音楽教室規定に関する音楽教育を守る会とJASRACの合意について
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音楽教育を守る会と一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は、2月28日、新たな音楽教室規定に関して合意に至ったことを発表いたしました。本規定は、音楽文化の発展とそれを支える音楽教育の継続性と、著作権の適切な保護の両立を目指し、音楽教室における著作物利用のあり方を明確にするものです。
■音楽教室規定「音楽教室における教師による楽器演奏等」の概要
音楽教室事業者が支払う使用料は以下のとおり
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大人のレッスンの著作物使用料は、受講者一人当たり年額750円(税別)
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中学生以下(こども)のレッスンについては、受講者一人当たり年額100円(税別)
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極少利用(普段は管理楽曲を使用しないが、年に数回程度利用する場合)の対応として、
レッスン単位および曲単位での使用料を定める
協議においては、最高裁が示した著作権のおよぶ範囲(教師の演奏または録音物の再生演奏)について適正な使用料の在り方を議論しました。協議当初は、最高裁判決の解釈に多くの時間を要したため、判決から2年をかけて合意に至りました。
本規定の主旨は、音楽の未来を守ることにあります。特に、こどものレッスンにおいて楽曲の選定に制約が課されないよう配慮した内容となっています。なお、これまでどおり、個人で経営する教室については適用対象外としています。
新しい規定の実施日は本年4月となります。今後、音楽教室事業者は管理開始(2018年4月)に遡り支払い、両者は新しい音楽教室規定に沿った運用を進めていきます。
■音楽教育を守る会 会長 大池真人のコメント
音楽は、人の心を豊かにし、人と人との繋がりを促し、社会にとって無くてはならない要素です。音楽文化の発展には、①利用の促進、②権利者の保護、そして③演奏人口の拡大、の好循環が必要であり、今回の事案はその在り方が問われたものでした。8年間という時間の中で、著作権に関する新しい法解釈が生まれたこと、そして未来を担う子どもたちへの配慮がなされた新しい料率規定が定まったことは大きな成果です。我々音楽教室事業者は今回の決定を真摯に受け止め、より一層演奏人口拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
■JASRAC 理事長 伊澤一雅のコメント
音楽教育を守る会との間で使用料規定について合意が整いました。8年間という時間のなかで、著作権の保護と利用のバランスについて改めて検討を行い、特に教室に通う子どもたちにとって、多様な音楽に接する機会を確保することが持続的な音楽文化の発展のために重要であるとの認識のもと、今回、良い形で新たな使用料規定について合意ができました。JASRACは、新たな使用料規定での管理の開始にあたり、音楽教室事業者の皆様に事前に丁寧なご案内を行ったうえで、安心して音楽をご利用いただけるよう、取り組んでまいります。
【音楽教育を守る会について】
音楽教育を守る会は音楽教育事業を営む7つの企業・団体が、JASRACによる音楽教室における著作権料徴収の動きに対応するために2017年2月に結成しました。その後、関係各社、各団体への参加を呼びかけ、会員法人数は300以上になっています。
【JASRACについて】
JASRACは作詞家、作曲家、音楽出版社等の権利者から音楽の著作権の管理委託を受け、音楽を利用する方々に利用を許諾し、その対価としてお支払いいただいた著作物使用料を著作権者に分配しています。1939年に国内初の著作権管理団体として設立され、85年にわたり、著作権管理のプロフェッショナルとして音楽文化の発展に向けた努力を続けています。
■経緯
2017年6月7日 JASRACが音楽教室における演奏等に関する使用料規定を文化庁に届出
2017年6月20日 音楽教室事業者がJASRACを提訴
音楽教室事業者が、音楽教室での音楽著作物の演奏利用について、JASRACが請求権を有しない(著作権がおよばない)ことを確認するための訴訟を東京地方裁判所に提起しました。
2017年7月4日 著作権等管理事業法に基づく協議
音楽教育を守る会は、JASRACに対し、係争中の案件につき、音楽教室における演奏等に関する使用料規定の撤回および不実施を求める協議申入れを行いました。
2017年12月21日 著作権等管理事業法に基づく文化庁長官裁定申請
音楽教育を守る会は、JASRACとの協議不調として、上記訴訟の判決が確定
するまで、当該規定の実施を保留する旨の裁定を申請しました。
2018年3月7日 著作権等管理事業法に基づく文化庁長官裁定と行政指導
文化庁は、本件については係争中であり、保留期間が定まらないことから、当該規定の実施の保留を行わないこととすると同時に、JASRACに対し、争う音楽教室事業者に対しては個別の督促を行わないこと等、社会的混乱を回避すべく適切な措置を取ることとする行政指導を発出しました。
2018年4月1日 JASRACが音楽教室における演奏等に関する使用料規定を実施
2020年2月28日 東京地方裁判所による判決
音楽教室における演奏利用に著作権が及ぶと判断し、音楽教室事業者の申し立てを棄却する旨の判決を言い渡しました。
2020年3月4日 音楽教室事業者が知的財産高等裁判所に控訴
2021年3月18日 知的財産高等裁判所による判決
教師の演奏および録音物の再生については音楽教室事業者が利用主体であるとしたものの、生徒の演奏については音楽教室事業者が利用主体であるとはいえず、この部分につき原判決を変更しました。
2021年3月~4月 JASRAC・音楽教室事業者がそれぞれ上告
2022年10月24日 最高裁判所による判決
教師の演奏および録音物の再生に関して、音楽教室事業者の上告を不受理とする決定(2022年7月28 日)をし、10月24日、生徒の演奏に関して、JASRACの上告を棄却するとの判決をしました。
2022年12月より 著作権等管理事業法に基づく協議
音楽教育を守る会とJASRACは、最高裁の判決を受け、音楽教室における演奏利用のうち、教師の演奏および録音物の再生についての使用料等の協議を開始しました。
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