【多摩六都科学館】世界初!新種の発光トビムシを発見
発光トビムシの新種記載は世界初、日本が最多記録国に
多摩六都科学館(東京都西東京市、館長:髙柳雄一)自然グループ学芸員の大平敦子(博士;横浜国立大学 研究支援員)と中森泰三(横浜国立大学教授)の研究チームが、沖縄県の宮古島、西表島、与那国島で採集したトビムシの中から、発光する4 種を発見しました。
これらの成果はニュージーランドの科学雑誌「ズータクサ(Zootaxa)」に2025年7月4日に公開されました。
研究のポイント
・沖縄県( 宮古島・西表島・与那国島) で発光するトビムシ4 種を発見。
・そのうち2 種は新種で発光トビムシの新種記載は世界初。
・残る2 種は既知種だが、今回初めて発光することが確認された。
・3 種はこれまで発光が知られていなかった「アカフサイボトビムシ属」。
・いずれの種も赤い体色をもち、刺激を受けると体表のイボが緑色に発光する。
【概要】
大平敦子博士(多摩六都科学館学芸員;横浜国立大学 研究支援員)と中森泰三(横浜国立大学教授)の
研究チームは、沖縄県の宮古島、西表島、与那国島で採集したトビムシの中から、発光する4 種を発見しました。
このうち2 種は新種であり、発光するトビムシが新種として記載されたのは世界で初めてとなります。
発見された4 種のうち、1 新種はこれまで発光種を含むことが知られていた「アカイボトビムシ属」のもので、残る1 新種と2 種の既知種は、これまで発光することが知られていなかった「アカフサイボトビムシ属」に属していました。これらの成果はニュージーランドの科学雑誌「ズータクサ」に7 月4 日に公開されました。
今回の成果と過去の報告を合わせると、日本に生息する発光トビムシは計8 種となり、日本は世界で最も発光トビムシの種が記録されている国となりました。
■背景
トビムシは世界で約9,000 種が知られる体長数ミリメートルの陸生節足動物で、発光する種は現在十数種程度が知られています。その小ささや分類の難しさから、発光種の存在がこれまで見過ごされてきた可能性があります。発光の確認や種の同定には専門的な手法が必要であり、未知の種が今なお多く潜んでいることが示唆されます。
2023 年には、多摩六都科学館と横浜国立大学( 大平・中森) が率いる研究チームによって、日本産の既知種4 種に発光性があることが報告されました。これらの知見が蓄積されつつある中で、今回新たに4 種(うち2 種は新種) の発光種が発見されたことは、日本におけるトビムシ研究の大きな進展です。
■成果
以下、発見された発光トビムシの詳細(種名・新種/既知種・発見場所)
●アカイボトビムシ属
アカホシアカイボトビムシ(図1-4) 新種 宮古島
学名: Lobella lucifera
由来: luciferaはラテン語の形容詞であるluciferに由来し、「光をもたらす」という意味です。この種の発光能力に因んで名付けられました。
●アカフサイボトビムシ属
シシガミアカフサイボトビムシ(図1-3) 新種 宮古島
学名: Crossodonthina leodeus
由来: leodeusは「獅子神」を意味します。本種が発見された場所に大きなシーサーの滑り台があり(図2)、シーサーは沖縄の伝統的な守り神ということからシシガミと名付けられました。
●フチミアカフサイボトビムシ(図1-2) 既知種 西表島
●クビワアカフサイボトビムシ(図1-1) 既知種 与那国島
これらの種は、赤い体色で体表に突起(イボ)を持っています。刺激を受けると、これらのイボが緑色に発光するのが特徴です。形態的観察によりいずれも別種であることを確認し、DNA型の解析によってその分類結果を裏付けました。


■今後の展開
今回の発見により、日本で知られる発光トビムシは計8 種となり、日本は世界で最も発光トビムシの多様性が確認されている国となりました。発光の仕組みや生態的な役割は未解明ですが、本研究は陸上の発光節足動物における未発見の多様性を明らかにし、生物多様性研究に新たな視点を与える成果といえます。
また、研究チームが発表した論文では、「アカイボトビムシ属」および「アカフサイボトビムシ属」にさらに発光種が存在する可能性が示唆されており、他の属からも新たな発光種が見つかる可能性があると述べられています。今後のさらなる調査によって、未知の発光トビムシが発見されることが期待されます。
資源の限られる日本において、生物多様性は重要な知的・自然資源の一つであり、今回の発見はその価値を再認識するものです。
■お願い
発光種を含むイボトビムシ類は地域固有性が高いことが知られています。他所からとってきたものを別の場所に放すなど、本来の分布域を乱すような行為は控えてください。
論文情報
・掲載誌: Zootaxa [ ズータクサ]
・タイトル: Two new luminous species of Neanuridae (Collembola) and the discovery of bioluminescence in the genus Crossodonthina Yosii [ イボトビムシ科(トビムシ綱) の発光性種の2 新種とアカフサイボトビムシ属における発光種の発見]
・著者: Atsuko Ohira, Taizo Nakamori [ 大平敦子、中森泰三]
・研究協力: 澄田智香氏、高江洌鈴奈氏、平塚和之教授( 横浜国立大学)、小倉里江子博士( 横浜バイオ
テクノロジー株式会社) ほか多数
・DOI: https://mapress.com/zt/article/view/zootaxa.5659.3.4
d141165-89-304e1f672cd84c5e6dce0870316a7daf.pdf本件に関するお問い合わせ先
研究に関すること
多摩六都科学館 学芸員 大平 敦子
メールアドレス: atsuko-ohira@outlook.jp
横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授 中森 泰三
メールアドレス: nakamori-taizo-gc@ynu.ac.jp
報道に関すること
多摩六都科学館 総務グループ
メールアドレス: info2@tamarokuto.or.jp
電話: 042-469-6984
横浜国立大学 総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: press@ynu.ac.jp
電話: 045-339-3027

多摩六都科学館
1994年開館。直径27.5mのドームに1億4000万個の星々を映し出す世界最大級のプラネタリウムドームと、5つの展示室で観察・実験・工作が楽しめる体験型ミュージアム。
小平市、東村山市、清瀬市、東久留米市、西東京市の5市で運営しています。
所在地 〒188-0014 東京都西東京市芝久保町5-10-64
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URL https://www.tamarokuto.or.jp/
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