ウポポイで国際シンポジウム「先住民族×博物館」を2月に開催

アメリカ、オーストラリア、フィンランドの国立博物館先住民館長ら4名が来日、日本初登壇

公益財団法人アイヌ民族文化財団

2025年12月16日 14時00分

アヌココㇿアイヌイコロマケンル国立アイヌ民族博物館（北海道白老町、野本正博館長）は、2026年2月7日（土）、8日（日）に国際シンポジウム「『先住民族×博物館』―協働・対話・更新―」を開催します。このシンポジウムでは、アメリカ、オーストラリア、フィンランドのそれぞれの国から、国立の先住民族博物館・研究所の館長・所長が来日し、「先住民族」と「博物館」の関係性について議論します。

日本からは国立アイヌ民族博物館のほか、日本最古のアイヌ民族博物館「川村カ子トアイヌ記念館」から川村晴道館長、1000点を超える資料が国の重要有形民俗文化財に指定されている「萱野茂二風谷アイヌ資料館」から萱野志朗館長も参加します。

海外の博物館では近年、植民地主義に結びつく収蔵品の取り扱いや展示、研究倫理等に関する議論が活発に展開されてきました。一方、先住民族自身が設立した博物館は、自文化の伝承の場であり、記憶や知識の宝庫でもあります。2日間の議論では、「協働、対話、更新」というキーワードを通じて、こうした複雑で繊細な「先住民族×博物館」の意義と責任、そして未来につなぐ役割について考えます。

国際シンポジウム「『先住民族×博物館』―協働・対話・更新―」

日時　：　2026 年２月７日（土）10：00－16：30

　　　　　2026 年２月８日（日）13：00－16：30

会場　：　1日目：国立アイヌ民族博物館交流室、2日目：民族共生象徴空間ウポポイ体験交流ホール

定員　：　1日目：150名、2日目：250名

参加料：　無料（事前受付優先／別途ウポポイ入場料が必要です）

言語　：　両日とも日英同時通訳

主催　：　国立アイヌ民族博物館

プログラム

2026年2月7日（土）10：00－16：30　

会場：国立アイヌ民族博物館交流室

10：00～11：30　

公開プレゼンテーション１「地域を代表する先住民族博物館との協働」

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）×　川村カ子トアイヌ記念館

13：00～14：30

公開プレゼンテーション２「音声アーカイブや民具の活用と実践の対話」

オーストラリア先住民研究所（AIATSIS）×　萱野茂二風谷アイヌ資料館

15：00～16：30

公開プレゼンテーション３「地域博物館から国立館への更新」

サーミ博物館SIIDA　×　国立アイヌ民族博物館

2026年2月8日（日）13：00－16：30

会場：民族共生象徴空間ウポポイ　体験交流ホール

13：00～13：30

開会のご挨拶

13：30～14：50

パネル１「協働、対話、更新：世界の国立先住民族博物館の事例」

本シンポジウムのメイン登壇者である3つの国立先住民族博物館から、「協働、対話、更新」という３つの行動を鍵として、各館の事例を紹介し、国内登壇者と議論します。

15：00～15：50　

パネル２「本音で話したい、先住民族博物館にとって大切なこと」

シンポジウムに先駆けた３日間、国内外の各登壇者（別紙登壇者を参照）はウポポイの職員と対話を重ねる予定です。この対話から生まれたトピックのなかから、登壇者が一つずつ話したいことを選択し、先住民族博物館にとって大切なことを参加者全員で議論します。

15：50～16：30

総合討論（会場からのQ＆Aなど）

※詳細・参加お申込み：

シンポジウムの詳細と申し込みについては、下記URLまたはQRコードから当館ウェブページをご覧ください。

https://nam.go.jp/activity/event/symposium20260207/

お申し込みのない方も先着順でご入場いただけますが、定員に達した場合はご予約済みの方を優先いたします。

登壇者紹介

サーミ博物館SIIDA

The Sámi Museum SIIDA

サーミは、欧州連合で唯一公認されている先住民族。サーミ博物館 SIIDA は、サーミ文化を専門とする国立博物館であると同時に、フィンランド・サーミの文化環境を扱う地域の博物館でもある。同館ではフィンランドのサーミが育んできた精神的・物質的文化を収蔵し、展示や出版物を通じて広く公開している。

SIIDA の最も重要な使命は、サーミのアイデンティティと文化的自尊心を支えること。フィンランド国立博物館からサーミ資料の返還を受け、2020年から2年間環境整備を行い、2024 年にはフィンランドの博物館として初めての権威ある欧州博物館大賞（EMYA）と、フィンランド国内の博物館大賞をダブル受賞した。

なお、同館とアイヌ民族文化財団（国立アイヌ民族博物館）は、2024年に連携協定（MOU）を締結している。

館長　タイナ・マレット・ピエスキ氏

Taina Máret Pieski, Director

タイナ・マレット・ピエスキ氏は、フィンランド政府の複数の省庁での職務や、EU最北端の自治体であるウツヨキ市長職などを経て、2023年に館長に就任した。

※ サーミ博物館 SIIDAからはチーフ・キュレーターもご参加されます。

チーフ・キュレーター　エイヤ・オヤンラトヴァ氏

Eija Ojanlatva, The Sámi Museum SIIDA Chief Curator

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）

National Museum of the American Indian (NMAI)

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）は、スミソニアン傘下の国立博物館として、ワシントンD.C.とニューヨークのふたつの博物館とメリーランド州の文化資源センターを統括している。同館は100万点を超える資料や写真と50万点以上のデジタルデータ（写真・映像等）を含む、世界最大級かつ最も包括的な先住民コレクションを保持している。

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）ワシントンD.C.の「Americans」展(1)

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）ワシントンD.C.の「Americans」展(2)

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）ワシントンD.C.のイベントの様子

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）ニューヨークの「Native New York」展(1)

国立アメリカン・インディアン博物館（NMAI）ニューヨークの「Native New York」展(2)

館長　シンシア・チャベス・ラマー博士

Dr. Cynthia Chavez Lamar, Director

館長のシンシア・チャベス・ラマー博士は、2022年に同館の館長に就任し、スミソニアン傘下の博物館を率いる初の先住民女性となった。同館ではアソシエイト・キュレーターを務めたのち、2021年からは収蔵資料担当副館長として総合的な管理を指揮した。ニューメキシコ大学にてアメリカ先住民研究博士号を取得。2008年には博物館分野への貢献が認められ、コロラド大学より名誉博士号授与、2023年からアメリカ芸術科学アカデミー会員。サン・フェリペ・プエブロ（ニューメキシコ州）、ホピ、テワ、ナバホの先住民系譜を持つ。

オーストラリア先住民研究所（AIATSIS）

The Australian Institute of Aboriginal and Torres Strait Islander Studies (AIATSIS)

オーストラリア先住民研究所（AIATSIS：正式名称はオーストラリア国立アボリジナル及びトレス海峡諸島民研究所）は国内唯一の国立先住民研究所である。映画、写真、音声記録、美術品や工芸品、印刷資料など、100万点以上に及ぶコレクションを管理するとともに、高い倫理水準に基づいた研究活動、教育活動、出版事業などを行っている。

オーストラリア先住民研究所（AIATSIS）キャンベラ　リーディングルームの展示の様子

オーストラリア先住民研究所（AIATSIS）中央オーストラリア　資料のデジタル化機器

CEO レナード・ヒル氏

Leonard Hill, AIATSIS Chief Executive Officer

レナード氏はAIATSISの最高経営責任者（CEO）であり、ニューサウスウェールズ州北西部のネンバ(Ngemba)族出身の先住民である。これまで数多くの上級行政官職（SES）を歴任し、AIATSIS副CEO、 AIATSIS収蔵資料執行ディレクター、首相・内閣省府文化局次官補などを歴任。最近では遺骨返還や文化・外交・二国間活動への参加。2018年にはジュネーブで開催された国連先住民族の権利に関する専門家メカニズム（UN EMRIP）へのオーストラリア代表団を率いた。