Helical Fusion、高温超伝導マグネット技術の重要マイルストーンに関する共同研究成果が国際学術誌に掲載

昨年発表内容が査読付き論文として掲載。フュージョンエネルギーによる「実用発電」達成の鍵、プラズマを閉じ込める磁石の実用化に向けた重要な前進

株式会社Helical Fusion

株式会社Helical Fusion(本社:東京都千代田区、代表:田口昂哉、以下、「Helical Fusion」)は、フュージョンエネルギー(核融合)の実用化に向け、定常運転・正味発電・保守性の「実用発電の三要件」すべて満たす発電所をつくる「ヘリックス計画(Helix Program)」のもと、日本全国のパートナーとともに日本独自のヘリカル方式による核融合発電所を開発しています。

2025年10月までに達成した、核融合発電所の重要コンポーネントである「高温超伝導マグネット」開発における主要なマイルストーンについて、その実証成果が国際学術誌に正式掲載されたことをお知らせします。

本件は、2025年に開催された「38th International Symposium on Superconductivity(ISS 2025)」で発表した研究成果をまとめた論文が、査読を経てIOP Publishing発行の「Journal of Physics: Conference Series」に掲載されたものです。昨年速報として公表した実証成果が、正式な学術論文として公開されました。本研究は、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(以下、「NIFS」)との共同研究として実施しました。

なお、今回試験した高温超伝導導体は、ヘリックス計画における発電初号機「Helix KANATA」および最終実証装置「Helix HARUKA」での実装に向けたものです。

研究の背景

■ヘリックス計画について

ヘリカル方式は、これまでの国立大学や国立研究機関における70年にわたる研究開発の結果、商用発電所に適した特性が評価されている方式[1]です。

Helical Fusionは、その知見を活用してフュージョンエネルギーの実用化を行う数少ない民間企業の一社として、ヘリカル型核融合炉による実用発電を達成する「ヘリックス計画」を進めています。2023年5月には、発電初号機の設計についてまとめた査読付き論文を発表しています[2]。

ヘリックス計画では、2020年代中をめどに二大開発要素「高温超伝導マグネット」「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証を完了し、2030年代中には、最終実証装置「Helix HARUKA」による統合実証、および発電初号機「Helix KANATA」による世界初の実用発電を達成する計画です。

現在、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の敷地内にあるHelical Fusion専用スペースにて、最終実証装置「Helix HARUKA」による高温超伝導マグネット実証に向けた製造・建設が進んでいます。核融合装置開発を進める各社のなかでも、詳細設計をもとにした具体的な建設に至っていることは先駆的な事例といえます。Helix HARUKA向けの重要なコンポーネントの開発は、国内各社の協力を得て、着実に進んでいます。

■ヘリックス計画における高温超伝導マグネット開発の概要

Helical Fusionが採用する「ヘリカル型」を含め、世界的に最も研究実績が豊富な「磁場閉じ込め方式」では、1億度を超える高温状態の「プラズマ」を空中に浮かせて閉じ込めるために、強力な「磁場」が必要です。商用発電所では、より小さく効率的に強力な磁場を生み出し、コントロールするために「高温超伝導マグネット」と呼ばれる比較的新しい技術を確立し、実装していく必要があります。

■Helical Fusionの高温超伝導マグネットの特長

ヘリカル方式は、定常運転が可能であり商用炉に適したアプローチとされている一方、ヘリカル型(三次元螺旋構造)の超伝導マグネット製作が課題とされてきました。課題克服には、これまでにない曲げやすさと製作性を備えたケーブル状の高温超伝導マグネット材料の開発が鍵となります。そこで、Helical Fusionでは、曲げやすく製作性の高い先進的な高温超伝導導体(UROCOIC導体)を独自に開発し、NIFSとの共同研究体制のもとに世界最先端の試験装置での実験を行ってきました。

参考:今回の実証の前段階である、直状導体による実証に関する論文(Plasma and Fusion Researchに掲載):https://www.jspf.or.jp/PFR/PDF2025/pfr2025_20-1405043.pdf

図1: Helical Fusionが独自開発する高温超伝導導体のサンプルと、ヘリカルコイルとプラズマのイメージ

論文の要旨

これまで独自に開発を進めてきた、実機向け高温超伝導導体を使用した高温超伝導コイル[3](以下、「ダブルパンケーキコイル」)を使用して、将来の核融合炉で想定される磁場や電流条件を現状の設備で最大限模擬した環境[4]での冷却通電試験を行い、以下の成果が得られました。

【環境】
温度:10K(-263℃)〜30K(-243℃)※初期温度10K
磁場: 7T ※外部コイル印加磁場が7T、最大コイル経験磁場は8.9T

【成果】
・超伝導状態で、40 kA、280秒間の通電を達成
・最大8.9テスラの局所磁場および356kN/mの電磁力に耐えることを確認
・急激な磁場変化に対しても無絶縁(No-Insulation)コイルの自己保護性能を実証、時定数データ等を取得

【Helical Fusionによる評価】
上記により、独自開発した高温超伝導導体(UROCOIC導体)が、統合実証装置「Helix HARUKA」での実証に進むための条件を十分に満たしたと評価しました。

図2:今回使用した試験体「ダブルパンケーキコイル」。高温超伝導線材を束ね、アーマー構造で保護しつつ曲げやすい状態を維持できる形状のケーブルを円盤上に巻き、二段に重ねた状態で液体金属による含浸処理を行ったもの(製作を行った金属技研社の工場にて撮影)

図3:通電試験における各種パラメーターと経過グラフ。15K - 7Tで40kA-280sの通電に成功した。

(Y. Narushima, et. al., ISS2025 AP3-03)をもとにHelical Fusion加工

図4:無絶縁コイルとしての特性評価解析に関する図表

参考動画: https://youtu.be/vqk2kp03dY8

Helical Fusionではフュージョンエネルギーの実用化には、革新的な科学技術だけでなく、日本が世界に誇る製造技術との融合が不可欠であると考えています。本研究は、Helical Fusionの開発力、日本のものづくり企業が有する高度な製造技術、そしてNIFSの研究基盤を組み合わせることで実現しました。

今回の論文掲載は、ヘリックス計画の重要な技術成果が、査読を経て正式な学術成果として公開されたことを意味します。査読を経た論文として国際学術誌に掲載されることで、本成果は世界の研究コミュニティに共有される知見となり、今後の核融合マグネット技術の発展にも貢献することが期待されます。

 

官民連携による着実な技術開発

本研究は、文部科学省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の支援を受けて進めている高温超伝導導体開発の一環として実施されたものです。

Helical Fusionは、本事業において自ら設定した難易度の高い技術目標を期限内に達成し、その成果に対する第三者評価であるステージゲート審査を通過しました。

今回の査読付き論文掲載に加え、厳格なステージゲート審査を通過したことは、Helical Fusionが高度な技術開発を着実に遂行するとともに、公的資金を活用する事業者として高い説明責任と実行力を備えていることを示す成果です。

また、NIFSとの共同研究、日本のものづくり企業との連携、そして公的支援を組み合わせた本プロジェクトは、フュージョンエネルギー実現に向けた官民連携の一つのモデルケースとなることを目指しています。

Helical Fusionは今後も、産業界・研究機関との連携をさらに強化し、2030年代の商用核融合炉の実現に向けて開発を加速してまいります。


Helical Fusion 共同創業者 CTO 宮澤順一のコメント

高温超伝導マグネット開発は、ラボでの実証から社会実装への大きな転換を象徴する要素です。たゆまぬ素材開発のイノベーションを受け取り、世界中のプレイヤーが核融合発電所で使えるレベルのコイルを作り上げようと切磋琢磨してきました。膨大な基礎研究の積み重ねを経て、実用化をとらえる現在の水準に到達したのです。今回の試験成功は、2021年から産学をまたいだ様々なパートナーの力を借りて、アイディアを形にするために奮闘してきた集大成といえます。さまざまなハードルを果敢に超えながら共同研究を着実に前進させてきてくださった核融合科学研究所の皆様をはじめ、全ての協力者の皆様へ感謝申し上げます。そして、開発したコイルを組み上げ、次なるステップであるHelix HARUKAでの統合実証へしっかりと繋げていきます。

 

■論文情報

  •  論文タイトル:Experiment of a Double-Pancake Coil Wound by UROCOIC Conductor for Application in Helical Fusion Reactors

  •  掲載誌:Journal of Physics: Conference Series(IOP Publishing、国際会議論文誌)

  • 筆頭著者:成嶋 吉朗 助教(核融合科学研究所 HF共同研究グループ/The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI)

  •  論文URL:https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742-6596/3278/1/012031

■関連リリース

 

Helical Fusionについて

Helical Fusionは、フュージョンエネルギーの実用化を目指す企業です。2021年に、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)[5]における研究成果を活用するかたちでスピンアウトし、創業しました。

日本独自の核融合炉形式である「ヘリカル方式」は、これまでの国立大学や公的研究機関における約70年にわたる研究開発の結果、商用発電所に求められる要件を備えやすい方式であることが評価されています。その知見を生かし、世界に先駆けたフュージョンエネルギーの実用化に向けた「ヘリックス計画(Helix Program)」を進めています。

Helix HARUKA、Helix KANATAの概要

建設中のHelix HARUKAの様子(岐阜県土岐市、核融合科学研究所敷地内のHF共同研究グループ専用スペースにて)

■「実用発電」のための三要件

核融合炉を発電所として商用利用するためには、核融合反応を起こすことはもちろん、①定常運転(24時間365日運転可能な安定性)、②正味発電(プラントの外に電力を供給できる)、③保守性(メンテナンスが可能)という「商用核融合炉の三要件」をすべて満たすことが必要です。ヘリックス計画では、この三要件の実現から逆算した設計に基づいて開発を進めます。

「実用発電」を達成するための商用核融合炉の三要件

背景

■フュージョンエネルギー開発の意義

世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予測[6]され、生成AIの普及も背景とした世界的な電力需要の急増に対し、既存発電方法のみで応えることは厳しい見通しです。フュージョンエネルギーは、太陽の輝きと同じ原理を使ったCO2排出がなく効率性の高い発電方法であり、海水等から豊富に採取可能な燃料を用いることからも、世界的な課題を抜本的に解決する技術として期待されています。核融合プラント建設および電力市場は2050年までに世界で数百兆円規模にまで成長するとの試算[7]もあり、今後自動車産業のように日本が世界をリードする巨大産業を創出できる可能性がある一方、国際的な開発競争も激化しています。

日本においては、2025年6月の内閣府による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」の改定により、2030年代の発電実証を目指すロードマップが提示されています。加えて、「重点投資対象17分野」にフュージョンエネルギー(核融合)が挙げられ、同年11月には政府として1,000億円超の予算計上、専門部署の設置、社会実装に向けた600億円規模の「フュージョンエネルギー発電実証推進事業補助金」が作られるなど、政府としての支援も具体化しています。学術研究の段階から、官民をあげた産業化への動きが加速しています。

 

<本件に関するお問合せ> 

株式会社Helical Fusion 広報担当 

contact@helicalfusion.com

[1] ①定常運転(24時間365日運転可能な安定性)、②正味発電(プラントの外に電力を供給できる)、③保守性(メンテナンスが可能)という「商用核融合炉の三要件」を、全て満たせる見通しを有することから。

[2] Development of steady-state reactor by Helical Fusion – J. Miyazawa et al., Physics of Plasmas.https://pubs.aip.org/aip/pop/article/30/5/050601/2891604/Development-of-steady-state-fusion-reactor-by

[3] 「高温超伝導」という最新鋭の超伝導技術を活用した強力な電磁石を、絶縁体を使用せずに製作したコイル。この無絶縁技術を導入した大型導体で巻いたコイルサンプルを外部磁場中において試験を行った例は世界でも初めて。

[4] 「将来の核融合炉で想定される磁場や電流条件を現状の設備で最大限模擬した環境」とは、「コイル自身が生み出す磁場」とは別に「外部からの磁場」が存在し、磁場を介して様々な電流が相互に影響しあう状況を指す。将来の核融合発電プラントでは、放射線や中性子、より強い磁場などが発生することが見込まれる。

[5] NIFSは、世界有数の大型プラズマ実験装置「大型ヘリカル装置(LHD)」において、3,268秒間(約54分間)にわたるプラズマの維持や、1億度を超えるプラズマ温度の達成、そうした運転に不可欠なプラズマの安定制御にかかわる知見などを蓄積してきた、ヘリカル型(ステラレータ)核融合研究を牽引する公的研究機関です。

[6] 国際エネルギー機関(IEA)年次報告書 「2023年版世界エネルギー見通し」(World Energy Outlook 2023)

[7] FusionX/Helixos report Global Fusion Market Analysis: Electricity, Supply Chain & Construction (https://fusionxinvest.com/data-analysis/analysis/)

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会社概要

株式会社Helical Fusion

45フォロワー

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URL
https://www.helicalfusion.com/
業種
電気・ガス業
本社所在地
東京都千代田区大手町二丁目2番1号
電話番号
-
代表者名
田口 昂哉
上場
未上場
資本金
-
設立
2021年10月