ペンシルバニア州で死刑執行停止

米国で加速する死刑廃止の流れ

2月13日、ペンシルバニア州の新知事が死刑執行停止を表明した。この措置は、重大な欠陥を内在する現行の死刑制度に対し十分な議論が尽くされるまで続けられる。アメリカは先進国の中で死刑制度を維持している数少ない国のひとつだが、ここ数年、州単位では死刑廃止の流れが進んでいる。死刑廃止や執行停止を決めた州は、死刑制度の不完全さ、人権の観点や世界の潮流などを理由に挙げている。ちょうど1年前には、ワシントン州知事がやはり死刑執行停止を表明している。

 

1月20日に就任したトム・ウルフ知事は、2月13日、死刑執行が予定されているすべてのケースで、個別に執行の延期を認めていくと宣言。同時に、最初の刑の延期が発動された。3月4日に執行が予定されていたテランス・ウィリアムズ死刑囚に対するものだ。

知事は執行の一時停止を決断した理由について、「凶悪犯罪で有罪になっている者たちであり、同情や慈悲心からではない。死刑制度には重大な欠陥があるからだ。制度の欠陥は、もはや広く認識されている」と述べている。

ペンシルバニア州では、現在、州のタスクフォースと諮問委員会が死刑に関する検討を進めているが、執行停止はそのレポートが十分な議論を反映させたものとなるまで続く。タスクフォースは2011年の州議員決議に基づいて設置されたもので、2012年には前任の知事に対し、検討が完了するまで刑の執行を停止するよう求めていた。

また、現行の制度について、「手続きが長く、費用が掛かり、関係者全員にとって苦痛なもの」だと示唆した。上訴手続きの削減をほのめかしているわけではない。むしろ「恐ろしい誤審を避けるために、再審理という安全装置は不可欠だ」と明言している。

ペンシルバニア州は米国で5番目に死刑囚の数が多いが、実際に刑が執行されたのは連邦最高裁判所が新しい死刑法を承認した1976年以来3人だけである。(この3人はいずれも控訴しなかった。)同州で最後に死刑が執行されたのは16年前の1999年だ。

米国で死刑が確定してから無罪となった150のケースのうち、6ケースがペンシルバニア州のものだ。知事は、このうち1件では新たなDNA鑑定によって無罪となるまで21年収監されていたことを指摘した。

しかし、知事の懸念はえん罪だけではない。上訴審で刑の軽減事由が見つかったり、原審の判決プロセスに不備があったりして、終身刑に減刑された死刑囚が複数いることに触れ、現行制度は「欠点だらけで、間違いを起こしやすく、完璧とは程遠い」と述べた。

さらに、ペンシルベニア州では、貧しい者、人種的に少数派の者が、とりわけ犠牲者が白人の場合に、死刑に相当する罪で起訴されたり死刑判決を受けやすい傾向にあると、差別も問題視した。州最高裁の「司法における人種・ジェンダー偏見に関する委員会」に所属する研究者は、フィラデルフィアで死刑判決を受けたアフリカ系アメリカ人の3人に1人は、アフリカ系でなければ違う判決を受けていたはずだと判断している。こうしたデータは「死刑に賛成・反対に関わりなく、善意の人すべての心に葛藤をもたらす」と語るウルフ知事は、こう結論づける。

 「われわれが死刑制度を続けるのであれば、被告は起訴のすべての段階において適切な弁護が得られるよう、そして刑が公平かつ均等に適用され、無実の者を処刑するリスクが排除されるように、一段の対策を講じなければならない。そうでなければ憲法の求めに応じることはできず、われわれが追及し続けるべき平等な司法という目標には届かない」

今回のウルフ知事の決断は、死刑廃止を視野に国際的な死刑執行停止を求める国連総会の決議に沿ったものである。アムネスティはこれを歓迎する。


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