【調査報告】Apple, NVIDIA, AMD, SoftBankキーノートを分析したら伝達設計の三要素が見えてきた

— ライブか編集か/話の始まりは世界観か機能か/ストーリーは直線的か分岐的か —

コグニティ

 知識表現AIを用い、会話・文章情報から組織課題を可視化するコグニティ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役:河野理愛、以下「コグニティ」)は、これまで実施してきた企業Keynote(キーノート)分析の知見を再整理し、キーノートがその目的に応じてどのように内容を届けるかを捉える枠組みとして、「伝達設計」の三要素をまとめました。

 コグニティはこれまで、CESの高成長企業群、Apple WWDC、SoftBank Worldなどのキーノートを分析してきました。その結果、企業価値が伸びている企業群のキーノートには一定の共通構造が見られること、またストーリーが同様の展開であっても、ライブ感や話の出発点が異なれば聞き手に異なる印象を与えること、などが分かってきました。一方で、近年のキーノートは、伝えるべき情報量の増加とメディアの多様化が進み、その構成は“コンテンツ”としての性格を強めています。そのため、企業トップによる発信は、「何を語るか」だけでなく、「どう届けるか」を構造として設計する必要性が高まっています。

 こうした背景を受けて、コグニティは、世の中に分散して存在するプレゼンテーション論、レトリック、コミュニケーション設計などの考え方を、キーノート分析向けに統合し、提示形態/起点設定/展開構造という三要素から成る「伝達設計」として整理しました。さらに、これらの差を、実際の発話データから観測可能な指標に置き換えて比較できることを示しました。

■ 調査の背景

 コグニティはこれまでのCESにおける高成長企業のキーノート分析で、企業価値を大きく伸ばした企業群のキーノートには共通する構造が見られることを示しました。キーノートの構造は単なる話法ではなく、企業価値と関係し得る分析対象として扱う意味がある――この問題意識が、本整理の出発点です。

 これまでの分析では、キーノートの差は一つの軸だけでは説明しきれないことを確認してきました。たとえば、Apple WWDC2025では、主線を強く保ちながら前に進む「直線設計」が見られました。一方、SoftBank Worldでは、届け方の違いだけではなく、何を入口として語り始めるかという「語りの起点」が発信の型を分ける重要な要素として現れました。さらにApple WWDC1997の分析では、同じ直線展開であっても、編集度と語りの起点が異なることで、別のモードとしてキーノートを読み解けることを示しました。

 こうした違いをどのように記述すればよいのか。本稿では、伝達設計を「キーノートが、その目的に応じてどのように内容を届けるかを捉える枠組み」であると定義します。各企業が明示的に意識しているか否かにかかわらず、上記のように、既報では伝達設計視点での違いが現れています。つまり、伝達設計を要素分解してそれぞれを定量的に分析することで、明示的に伝達設計を活用する体系を提供できるようになります。

*既報

・【調査報告】スティーブ・ジョブズ、伝説の「WWDC1997」AI分析で見えた2つの基本モード: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000012053.html

・【調査報告】WWDC2025 Keynote分析で見えた「直線設計」: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000012053.html

・【調査報告】SoftBank World年代比較分析で見えた「届け方」に加わる「語りの起点」という第2の軸: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000012053.html

・【調査報告】Apple WWDC2020 × CES高成長企業キーノートで「届け方の2系統」が判

明: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000012053.html

・【調査報告】CES Keynote 予測分析で分かった“高成長企業の分岐点”:

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000012053.html

■ 分析方法

 コグニティの特許技術CogStructureを用い、キーノートの発話を構造化して比較可能な指標に変換します。主な差分抽出指標は、ストーリー展開(直線/枝分かれ/複数オプションなど)、1000文字あたりの指示語、フィラー、話すスピード(1分あたり文字量)、話題構成、主要話題(上位話題)などです。本稿では、これらのうち特にフィラー頻度、主要話題上位3件、ストーリー展開比率を、三要素の代表指標として用い、「伝達設計の三要素」を代表する観測値として整理し直します。

※本リリースに記載する数値・分類は、コグニティの調査によるものです。

■ 主な結果①:キーノート分析で見えてきた三要素―提示形態/起点設定/展開構造

 これまでいくつものキーノートを分析してきた中で、一つの軸だけでは、様々なキーノートの差を説明しきれませんでした。

 まず、Apple WWDC 2010・2020とCESの分析では、図1の様にフィラーの検出量から、提示形態としてライブ感や対話性を魅力として一部に残す設計と、体験としての完成度を最大化するために高度に編集する設計があることが分かりました。次に、SoftBank World(SBW)の分析では、図2の様にフィラーの検出量を基にフィラー頻度(回/1000文字)を計算して編集度として他のキーノートとの違いを分析したところ、提示の形態の違いだけでは説明しきれず、語りの起点を世界観側に置いているか機能側に置いているかの違いがあることが分かりました。そして、特異点として語られることが多いWWDC1997には、図3の様に直近のWWDC2025と同様に、ストーリーが直線的に展開するという共通点があった一方で、WWDC2010・2020は、分岐的な展開が多く見られる点で、異なるストーリー構成であることが分かりました。

 このように、キーノートの違いは、少なくとも提示形態/起点設定/展開構造の三要素を組み合わせることで初めて整理できることが見えてきました。

図1:検出されたフィラー量

【図の見方】縦軸のフィラー量は、CES2024~2026での高成長企業の平均と、WWDC2010およびWWDC2020について、総検出数(正規化前)で比較しています。

【読み取れること】CES高成長企業では押しなべてフィラーが少なかったのに対し、WWDC2010では多くのフィラーが検出される一方、WWDC2020では全く検出されませんでした。

【示唆】WWDC2010では、ライブの舞台上で実機デモを行うなどのライブ感が強調された構成が取られていましたが、CESやWWDC2020は舞台上でプレゼンターが話し続ける構成となっています。このことから、より強いライブ感を提供する構成ではフィラーは多くなる傾向があり、フィラーの回数は品質劣化ではなく、“ライブ感をどこに置くか”という設計変数になり得ると考えられます。

図2:キーノートの型の分布(編集度×語りの起点)

【図の見方】横軸は、編集度(フィラー頻度)として、フィラーの検出数を話量(文字数)で正規化し、回/1000文字で算出(対数軸)しています。縦軸は、語りの起点(世界観比率)として、各回で検出された情報量の多い話題1位から3位の3件のうち、世界観(人間観・文明観・前提)側と判定された件数を示します。プロットの点は各イベントの分布図上での位置を示します。

【読み取れること】SBWは、世界観寄り × ライブ感ありの領域に位置し、他のキーノート群とは異なるポジションとなっています。一方で、WWDCおよびNVIDIA・AMDは、相対的に機能寄り × ライブ感なしにまとまっています。

【示唆】キーノートの違いは、「ライブ⇔コンテンツ化(編集度)」だけでなく、「語りの起点(世界観⇔機能)」にも表れます。

※この図は優劣を表すものではなく、届け方(編集度)と語りの起点によるプレゼン設計上の“配置の違い”を見るためのものです。

図3:ストーリー展開の違い(1997/2010/2020/2025)

【図の見方】話題のストーリー展開を「直線的展開/枝分かれ展開/複数オプション提示」の3指標で比較しています。

*「全体まとめ」と「小さな範囲でまとめ」は、いずれのデータでもゼロであったので、表示から割愛しています。

【読み取れること】WWDC1997とWWDC2025は枝分かれが少なく直線的に前進する傾向が強く、WWDC2010・2020は直線的展開に対して枝分かれがより多く発生する傾向があります。

【示唆】WWDC1997・2025の直線的展開は、ストーリーを横に広げるより主線に沿って前進させる話の流れや方向性を印象付ける構成、WWDC2010/2020の枝分かれ展開は、多くの話題に対して説明を十分に施し内容の理解を促す構成になっています。

■ 主な結果②:三要素で伝達設計を整理する

 さまざまなキーノートを分析した結果、それぞれの違いを表す提示形態/起点設定/展開構造の三要素が見えてきました。これらは、伝達設計を構成する要素としてまとめることが出来ます。ここでの「伝達設計」とは、「キーノートが、その目的に応じてどのように内容を届けるかを捉える枠組み」です。各企業がキーノートにおいてこのような枠組みを明示的に意識しているか否かにかかわらず、これまでの分析では、伝達設計視点での違いが現れていました。

 一方で、世の中では、プレゼンテーション論やレトリック、コミュニケーション設計の各分野で、delivery(届け方)、framing(語りの枠づけ)、structure(構造)といった考え方に代表される「どう届けるか・どのように語るか・どう構成するか」といった論点が個別に論じられてきました。そこでコグニティは、独自のキーノート分析から抽出された提示形態/起点設定/展開構造の三要素により、こうした既存のアプローチに見られる論点をキーノート分析向けに束ね直しました。これにより、キーノートの違いを整理するための共通言語として伝達設計を位置づけることができます。

既存アプローチ

【議論領域】

プレゼンテーション論

レトリック

コミュニケーション設計

既存アプローチ

【考え方】

delivery(届け方)

framing(語りの枠づけ)

structure(構造)

既存アプローチ

【論点】

どう届けるか

どのように語るか

どう構成するか

コグニティによる整理

【伝達設計】

提示形態: ライブ感⇔編集

起点設計: 世界観⇔機能

展開構造: 直線性⇔分岐性  (*各要素の説明は下記)

表1:プレゼンテーション分析における主な既存アプローチと伝達設計

図4:伝達設計の三要素

 伝達設計の三要素を個別に説明します。まず提示形態は、ライブ感・即興性をどこまで残すか、あるいはどこまで編集度を高めるかという、提示の質感に関わる要素です。代表指標として1000文字あたりのフィラー頻度を編集度の代理指標として用います。フィラー頻度が大きいほどライブ感が強く、値が小さいほど編集度が高いと読みます。次に起点設定は、何を入口として語り始めるかという要素です。世界観側から入るのか、機能側から入るのかによって、聞き手の受け取り方は大きく変わります。世界観⇔機能で示される軸を持ち、主要話題上位3件のうち世界観側と判定された件数に応じて、世界観中心/世界観寄り/機能寄り/機能中心の四段階で分類します。そして展開構造は、話をどのような筋道で前に進めるかという要素です。主線を固定して進むのか、枝分かれしながら広げるのかによって、同じ情報量でも構造は大きく異なります。検出されたストーリー展開の総数に占める直線的展開の比率で評価し、直線性強/直線性弱/分岐性強の3段階に分類します。

■ 主な結果③:既報事例は三要素で整理し直せる

 これまで分析してきた個別キーノート、WWDC1997・2010・2020・2025、SBW2013/2025(SBWの特徴差が最も見やすい代表年として2013年と2025年を掲載)、CES2025でのNVIDIA、CES2026でのAMDは、伝達設計三要素の組み合わせとして再整理できます。

図5:伝達設計三要素での比較

【図の見方】横軸は編集度(フィラー頻度)により提示形態を示しています。縦軸は語りの起点がどこにあるのかで起点設定を示します。それぞれのキーノートの分布位置を示す各プロットの色は、赤が直線性強、緑が直線性弱、青が分岐性強を表して展開構造を示しています。

*横軸は対数軸のため、フィラー0(検出なし)は表示上の最小値に置換して扱います。

【読み取れること】WWDCは年によって三要素を使い分けています。SBWは直線性とライブ感を保ちながら話の起点は年によって振れています。AMDとNVIDIAは起点話題が機能寄りか機能中心か、展開が直線性を持っているか分岐性が強いかが異なっています。

【示唆】各キーノートは、伝達三要素で比較することにより、それぞれの特徴が際立ってきます。

*この図は優劣を表すものではなく、伝達設計三要素によるプレゼン設計上の“配置の違い”を見るためのものです。

キーノート

提示形態

(フィラー頻度)

起点設定

(4段階)

展開構造

(3段階)

WWDC1997

0.87

3

1

WWDC2010

0.33

1

3

WWDC2020

0(検出なし)

1

3

WWDC2025

0(検出なし)

1

1

SoftBank World 2013

22.98

4

1

SoftBank World 2025

12.96

2

1

AMD2026

0.15

2

2

NVIDIA2025

0.09

1

3

表2:各キーノートの伝達設計三要素

【表の見方】提示形態は、1000文字あたりのフィラー検出数であるフィラー頻度を代表指数としています。起点設定は、主要話題上位3件のうち世界観側と判定された件数に応じて、4.世界観中心/3.世界観寄り/2.機能寄り/1.機能中心の四段階で分類しています。展開構造は、検出されたストーリー展開の総数に占める直線的展開の比率で評価し、1.直線性強/2.直線性弱/3.分岐性強の3段階に分類します。

*この表は優劣を表すものではなく、プレゼン設計上の違いを見るためのものです。

■ コグニティの示唆

 大量情報時代のKeynoteは、「何を語るか」だけでなく、「どう見せ、どこから始め、どう進めるか」を分けて設計する必要があります。したがって、提示形態/起点設定/展開構造を一体として捉える「伝達設計」が重要であると言えます。

 そして、今回の整理が示しているのは、Keynoteに単一の“正解の型”があるわけではない、という点です。同じ直線展開でも、WWDC1997とWWDC2025では提示形態と起点設定が異なり、聞き手が受け取る印象は大きく変わります。逆に、起点設定が近くても、展開構造が異なれば別の伝わり方になります。つまり、Keynoteの特徴は、三要素の組み合わせとして初めて捉えられます。

 今回取り上げた企業群はいずれも10年時価総額成長率の高い企業であり、その発信には、時代背景と自社のスタイルに応じて伝達設計を使い分ける傾向が見られます。これは、大量情報時代においても、自社の将来価値や成長の方向性を市場に理解可能な形で示すための設計が機能している可能性を示唆します。

 コグニティは今後、企業がいまどのような局面にあるのか、たとえば「基軸を置き直す局面」にあるのか、「既存価値を積み上げる局面」にあるのかを見極めたうえで、どの伝達設計を採るべきかを、比較可能な指標で示せるようにしてまいります。将来的には、伝達設計の手法と受け止め方・評価・価値との関連まで検証していきたいと考えています。

■ 分析レポートについて(限定公開)

 本分析の詳細版(構造図、比較観点の定義、抽出ルール、参考図表を含む)は限定公開です。技術プレゼンに関係する皆様には、高成長企業の事例から得られる「伝える技術」に関する情報を共有します。取材・内容確認・レポート閲覧をご希望の方は、下記お問い合わせ先までご連絡ください。

*お問い合わせ先: https://cognitee.com/contact

*本リリース中で言及している会社名・製品名は、各社の商標または登録商標です。

*本分析は発信構造の比較であり、特定の企業・人物の優劣を断定するものではありません。

■ トライアルのご案内:Baseline Review機能

 コグニティは、会話・文章などの定性データを、独自の構造化技術により「改善に使える指標」と「行動に落ちる示唆」に変換する分析サービスを提供しています。商談・会議・社内共有・研修・顧客対応・IRなど、目的に応じてコミュニケーションの“伝わり方”と“成果につながる要因”を可視化し、改善の優先順位と打ち手を提示します。

 その入口として、短期間で現状の課題と改善の方向性を把握できる「Baseline Review(お試し)」を5万円(税別)で2026年1月27日にリリースいたしました。個人・組織の力量を確かめるため、パフォーマンスが良いトーク/悪いトークの違い(構成・論点の置き方・説得の流れ等)や最終版の再レビュー(Before/After比較)として、録画・音声・書類等を2本ご提出いただくことで、分析結果とブリーフィング1時間でフィードバックします。(個人利用の場合は、ブリーフィングに代わりメールもしくはオンラインセミナーにて実施)

申込ページ:https://cognitee.com/baseline-review-cog-evidence

【コグニティ株式会社 会社概要】

◯ 社 名:コグニティ株式会社

◯ パーパス :技術の力で、思考バイアスなき社会を。

◯ 事業内容 :定性情報の定量化技術を使った組織分析サービス

◯ 本 社:〒140-0015 東京都品川区西大井一丁目1番2-208号

◯ 設 立:2013年3月28日

◯ Web:https://cognitee.com/

◯ 資本金:6億円(準備金含む)

◯ 従業員:71名(リモートワーカー含む)

◯ 代表者:代表取締役 河野 理愛

◯ 受賞歴他 :

■EY Innovative Startup エンタープライズ部門受賞(2019)

■第11回 HRアワード 人材開発・育成部門 最優秀賞(2022)

■第22回 一般社団法人日本テレワーク協会 テレワーク推進賞 優秀賞受賞(2022)

■第3回TOKYOテレワークアワード 推進賞(2023)

■一般社団法人生成AI活用普及協会協議員(2023〜)

本件に関するお問合せ

コグニティ株式会社 広報担当:奥井

Email: ​okuinagisa@cognitee.com​ TEL: 03-4212-8445

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会社概要

コグニティ株式会社

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URL
https://cognitee.com
業種
情報通信
本社所在地
東京都品川区西大井一丁目1番2−208号
電話番号
03-4212-8445
代表者名
河野 理愛
上場
未上場
資本金
3億3832万円
設立
2013年03月