北東大西洋浮魚の漁獲枠配分を実現するため新しい包括的なアプローチが直ちに必要

MSCジャパン

MSC(海洋管理協議会)が委託した最新の報告書において、北東大西洋の主要な浮魚資源の漁獲枠配分に関する合意達成に向けては、沿岸国政府は新しい包括的なアプローチを直ちに採用する必要があることが示されました。


6月22日に発表された海洋コンサルタント会社ABPmerによる報告書「北東大西洋浮魚漁業 ― 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する水産資源管理の課題」(※)では、ブルーホワイティング、タイセイヨウニシン、タイセイヨウサバの漁獲枠配分に関する長年に及ぶ合意不履行の結果、漁獲枠が持続可能な範囲を超えて設定され、これらの重要な水産資源の長期的な健全性が脅かされている状況について述べられています。


そのうえで報告書は、漁獲枠の合意メカニズムを改革することで、科学的な勧告を反映した持続可能な漁獲量の合意に至ることは可能だとしています。報告書に示された提言においては、各国政府は、水産資源とそれに依存する生態系や地域経済の長期的な未来を確保するための合意について放置しておくことができなくなります。


この報告書では、全員の合意による意思決定ではなく、多数決を推奨しています。独立した異議申し立て手続きと紛争解決メカニズムに支えられたこのアプローチを採用すれば、交渉が完全に決裂することなく、合意形成と調整が可能になります。


多数決と紛争解決によって、合意が破棄されることなく、合意形成および懸念がある場合の異議申し立てが可能になった例として、MSC認証を取得しているチリマアジ漁業を取りあげています ( https://www.msc.org/jp/what-you-can-do/media-centre/press-releases/220513 ) 。北東大西洋のサバと異なり、チリマアジは持続可能な形で管理され、漁獲されています。南太平洋でチリマアジを獲っている15カ国は、この資源を対象とするすべての国が支持する国際的な漁業管理の枠組みを通じて、持続可能な漁獲枠配分に合意することができました。


また、交渉の範囲に、ほかの漁業、漁場へのアクセス、水揚げ港を含めることや、貿易や安全保障の取り決めなどのより広範な課題を含めることも、交渉決裂を防ぐことに役立つと期待されています。これは、漁業、貿易、運輸、航空などを含む英国・EU通商協力協定(TCA)でとられたアプローチを踏襲するものです。


この報告書は、6月21日にロンドンのウォーターマンズ・ホールで開催されたMSC主催の北東大西洋浮魚漁業ステークホルダー・シンポジウムで発表されました。科学者、漁業管理者、市場関係者など、さまざまな分野の専門家が一堂に会したこのシンポジウムでは、北東大西洋の浮魚資源の漁獲枠配分の合意に向けた解決策や、管理に関するより広範な検討を進めるための、新しく創造性に富んだ方法が協議されました。


MSCは沿岸国政府に対して、共有の水産資源を対象としている漁業のMSC認証が2019年と2020年に一時停止になって以来、これら魚種資源の管理について合意が得られていない現状に対処するように求めてきました。この呼びかけは、MSC認証取得漁業からの水産物も含め持続可能な調達に取り組む小売業者や水産企業からも支持されています。


このシンポジウムには、さまざまな分野の100名を超えるステークホルダーが参加しました。その成果は、秋の交渉期間に先立ち、機運を高めるために発表される予定です。


MSC北欧地域ディレクターのエリン・プリドルは次のように述べています。「生態学的にも経済的にも重要な浮魚資源を将来にわたって持続可能なものとするために残された時間はわずかです。しかし、その解決策は手の届くところにあります。足りないのは、状況に応じて変化させることが可能な新たな解決策を講じるための各国政府の政治的な意志だけです。この報告書で述べている提言は、3つの資源すべてについて、科学的な勧告に沿った漁獲枠配分の取り決めを確実に実現するためのものです。

これら水産資源の持続的な管理に関する合意に至るための大きな一歩を踏み出すことで、沿岸国は世界に向けて持続可能な漁業におけるリーダーシップを示すことができます。合意がもたらす長期的な便益は、食料安全保障や経済、生態系において、非常に大きなものとなるでしょう」


ABPmer社の漁業専門家で、報告書を執筆したスザンナ・ウォルムズリー氏は、次のように述べています。「北東大西洋の浮魚漁業は、世界最先端の科学、科学的な勧告に基づき合意を行う沿岸国、そして適切な漁獲枠を順守し実行することにより便益を享受できます。不足しているのは、漁獲量を持続可能なレベルに維持するための漁獲枠配分の合意です。持続可能な管理まであともう一歩のところです。政治的な意志と歩み寄りを惜しまなければ、生態系や政治における将来の変化に耐えられる、管理と漁獲枠配分に関する包括的な合意に達することができます。

北東大西洋沿岸の漁業国は、持続可能な漁業の世界的リーダーであることを示すだけでなく、これらの重要な水産資源の生産性を将来にわたって確保し、食料安全保障と経済的利益を維持し続けるための絶好の機会を有しているのです」


※ ABPmer(2023)「北東大西洋浮魚漁業 ― 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する水産資源管理の課題」(英語)最終報告書(ABPmer報告書番号R.4069)。ABPmerがMSCの依頼で作成した2023年6月付の報告書。https://www.msc.org/species/small-pelagic-fish/north-east-atlantic-pelagic-fisheries-report


MSC(海洋管理協議会)について

将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20か国に事務所を置き世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は、2021年度には世界62カ国で20,000品目以上、日本では500品目以上が販売されました。国内ではイオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、マクドナルドなどで購入できます。

持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は、世界で広く認知されており、最新の科学的根拠に基づき策定されたものです。FAO(国連食糧農業機関)とISEAL(国際社会環境認定表示連合)双方の要求事項を満たした世界で唯一の漁業認証プログラムでもあります。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が最小限に抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、第三者審査機関による審査を通じて実証することが求められます。


詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください:https://www.msc.org/jp


MSC「海のエコラベル」について

MSCの厳正な認証規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それがMSC「海のエコラベル」です。

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会社概要

一般社団法人MSCジャパン

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URL
https://www.msc.org/jp
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都中央区日本橋兜町9-15 兜町住信ビル3階
電話番号
-
代表者名
石井幸造
上場
未上場
資本金
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設立
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