「第3回 国際文化会館ジャーナリズム大賞」応募85作品から受賞・ファイナリスト9作品を選出
大国第一主義を追ったマクロな検証、半導体誘致に揺れる地域社会、デジタルデータが暴いた軍民融合、そしてフリーランスによる告発まで
公益財団法人国際文化会館(東京都港区、理事長:近藤正晃ジェームス)は24日、「第3回 国際文化会館ジャーナリズム大賞」の受賞作品を発表しました。大賞には朝日新聞社の連載「帝国の幻影~壊れゆく世界秩序」と熊本日日新聞社の年間企画「TSMCインパクト」の2作品が選出されました。また、オピニオン部門賞には益尾知佐子氏(九州大学大学院教授)ら、特別賞には小泉耕平氏と山口なつ香氏(ともにフリーランス)、藤田直央氏(朝日新聞記者)がそれぞれ選出されました。
本賞は2024年に創設され、綿密な取材やデータに基づく調査を行い、日本と世界との関わりの中で生じる新たな可能性と課題に光を当てた報道を表彰しているものです「多様にして包容力と活力のある自由主義と民主主義を育てるジャーナリズム」を力づけたいという思いから、相互理解と共存・共生のあり方について感動と洞察を与える報道を顕彰し、日本におけるジャーナリズムのさらなる発展を目指します。
第3回となる今回も、「日本と世界の関わり」をテーマに、様々な観点から光を当てた計85作品の応募がありました。6月17日に都内で開催された選考委員会において、様々な分野で活躍する6名の選考委員(委員長:林香里・東京大学大学院情報学環教授)が議論を重ね、3部門の受賞作品を決定いたしました。
受賞者を表彰するための表彰式・レセプションを7月17日(金)に、国際文化会館(東京都六本木)にて行います。
受賞作品は以下の通りです。
大賞(賞金150万円)
「日本と世界の関わり」という観点から、日本の現代政治・経済・社会等の重要課題について、優れた検証、調査をした報道。また、世界の中における日本の課題や挑戦に光を当て、感動と勇気を与えた報道と作品。
「連載 帝国の幻影~壊れゆく世界秩序」(掲載:朝日新聞)
朝日新聞国際報道部 取材班 代表:伊東和貴(国際報道部次長)
編集・監修:伊東和貴、望月洋嗣、渡辺丘、平賀拓哉、高野裕介
取材:喜田尚、青山直篤、駒木明義、中川仁樹、寺西和男、其山史晃、石原孝、高久潤、武石英史郎、斎藤徳彦、井上亮、河野光汰、伊藤弘毅、畑宗太郎、鈴木友里子、河崎優子、今泉奏、田村剛、田中恭太、森岡みづほ、佐藤達弥、浪間新太、長島一浩
デザイン:上村伸也、米澤章憲、松本春乃
動画の編集・監修:佐藤岳史 桜井健至
概要:戦後80年を迎え、ルールに基づく国際秩序が大きく揺らぐ中、「帝国」や「勢力圏」をキーワードに世界の激変を捉えた国際ルポ。自国第一主義を強めるトランプ大統領の米国、プーチン大統領のロシアにおける青少年軍事キャンプ、ガザなど中東各地に攻撃を続けるイスラエル、台湾への強硬姿勢を崩さない中国、グローバルサウスなど各地の現場をルポし、専門家らの将来展望を交えて世界の現状や日本の針路を考察した。
「年間企画 TSMCインパクト」(掲載:熊本日日新聞)
熊本日日新聞 TSMC取材班
【TSMC取材班】 林田賢一郎(大津総局長)、草野太一(地域報道本部員)、立石真一(くまTOMO編集委員)、豊田宏美(くまTOMO編集委員)、馬場正広(地域報道本部員)、田代智也(小国支局長)、志賀茉里耶(菊池支局長)、嶋田昇平(地域報道本部員)山本文子(地域報道本部員)、川野千尋(東京支社員)、樋口琢郎(地域報道本部員)、小山智史(地域報道本部員)、宮崎あずさ(阿蘇総局長)、上野史央里(地域報道本部員)、園田琢磨(東京支社員)、植木泰士(地域報道本部員)、丁将広(地域報道本部員)、清水咲彩(地域報道本部員)、後藤幸樹(水俣芦北総局長)、伊藤恩希(水俣芦北総局員)、中尾有希(東京支社員)、久保田尚之(地域報道本部社会担当部次長)、澤本麻里子(文化部員)、前田晃志(文化部員)、東有咲(編集一部員)、井田真太郎(文化部員)、宮﨑達也(玉名総局長)、渡邉昴(運動部員)、野村拓生(編集一部員)、水田智(八代支社員)、野方信助(天草総局長)、上村彩綾(合志支局長)、丸山宗一郎(運動部員)、東寛明(人吉総局長)
概要:台湾TSMCの熊本進出に伴い地域社会に生じた劇的な変容を、政経・支社総支局・社会・文化・運動の全部署横断で追った長期通年企画。経済的恩恵だけでなく、地下水採取報告書の黒塗り事実の発掘や、工場から排出されるPFASの情報公開を巡る県の方針転換など、行政・環境への影響に鋭く切り込んだ。
ファイナリスト
「移民と社会」(掲載:毎日新聞)
毎日新聞東京社会部 取材班 代表:川上晃弘(専門記者、現東京社会部長)
千脇康平(デジタル報道グループ、現編集局)、宗岡敬介(社会部西部グループ)、池田真由香(社会部西部グループ、現運動部)、朝比奈由佳(社会部東京グループ)、武内彩(アジア総局、現社会部大阪グループ副部長)、妹尾直道(経済部)、佐久間一輝(経済部)、鴨田玲奈(経済部)
「半島の特攻兵」(掲載:中日新聞)
中日新聞 取材班 代表:澤田敦(中日新聞岐阜支社報道部長、前名古屋本社社会部次長)
曽布川剛、鈴木啓太、寺西雅広、武藤周吉(名古屋本社社会部)、木下大資(名古屋本社国際部)、斎藤雄介(ソウル支局)、加藤拓(名古屋本社選挙調査室)
オピニオン賞(賞金50万円)
日本と世界の関わりについて冷静かつ広い視野で分析し、洞察に富んだ論考、評論、意見表明。
「中国が東シナ海に漁船2000隻を動員して470kmのU字線を形成していた! 技術と動員体制の確立で進む軍民融合、春から海上民兵の活動が常態化か」(掲載:東洋経済オンライン)
代表:益尾知佐子(九州大学大学院比較社会文化研究院/地球社会統合科学府教授)
毛利亜樹(同志社大学法学部准教授)、弓野正宏(中国軍事アナリスト)、土屋貴裕 (京都外国語大学共通教育機構教授)
概要:2025年末に中国漁船約2000隻が東シナ海で470kmにわたって並んだ、その異例な海上行動を報道。地理空間情報企業の衛星データ解析(OSINT)と地域研究者の専門知を融合させ、習近平政権が10年かけて構築した「漁民を海上民兵として組織指揮する軍民融合体制」の実態と今後の常態化リスクを立体的に実証した。
ファイナリスト
「日本人ファーストに対する事実に基づいた考察」(掲載:時事ドットコム)
橋本直子 (国際基督教大学教養学部准教授)
特別賞(賞金30万円)
大賞やオピニオン賞の枠組みでは捉えきれない、独創的な手法、革新的な取材、執筆者のユニークな体験や挑戦に基づく報道活動など、ジャーナリズムの多様なアプローチと価値を評価する賞。
「パリパラリンピック選手へのパワハラと不適切会計」(掲載:スローニュース)
小泉耕平、山口なつ香(ともにフリーランス)
概要:2024年パリパラリンピックに多数の選手を送り出した日本パラバドミントン連盟。その内部で横行したパワハラや、海外遠征費などの名目で集めた資金の不適切な支出について実態を暴いた。報道を機に理事長は引責辞任、選手への返金方針が表明された。
「日米安保密約に関する公文書に基づく新事実と今日的意義の報道」(掲載:朝日新聞)
藤田 直央(朝日新聞東京本社専任記者(公文書担当))
概要:1960年の日米安保条約改定時、朝鮮半島有事に限り事前協議を不要とした「密約」について、首相の岸信介が交渉を主導・提案していた新事実を報道。米国国立公文書館で秘密指定を解除された米側交渉記録など30数点を精読・分析し、日本側に存在しないとされるプロセスを解明した。
ファイナリスト
「AI時代の「命綱」海底ケーブル巡る新冷戦—米中競争にテック、そして日本」(掲載:ブルームバーグニュース日本語版)
取材:Philip Heijmans, Yian Lee, Christopher Udemans, Adrian Leung
編集: Malcolm Scott, Ingrid Fuary-Wagner, Shadab Nazmi, Jeremy Diamond
写真編集:田中ゆき
翻訳:杉山容俊、蒲原桂子、斎藤康史(いずれもブルームバーグ)
※概要はいずれも、応募時の推薦文などを元に事務局が作成しました。
選考委員長コメント
林香里(東京大学大学院情報学環教授 東京大学理事・副学長/日本メディア学会会長)
今年の応募作は、テーマも手法も実に多彩でした。地方紙や全国紙、テレビ局、ネットメディア、外国メディア、月刊誌など多様な媒体に加え、大規模なチーム取材からフリーランスまで、幅広い担い手が集った85作品は、日本のジャーナリズムの豊かな広がりを示していました。
応募作品に目を通しながら改めて感じたのは、現代社会における相互連関の深まりです。人やモノの移動、デジタル空間に張り巡らされたネットワークによって、私たちの日常は世界の動きと密接に結び付いています。そうした時代にあって、身近な出来事と遠い地平線の彼方で起きている変化をつなぎ、その意味を読み解き、隠された真実に光を当てるジャーナリズムの役割はますます重要になっています。大賞に輝いた「帝国の幻影」と「TSMCインパクト」は、それぞれ世界秩序の変容と地域社会の変貌を描き出し、現代社会の相互連関を見事に照射しました。また、惜しくも選に漏れた作品にも現代の息吹を感じさせる力作が多く、ご応募いただいたすべての皆様に感謝申し上げます。
参考:第3回国際文化会館ジャーナリズム大賞について
【募集結果】

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募集期間 |
2026年1月26日〜4月30日 |
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応募総数 |
85作品 |
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対象期間 |
2025年4月1日〜2026年3月31日に公表された日本語の記事。(書籍・映像は除く)。放送法の規定による「放送事業者」によるオンラインの記事も対象とする。 |
【選考委員会】
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林香里(委員長) 東京大学大学院情報学環教授/日本メディア学会会長
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関美和 MPower Partners Fund 創業パートナー/翻訳者
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筒井清輝 スタンフォード大学 社会学部教授/アジア太平洋研究センター所長
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堂前宣夫 株式会社良品計画 元取締役会長
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山脇岳志 スマートニュース メディア研究所 所長/立教大学 社会学部客員教授
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船橋洋一 公益財団法人国際文化会館グローバル・カウンシル チェアマン
【表彰式・レセプションについて】

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日時 |
2026年7月17日(金) |
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会場 |
国際文化会館(東京・六本木) |
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レセプション記念講演 |
LINEヤフー株式会社 元代表取締役会長 川邊健太郎氏 「ヤフー・ジャパンの30年とAI時代のジャーナリズムのこれから」 |
【公益財団法人国際文化会館について】
公益財団法人国際文化会館(https://ihj.global/)は、日本と世界の人々の間の文化交流と知的協力を通じて国際相互理解の増進を図ることを目的に、1952年にロックフェラー財団をはじめとする内外の諸団体や個人からの支援により設立された非営利の民間団体です。
文化、学術、教育などの分野において、独自にあるいは内外のさまざまな機関と協力して各種の国際交流事業を実施するプログラム部門と、その事業を支える国際交流の場としての施設の維持運営にあたる業務部門から構成されています。この両部門が有機的に結びつき、相互に補完し合いながら効果的に事業を進めていることが、国際文化会館の最大の特色です。
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