【北海道 東川町】第42回「写真の町」東川賞の受賞作家が決定
国内作家賞を伊奈英次氏、新人作家賞を林典子氏など5名が受賞

北海道東川町は第42回「写真の町」東川賞5賞の受賞者について5月1日に発表いたしました。授賞式をはじめとして様々な写真関連イベントが行われる「第42回東川町国際写真フェスティバル」は8月1・2日に開催します。
第42回「写真の町」東川賞受賞作家
海外作家賞 マルティナ・ホーグランド・イヴァノヴ 氏(Maritina HOOGLAND IVANOW)
国内作家賞 伊奈 英次 氏(INA Eiji)
新人作家賞 林 典子 氏(HAYASHI Noriko)
特別作家賞 中西 敏貴 氏(NAKANISHI Toshiki)
飛彈野数右衛門賞 田川 基成 氏(TAGAWA Motonari)
海外作家賞

マルティナ・ホーグランド・イヴァノヴ 氏 (Maritina HOOGLAND IVANOW)/ 対象国:スウェーデン王国
受賞理由:『CIRCULAR WAIT + SATELLITE + SECOND NATURE』(Livraison Books and Art and Theory、2015年)、『Shadow Works, Living the Dream』(Livraison Books、2025年)など、一連の作品に対して
1973年生まれ。写真、映像、ブックメイキングを主な表現方法とし、フィルターを通した光、音、イメージの相互作用を中心に制作を行う。ニューヨーク、パリ、ロンドンで国際的なフォトグラファーとして活動した初期のキャリアを経て、2002年にストックホルムに拠点を移し、現在も同地で制作を続けている。
パーソンズ美術大学(パリ、ニューヨーク)で(1992–1996年)美術学士を取得。その後、ストックホルムの国立美術・工芸・デザイン大学(2015–2016)に在籍し、王立美術大学のポストマスター・プログラム(2019–2022)を修了した。
イヴァノヴの作品は、非線形で連想的な構造を特徴とし、フィルムの不透明性と透明性を実験的に探るアナログ技法を多用している。これらの手法は、従来のものの見方に揺さぶりをかけ、単純な解釈を拒む多層的な視覚体験を生み出す。近年の作品では、気候変動に対する感情的な反応や、新たなテクノロジーがもたらす社会的・空間的影響といった、現代の不合理な底流にも着目している。
また彼女の実践は、社会構造に対する力強くも繊細な反応を映し出しており、その多くは場所や個人、サブカルチャーの表象を通じて展開される。イヴァノヴはサブカルチャーを支配的な規範への反応と捉え、社会に欠けている何かを指し示している。
作品は国際的に広く発表されており、ベルリンのDorothée Nilsson Gallery、ストックホルムのKulturhuset、ニューヨークのエルメス財団などで展示された。近著に『Early Reading』(2018年)、最新作『Shadow Works, Living the Dream』(2025年、Livraison Books)など。現在は、自然の中での共同生活を求める人々を追った長編ドキュメンタリー『Second Nature』を制作中。
国内作家賞

伊奈 英次 氏(INA Eiji)
受賞理由:写真展「国の鎮め―ヤスクニ―」(JCIIフォトサロン、2023年)、写真集『ZONE』(Far East Publishing、2025年)に対して
1957年愛知県名古屋市生まれ。1977年、中部工業大学工学部工業物理学科中退。1984年、東京綜合写真専門学校研究科卒業。1984年、東京の都市景観を 8×10 の大型カメラで精緻に捉えたモノクロ写真を発表。以後、日本各地の在日米軍基地の通信アンテナ、産業廃棄物、都市に点在する監視カメラ、天皇陵などといった、都市、環境、軍事、歴史など日本の近現代をテーマに撮影している。近年の個展は「Crystal of Debris『残滓の結晶』」キヤノンギャラリー S(2020年)、また「圏外の眼―伊奈英次の写真世界」荏原畠山美術館(2026年)でミニ回顧展を開催した。
第4回写真の町東川賞新人作家賞受賞(1988年)、レオポルド・ゴドウィスキーJr.カラー写真賞入賞(1998年)、さがみはら写真賞受賞(2009年)、カッセル写真集賞受賞(2008–09年)。
作品は、川崎市民ミュージアム、東京国立近代美術館、国際交流基金、東京都写真美術館、北海道東川町文化ギャラリー、北海道立釧路芸術館、福岡市美術館、明治神宮、フランス国立図書館、ピーボディー・エセックス美術館、フィラデルフィア美術館、サンタバーバラ美術館、サンフランシスコ近代美術館などにコレクションされている。
新人作家賞

林 典子 氏(HAYASHI Noriko)
受賞理由:写真展「In the Ashes, She Blooms — Portraits of Afghan Women」(Sony Imaging Gallery、2025年)、企画展「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」(横浜美術館、2025年)に対して
1983年神奈川県生まれ。大学在学中の2006年から2007年にガンビア共和国を訪れ、地元紙「The Point」でのインターンを通して写真を始める。当時、同国の政治的な状況のもと、言葉や表現が閉ざされていく社会の中で、可視化されない現実に触れ、写真を通してそれらと向き合うことの意味を見つめるようになった。
主な著書に『キルギスの誘拐結婚』(日経ナショナル ジオグラフィック社、2014年)、『ヤズディの祈り』(赤々舎、2016年)、『フォト・ドキュメンタリー 朝鮮に渡った「日本人妻」– 60年の記憶』(岩波新書、2019年)など。近年は、日本と朝鮮民主主義人民共和国の地政学的な境界のなかで形成されてきた個人のアイデンティティや記憶をめぐる複数の長期プロジェクトに取り組んでいる。そのひとつである「sawasawato」(2013- )は、1959年に始まった帰国事業により、在日コリアンの夫とともに朝鮮民主主義人民共和国へ渡った日本人女性を主題にしている。二つの国の「はざま」で年を重ねてきた女性たちの語りや生活の場、身体や日本の故郷の風景に刻まれた痕跡を重ね合わせ、公的な歴史や制度の背後に埋もれてきた私的な記憶をたどることを試みている。
主な個展に「ヤズディの祈り 林典子写真展」(立命館大学国際平和ミュージアム、2018年)、「sawasawato」 (WARM festival、ボスニア・ヘルツェゴビナ、2023年)、「In the Ashes, She Blooms - Portraits of Afghan Women」(ソニーイメージングギャラリー、2025年)。近年の主なグループ展に「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」(KYOTOGRAPHIE、2022年)、「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」(横浜美術館、2025-26年)、 「Japan. Bodies, memories, visions」(Magazzino delle Idee 、イタリア、2026年)、「ロードムービー」(国立現代美術館 MMCA 、韓国、2026年)などがある。
特別作家賞

中西 敏貴 氏(NAKANISHI Toshiki)
受賞理由:写真集『オプタテシケ』(Case Publishing、2023年)、『Land of Fusion 地と記憶』(同前、2024年)、『Where We Come From and Where We Might Go』(同前、2025年)の北海道三部作と同作に関連した一連の写真展に対して
1971年大阪府生まれ。学生時代の旅で出会った北海道の雄大さに強く惹かれ、大阪から通い続けた
のち、2012年に美瑛町へ居を移す。数年後、北海道の基層文化への関心が高まり、各地の遺跡を
訪ね歩きながら、かつてそこにあった歴史の風景を想像するようになる。近年は、北海道沿岸部
やパキスタンなどへの旅を通じ、人の思想が生み出してきた境界線のあり方に問題意識を抱き、
自然の中にその答えを求めて活動を続けている。
こうしたリサーチとフィールドワークを経て、『オプタテシケ』(Case Publishing、2023年)、
『Land of Fusion 地と記憶』(Case Publishing、2024年)、『Where We Come From and
Where We Might Go』(Case Publishing、2025年)の「北海道三部作」を上梓。2025年に
はオホーツク文化を題材とした『Land of Fusion 地と記憶』により、さがみはら写真新人奨励賞
を受賞。
主な個展に「Kamuy」(キヤノンギャラリーS、東川町文化ギャラリー、2020-2021年)、「地
と記憶」(IG PHOTO GALLERY、PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA、モエレ沼公園ガラスの
ピラミッド、2023-2024年)、「オプタテシケ」(キヤノンギャラリー銀座、2024年)、
「The New Land」(入江泰吉記念奈良市写真美術館、東川町文化ギャラリー、2024-2025
年) 、「Where We Come From and Where We Might Go」(KANA KAWANISHI
PHOTOGRAPHY、2025年)などがある。
飛彈野数右衛門賞

田川 基成 氏(TAGAWA Motonari)
受賞理由:写真集『見果てぬ海』(赤々舎、2020年)と同作に関連した一連の写真展に対して
1985年長崎県生まれ。2010年北海道大学農学部森林科学科卒業。
長崎の離島出身のルーツと、自身が移り暮らしてきた国内外の土地の経験を通して、移民や人の移動がもたらす光景と文化、土地と記憶、信仰などを題材に地域の歴史と個人の記憶を行き来しながら制作する。ある土地で撮影されたイメージを現地で展示し、写真と人の間に生じる対話の過程と、それをまた別の土地に展開することまでを含めて一連の表現と捉え、実践している。
東京で編集者・記者として働きながら、2011年の震災を機に写真を撮り始める。2014年に独立し、ブラジルと南米に1年間滞在。アマゾン河やチリの多島海で見た素朴なキリスト教会のある風景が故郷に重なり、帰国後に長崎の海を巡る旅をはじめる。
2020年に写真集『見果てぬ海』を赤々舎より上梓。ニコンサロン東京で個展「見果てぬ海」を発表、2024年までに長崎県西海市、長崎市、五島市や福岡、大阪、宮城、札幌など全国8会場に巡回。また長崎の海景をモチーフにした「NAGASAKI SEASCAPES」Alt_Medium (東京、2021年)、土着のカトリック教会を写した「土地の教会」EUREKA (福岡、2025年)、幼少期の記憶を巡る「海の記憶」Galley Y (茨城、2022年)/LIBRIS KOBACO (福岡、2024年)など、これまで長崎の海をテーマにした計14回の個展を開催してきた。
主な受賞歴として、写真展「ジャシム一家」で第20回三木淳賞(2018年)、「見果てぬ海」で日本写真協会新人賞(2022年)、『密航のち洗濯』(共著・写真編集、撮影)で第46回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2024年)。
写真集『北海道』(赤々舎) を2026年2月に刊行した。
第42回写真の町東川賞審査会委員(敬称略/五十音順)
安珠 (写真家)
上野 修 (写真評論家)
神山 亮子 (学芸員・戦後日本美術史研究)
北野 謙 (写真家)
小原 真史 (キュレーター・写真史)
柴崎 友香 (小説家)
丹羽 晴美 (学芸員・写真論)
原 耕一 (デザイナー)
「写真の町」東川賞
写真文化への貢献と育成、東川町民の文化意識の醸成と高揚を目的とし、これからの時代をつくる優れた写真作品(作家)に対し、昭和60年(1985年)を 初年度とし、毎年、東川町より、賞、並びに賞金を贈呈するものです。
東川賞の第一の特徴は、日本ではじめて自治体によって写真作家賞が制定されたこと。第二の特徴は、日本の写真作家賞が全て“年度”賞であるのに対し、国内、新人作家賞については、作品発表年から3年間までを審査の対象とし、作品の再評価への対応にも努めていること。第三の特徴は、海外の写真家を定期的に顕彰し、あまり知られていない海外の優れた写真家を日本に紹介してきたこと。また、顕彰を通じて海外の人々と出会い、交流し、平和への祈りと夢のひろがりを次の時代に託すことにあります。
各賞の対象については、国内作家賞及び新人作家賞は、前述の通り発表年度を過去3年間までさかのぼり、写真史上、あるいは写真表現上、未来に残すことのできる作品を発表した作家を対象とします。
特別作家賞は北海道在住または出身の作家、もしくは北海道をテーマ・被写体として作品を撮った作家、飛彈野数右衛門賞は長年にわたり地域の人・自然・文化などを撮り続け、地域に対する貢献が認められるものを対象とします。
東川町長が依頼するノミネーターにより推薦された作品を、東川町長が委嘱した委員で構成する[写真の町東川賞審査会]において審査します。
リリース用データについて
プレスリリース用データにつきまして、記事掲載などで希望される場合は下記の問い合わせ先までご連絡ください。また、受賞作家の言葉や東川賞審査会講評につきましては、東川町国際写真フェスティバル公式ホームページよりご確認いただけます。
東川町国際写真フェスティバル公式HP
お問合せ
〒071-1423 北海道上川郡東川町東町1丁目19-8
写真文化首都 北海道「写真の町」東川町
写真の町課 担当:大角・𠮷里
Tel 0166-82-2111 Fax 0166-82-4704
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