診断業務を効率化する設備保全向けフィジカルAI技術を開発
自然言語を介して音響・時系列センサデータを活用し、異常発生時の対応と技能伝承を支援
日立は、設備保全の診断業務を効率化し、異常の見逃しによる設備停止リスクの低減と技能伝承を支援する設備保全向けフィジカルAI技術を開発しました。設備保全の現場では、装置が発する音や温度、振動などのデータを基に異常の兆候把握や原因分析を行いますが、騒音環境では音の違いに気づきにくく、また、膨大な時系列センサデータ*1から類似の波形を見つけることも困難でした。今回開発した技術は、自然言語*2を介して、音響データによる簡易診断と時系列センサデータによる詳細診断を支援します。具体的には、正常音と異常音の違いを自然言語で説明する技術や、自然言語で表現された波形を時系列センサデータベースから検索する技術を組み合わせることで、経験の浅い作業員でも判断の根拠を把握しやすくなります。これにより、現場の知見や経験を共有・活用しやすくし、製造現場や社会インフラの安定運用と保全品質の維持を支える基盤づくりに貢献します。さらに、設備診断に活用しやすいフィジカルAI技術の実現と技能伝承の支援につなげます。
*1 時系列センサデータ: 温度、振動、圧力、電流など、時間の経過に沿って連続的に取得される設備データ。
*2 自然言語: 人が日常的に使う言葉や文章。今回の文脈では、設備の状態や特徴を言葉で伝えるための表現のこと。

背景および課題
労働人口の減少を背景に、設備保全の現場では、限られた人員でも保全品質を維持しながら診断業務を効率化することが求められています。しかし、設備の異常兆候の把握や原因分析には、装置が発する音や温度、振動などのデータを読み解く専門知識や経験が必要であり、診断業務が熟練作業員の知見に依存しやすいことが課題でした。特に、現場環境の影響を受ける音の確認や、膨大なセンサデータの中から必要な情報を見つけ出す作業は、経験の浅い作業員にとって負担が大きいものでした。このため、経験の差にかかわらず判断の根拠を把握しやすくし、診断業務の効率化と安定した設備運用を支える技術が求められていました。
課題を解決するために開発した技術・ソリューションの特長
そこで日立は、設備保全の診断業務を支援する設備保全向けフィジカルAI技術を開発しました。本技術は、音響データや時系列センサデータなど、現場の設備から得られる情報をAIで解析し、これまで難しかった、多様な音声指示の意図理解(図2(1))を含む自然言語処理を介して、簡易診断から詳細診断までを支援するものです。技術の特長は以下の通りです。
1. 音響データを活用した現場での簡易診断を支援する技術
設備音と騒音の両方の特徴を捉えるよう学習することで、現場ごとの騒音環境や設備の違いがあっても異常音を検知しやすくする異常音検知技術(図2(2))と、正常音と異常音の微細な違いを自然言語で分かりやすく説明する音響差分キャプショニング技術(図2(3))を開発しました。これにより、現場で異常の有無を確認しやすくなるだけでなく、どのような違いを基に判断したのかを把握しやすくなります。熟練作業員が着目するポイントを言葉で共有しやすくなるため、技能伝承の支援にもつながります。
2. 時系列センサデータを活用した詳細診断を支援する技術
自然言語での表現から、過去の膨大な時系列センサデータベース内の局所的に類似した波形を検索する技術(図2(4))と、自然言語の指示に従ってAIのモデル学習用データを生成する技術(図2(5))を開発しました。これにより、作業員が事前に波形の形や変化の条件を詳細に設定していない場合でも、必要な過去事例を参照しやすくなります。さらに、異常データのサンプルが少ない設備でも診断モデルに活用できるデータを補いやすくなり、原因分析を進めやすくします。

今後の展望
今後、設備保全の現場でPoCを進め、音響データを活用した簡易診断と、時系列センサデータを活用した詳細診断の有効性を検証します。これらの技術により、診断業務の効率化と技能伝承を支援し、異常の見逃しに起因する設備停止リスクの低減と安定した設備運用に貢献する設備診断サービスの実用化をめざします。日立は今後も、IT、OT、プロダクトを併せ持つ強みを生かし、設備保全分野におけるフィジカルAI技術の研究開発と現場適用を通じて、保守業務の革新を支えていきます。
なお、異常音検知技術、音響差分キャプショニング技術、時系列センサデータ検索技術、時系列センサデータ生成技術は、2026年8月31日から開催のEuropean Signal Processing Conference (EUSIPCO) 2026で発表予定です。また、作業員の多様な音声指示の意図を理解する音声言語理解技術は、2026年9月27日から開催されるAnnual Conference of the International Speech Communication Association (INTERSPEECH) 2026で発表予定です。
関連情報
照会先
株式会社日立製作所 研究開発グループ
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