中東情勢の緊迫化から数ヶ月――「供給難」から「コスト高」へ
継続的なコスト上昇が続き、企業の価格転嫁力の差が顕在化

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調査の目的・レポートのねらい
中東情勢の緊迫化を受け、原油価格や資材価格の高騰、石油関連製品の供給不安などが企業活動に影響を及ぼしています。
5月に実施した前回調査(2026年4~9月期。以下同様)では、価格高騰や調達難などの影響が顕在化し、賃上げ機運に影響を及ぼしていることが分かりました。そのなか、情勢変化や企業活動により、企業への影響がどのように変化したのかを追跡しました。
本レポートでは、前回調査との比較を中心に、企業を取り巻く環境の変化と、企業が直面する経営課題について整理していきます。
なお、本レポートは「第58回定期景況調査」の結果から関連設問を抜粋したものです。
サマリー

第58回定期景況調査(2026年7~9月期) 概要
調査期間:8月5日(水)~28日(金)
調査方法:インターネット調査
回答企業:1,104社

主な調査結果
(1)影響の実態
業況DIは回復。足元は改善するも先行きは慎重
業況DIは、前回調査時から8.8pt改善し、▲4.1ptとなりました。 マイナス水準に留まるものの、前回調査時の予測値(▲26.9pt)より大幅に上回る結果となっています。

「大きな影響」は減少するも、約7割に影響は残る
中東情勢に対して「大きな影響あり」と回答した割合が前回調査より11.3pt減少しました。また、「現時点で影響はなく、今後も影響はない」の割合が8.7pt増加しています。ただし、「影響あり」(「大きな影響あり」と「一部影響がある」を足した値)の割合は依然として7割程度で、中東情勢が企業活動に影響を及ぼしているという状況は継続していることがわかります。

調達の停止が減少するも、数量減・納期遅延はなお約半数に影響を及ぼす
仕入れ・調達面の影響では「調達の停止」の割合が18.3pt減少しました。その一方、「入手可能量の減少」、「納期の遅れ」は依然約半数の企業で課題になっています。

石油化学由来の製品の仕入れ価格は上昇が継続している
石油化学由来の原材料・商品・部品の値上がり幅が「2割以上」と回答した企業は、前回調査からほぼ横ばいの72.6%となりました。依然として仕入れ価格の上昇が継続している状況です。

前回調査時、中東情勢の影響が顕著だった運輸・製造・建設業の3業種を比較していきます。
注目の3業種で「大きな影響」が減少したが、製造業では依然3割に「大きな影響」を及ぼす
運輸業、製造業、建設業はともに「大きな影響がある」の回答が減少しました。 製造業では前回調査から減少したものの、依然として3割が「大きな影響がある」と回答しています。

<運輸業・建設業の声>
💬一時期はインタンクでの燃料の購入が出来ずガソリンスタンドを利用していたため経費が増加したが、現在は落ち着いている。(中小・運輸業)
💬ひどい時は材料調達に最大一か月かかっていたが、現在は2週間程度に短縮された。 (小規模・建設業)
影響を受ける製造業の80%以上で、石油化学由来品が2割以上値上がりしている
中東情勢の緊迫化による(大きな/一部)影響があると回答した製造業のうち、石油化学由来の原材料・部品・商品の値上がり幅が「2割以上」と回答した企業は83.8%にのぼっています。全体の結果である72.6%と比較しても、高い値となっていることがわかります。

<「2割以上」と回答した製造業の声>
💬2~3ヶ月に一度資材価格が上がる。この先どれだけコストがかさんでいくのか見通しづらい。(小規模・製造業)
💬石油化学由来の原材料について供給はされているが、値段が大きく上がった。包装資材・トレー・フィルム・ラベル・シール等すべての価格が上がっている。(中小・製造業)
(2)価格転嫁の状況
価格転嫁は前回調査時よりも進展するも、約半数は転嫁率5割未満に留まる
「5割以上価格転嫁できた」と回答した割合が13.3pt増加したほか、 価格交渉が進みやすくなっているとの声が寄せられました。一方、「2割以上5割未満」~「まったく転嫁できていない」と回答した企業も依然存在しており、十分な水準とは言い難い状況です。

<価格交渉に変化があったと回答した企業の声>
💬仕入価格急騰を受け入れないと製品供給が途絶えるため承諾せざるを得ない。その分顧客に対しても値上げを申し入れ、理解を得ている。(小規模・卸売業)
💬値上げの合意をしても、価格に反映される時点では不十分になるほど価格上昇に改定スピードが追い付いていない。(中小・製造業)
💬いつになったら値上げが落ち着くのか不透明なため、交渉の際に「今回は受け入れるけど次回は厳しい」と言われた。(中小・製造業)
一般消費者との取引が中心の企業(BtoC企業)で最も価格転嫁が進んでいない
価格転嫁できた割合について企業形態ごとに比較すると、5割以上転嫁できた企業では、BtoB企業が49.3%でしたが、BtoC企業では24.8%に留まっています。BtoC企業では「まったく転嫁できていない」割合が27.7%に上っており、企業形態ごとに価格転嫁の割合に違いが出ていることがわかります。

<「一般消費者との取引が主」と回答した企業(BtoC企業)の声>
💬原材料や包装資材の仕入値が上がっているものの、お客様の財布の紐が固くなっているなか値段を上げにくい。 (小規模・小売業)
💬顧客を失わないために最終価格を据え置くしかなく、利益が出ずに経営が苦しい。(小規模・サービス業)
(3)考察
供給面の混乱は緩和する一方、コスト負担は継続。適切な価格転嫁への支援が重要
中東情勢の緊迫化による企業への影響は、調達停止などの「供給面の混乱」が緩和する一方で、原材料・資材価格の上昇による「コスト面の負担」へと影響の重心が移りつつあります。価格転嫁は前回調査から進展しているものの、十分な水準には至っていません。製造業では依然として大きな影響が残るほか、一般消費者との取引が中心の企業では、価格転嫁の難しさが顕著となっています。
さらに、愛知県の最低賃金は、2026年10月1日から55円引き上げられ、1,195円となる予定です。原材料費やエネルギーコストに加え、人件費の上昇も見込まれるなか、今後は複数のコスト増が企業収益を圧迫することが予想されます。持続的な事業継続に向けては、自社のコスト構造を的確に把握するとともに、労務費を含めた適切な価格転嫁を進めていくことが一層重要となっていきます。
こうした企業の実情や課題を踏まえ、名古屋商工会議所では、本調査結果を行政機関等に情報提供し、中小企業の事業継続や適切な価格転嫁を後押しする支援施策につなげていきます。
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