これにより、担当者ごとの知識に依存せず、安定供給と生産効率向上の両立に向けた迅速な意思決定を支える生産ラインの見直しが可能となります。技術の特長は以下の通りです。

1. 現場の要請を実行可能なライン構成案へつなぐ生成AIと数理最適化技術の連携

 従来、生産量を20%増やしたいといった現場の要請を数理最適化モデルで扱うパラメータへ変換する作業は人手で行われており、双方の情報形式が異なることなどから、誤ったパラメータが設定されることがありました。本技術では、生成AIの処理を「生産ラインの運用・改修方針決定」「パラメータ項目決定」「パラメータ値決定」の3段階に分割し、運用・改修方針を整理した上で必要なパラメータの設定項目と具体的な値を順に決めることで、自然言語で入力された現場の要請を適切なパラメータへ自動で変換します。さらに、数理最適化技術により、工程分割や設備割り付けなどの複数のライン構成案を現場で実行可能な範囲で定量的に導きます。

2. 分散した製造知識を活用し、検討に必要な情報をつなぐ階層型ナレッジ参照技術

 従来、生産ラインの運用・改修方針に関する知識、方針とパラメータ設定の対応関係、パラメータ設定そのものに関する知識が、複数の部署やシステムに分かれて存在しているため、必要な情報を集めて検討に活用するまでに時間がかかることが課題でした。本技術では、製造に関する知識を集約し、生成AIが利用しやすい形に構造化しました。さらに、「生産ラインの運用・改修方針決定」「パラメータ項目決定」「パラメータ値決定」の3段階の処理に対応する形で階層的に整理して、生成AIが各段階で必要な情報を効率的に参照できるようにしました。これにより、分散した知識を集約・整理して活用できるため、担当者ごとの知識に依存せず、現場の要請に応じたライン構成案を迅速に導きます。

3. 複数案を比較可能にし、意思決定を支援する評価・説明技術

 本技術では、生産ラインを構成するリソース(作業者や設備)の違いが、労務費・設備費などのコストや作業量にどのような影響を与えるかを知識として組み込んでいます。これにより、単に生産可能な案を示すだけでなく、コスト・生産性の観点も踏まえて複数のライン構成案を比較できます。その結果、各案の違いや選定理由が確認しやすくなり、現場でのレビューや上位層への提案を進めやすくし、最終的な意思決定の迅速化につながります。

図1 生産ラインの運用・改修方針の策定から、パラメータ設定、ライン構成案の導出までを自動で立案する技術の活用イメージ

■確認した効果

 本技術の有効性をバッテリー製造ラインの構成見直し業務で検証したところ、例えば、需要増に伴う増産や設備故障時の停止期間最短化といった現場の要請に対し、生産ラインの運用・改修方針の整理から必要なパラメータを設定し、ライン構成案を導出するまでを一貫して自動で立案できることを確認しました。さらに、従来、熟練者が手作業で行っていた対象業務と比較したところ、工程分割や設備割り付けなどのライン構成は、熟練者が検討した案と同等の品質を保ちつつ、見直し業務の工数を最大87.3%削減できることを確認しました。

今後の展望

 今後、日立は製造業のお客さまとのPoCを通じて本技術の適用範囲や導入効果の検証を進めるとともに、カスタマーゼロとして自社の実践で得た現場の知識を蓄積し、バッテリー、自動車、医薬機器、産業機械など幅広い分野への展開をめざします。また、本技術を日立が掲げる「IWIM(Integrated World Infrastructure Model)*5」を構成する業務特化型AIモデルの一つとして位置づけ、ドメインナレッジとAIの融合により、生産ラインの運用・改修のさらなる高度化・迅速化を支援します。これにより、製造業の競争力強化および持続可能なものづくりに貢献していきます。

 SZTAKIは、生産システムおよび数理最適化に関する研究知見を活かし、本技術をさらに高度化するとともに、適用範囲の拡大や、最新の生成AIアプローチの適用可能性の探求に向けた研究開発を継続していきます。


 なお、本成果の一部は2026年8月に国際的な学術誌「Procedia CIRP」に掲載される予定です*6。

 *5 日立が2025年11月に発表した知能基盤モデル。ミッションクリティカルな社会インフラにフィジカルAIを安全・高信頼に実装するため、長年にわたり蓄積してきた多層的なOTナレッジと、物理現象に関する深い理解を基に開発。設備やシステムの設計・構築・運用において、複雑な条件下でも適切な判断と制御で一体的に支援し、高度化を実現します。

*6 Kaichiro Nishi, Daisuke Tsutsumi, Takahiro Nakano, Youichi Nonaka, Gianfranco Pedone, András Kovács, Krisztián Balázs Kis, Ágoston Dalotti, and József Váncza, "Automated Production Line Configuration Technology Through the Integration of LLM and Mathematical Optimization Techniques," Procedia CIRP, 2026.

■関連情報

 SZTAKI関連ページ(英語)

 https://sztaki.hun-ren.hu/en/current/news/2026/hitachi-project-at-hun-ren-sztaki-en

 

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東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
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代表者名
德永 俊昭
上場
東証プライム
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設立
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