金融業界の業務実態調査
専門的定型業務における「経営層と現場の認識ギャップ」が鮮明に 経営層は“高度だが任せられる業務”、現場ほど「任せにくい」と実感 DXツール導入後も負担「増加」が「減少」を上回る結果に
「人に寄りそう合理化で、世界をもっと自由に、もっとゆたかに。」をビジョンに、日本のビジネス界の生産性向上に取り組むゴウリカ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:岡本 賢祐)は、日本の大企業のビジネスパーソン(企業規模1,000人以上)を対象に、「業務時間の使い方と生産性に関する調査」を実施しました。今回は、その中でも金融業界に焦点を当て、業務実態を明らかにしました。
調査の結果、金融業界では「専門的定型業務」をめぐり、経営層と現場の間で業務の捉え方にギャップが生じていることが明らかになりました。金融の経営者・部長クラスの50.5%が、専門的定型業務を「経験や社内人脈があるからこそ対応できる高度な業務」と認識しています。
一方で、専門的定型業務を「半分以上は社内の他の人に任せられる」とする回答は、金融の経営層では約7割にのぼりました。これに対し、金融の一般社員では42.5%が「社内の他の人に任せにくい」と回答しています。
つまり、経営層は専門的定型業務を「高度ではあるが任せられる業務」と捉える傾向があるのに対し、現場では「実際には任せにくい属人的な業務」と感じている可能性があり、業務認識と現場実感の間にギャップが生じていることが示唆されます。
本調査結果のサマリー
1.経営層ほど専門的定型業務を“高度専門業務”と認識
金融の経営者・部長クラスの50.5%が専門的定型業務を「経験や社内人脈が必要な高度専門業務」と回答。課長・係長との差は21ポイントで、全体の役職間差(約10ポイント)の約2倍となりました。
2.現場では属人化実感が強く、金融の一般社員42.5%が「任せにくい」と回答
専門的定型業務について、一般社員の42.5%が「社内で任せにくい」と回答。経営層(28.2%)との差は14ポイントとなり、現場ほど属人化を強く感じている傾向が見られました。
3.DX導入後も専門的定型業務の負担軽減は限定的
DXツール導入後の負担変化では、全体で「変わらない」が45.8%と最多。「増加」(32.7%)が「減少」(21.5%)を上回りました。金融の経営者・部長クラスでは45.9%が「負担が増えた」と回答しています。
4.DX導入で“見えない負担”が発生、管理職層でより顕著
金融業界では、負担として多かったのは「ツール学習」(47.3%)、「複数ツール対応」(43.5%)、「既存システムとの連携」(40.1%)。特に管理職層でこれらの負担が高い結果となりました。
今回の調査から、金融業界では業務の専門性認識、属人化の実感、DX効果の受け止め方において、経営層と現場の間に大きな認識ギャップが存在する実態が明らかになりました。
<各業務の定義(本調査における区分)>
本調査では、業務内容を「コア業務」「専門的定型業務」「定型業務」の3つに分類し、業務実態を明らかにしました。
コア業務
企業や組織の価値創出に直結する、本来注力すべき業務。高度な判断や創造性、戦略性が求められ、成果が事業成長や競争力に直接影響する業務を指します。
具体例:企画立案・新規施策検討、施策方針など重要な意思決定、顧客との商談 など
専門的定型業務
一定の知識や経験、専門性を必要とする一方で、業務の進め方や手順がある程度定型化されている業務。判断や確認を伴うものの、繰り返し発生しやすい業務を指します。
具体例:承認・決裁プロセスに伴う確認作業、顧客・取引先との細かい確認作業・進捗管理、複数システム間のデータ集計・統合、社内調整・根回し(会議調整、関係部署への確認など)、フォーマットに沿った報告書・レポート作成、資料の体裁調整・フォーマット調整など
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販促業務であれば、印刷・販促に関する深く広い知識
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人事業務であれば、採用に関する深く広い知識
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DX業務であれば、プログラミングやシステムに関する深く広い知識
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経理業務であれば、会計に関する深く広い知識
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金融業務であれば、融資審査の付帯書類確認や各種届出書類の作成・照合に関する深く広い知識
定型業務
専門的な知識や高度な判断を必要とせず、手順どおりに進めることで対応可能な、比較的単純な業務を指します。
具体例:単純なデータ入力、書類整理・発送作業、経費精算や勤怠入力などの事務処理
【1】金融業界、コア業務+4pt(52.8%)も、非コア業務47.2%で全体とほぼ同水準
ビジネスパーソンの業務時間の内訳を調査した結果、「コア業務」は48.8%にとどまり、「専門的定型業務」(25.7%)と「定型業務」(25.5%)を合わせた“非コア業務”は51.2%と過半数を占めました。本来注力すべき付加価値の高い業務よりも、標準化可能な業務に多くの時間が費やされている実態が明らかになりました。
金融業界に絞って見ると、「コア業務」は52.8%と全体平均(48.8%)を約4ポイント上回り、専門性の高い業務への従事割合が比較的高い結果となりました。一方で、「専門的定型業務」(24.8%)と「定型業務」(22.4%)を合わせた非コア業務は47.2%にのぼり、金融業界においても業務の約半数を占めています。金融業界はコア業務の割合がやや高いものの、業務構造自体は全体と大きく変わらず、コア業務に十分集中できているとは言い難い実態が浮き彫りとなりました。

【2】金融業界、経営層ほど専門的定型業務を“高度専門業務”と認識~現場と大きな乖離
専門的定型業務の性質について尋ねたところ、金融業界では「その人の経験や社内人脈があるからこそこなせる“専門性の高い業務”」と回答した割合が40.3%となり、全体(36.6%)を約4ポイント上回りました。金融業界では、専門的定型業務を“属人的で高度な業務”と捉える傾向が、他業界に比べてやや強いことがうかがえます。

一方で、「専門知識は必要だが標準化可能」(36.8%)と「誰でもこなせる業務」(22.9%)を合わせた“標準化可能”の割合は59.7%となり、全体(63.4%)よりやや低いものの、依然として約6割にのぼりました。金融業界では専門性への認識が比較的高い一方で、業務の過半数は仕組み化できると捉えられている点では、全体と大きな差は見られませんでした。
さらに役職別で見ると、金融業界では専門的定型業務に対する認識の差が全体よりも大きいことが分かりました。金融の経営者・部長クラスでは50.5%が「専門性の高い業務」と回答し、課長・係長(29.1%)との差は21ポイントにのぼります。これは、全体の役職間差(約10ポイント)と比べて約2倍の開きです。この結果から、金融業界では専門的定型業務を巡り、経営層ほど“高度専門業務”と捉える傾向が強く、現場との認識ギャップがより大きい実態が浮き彫りとなりました。
【3】生産性向上は「定型業務」改善が主流、金融では経営層のみ“専門的定型業務”を優先
生産性を高めるために、「定型業務」と「専門的定型業務」のどちらの改善に集中すべきかを尋ねたところ、全体では「定型業務」を優先すべきとする回答が55.7%となり、「専門的定型業務」(44.3%)を上回りました。
企業全体としては、まず単純でマニュアル化しやすい業務の効率化を優先すべきと考える傾向が見られます。金融業界でも、課長・係長(定型56.3%)や一般社員(55.2%)では、全体と同様に「定型業務」を優先すべきとする回答が多数を占めました。

一方で、金融の経営者・部長クラスでは、「専門的定型業務」を優先すべきとする割合が54.4%となり、「定型業務」(45.6%)を上回りました。全体では「定型業務」優先が多数を占めるのに対し、金融の経営層では「専門的定型業務」優先が多数となる結果となりました。
つまり金融業界では、生産性向上の優先対象について、現場は全体と同様に「定型業務の削減」を重視する一方、経営層のみが「専門的定型業務など、より高度な業務の改善」を優先しており、役職による認識の違いがより明確に表れる結果となりました。
【4】浮き彫りとなる“経営層との認識のねじれ”~現場では属人化実感
【2】で見たように、金融の経営層は専門的定型業務を「高度専門業務」と捉える傾向が強い一方、現場の認識は大きく異なります。では、実際に業務を「他の人に任せられるか」という観点ではどうでしょうか。専門的定型業務について「社内の他の人に任せられると思うか」を尋ねたところ、全体では66.6%が「半分以上は任せられる」と回答しました。一方で、33.4%は「あまり任せられない」「ほとんど任せられない」と回答しており、約3人に1人が業務の属人性を感じていることが分かりました。

金融業界でも、「半分以上任せられる」とする回答は66.2%と全体とほぼ同水準でした。しかし、役職別に見ると状況は大きく異なります。金融の経営者・部長クラスでは「任せにくい」とする割合は28.2%にとどまる一方、一般社員では42.5%に達し、14ポイント以上の差が見られました。
さらに別の設問では、金融の経営層ほど専門的定型業務を「高度専門業務」と認識する傾向が強いことが明らかになっています。
つまり金融業界では、経営層は「高度だが任せられる業務」と捉える一方、現場では「実際には任せにくい業務」と感じている可能性があり、認識と実感の間に“ねじれ”が生じていることがうかがえます。今回の結果から、金融業界では専門性への評価と業務の代替可能性に対する認識が必ずしも一致しておらず、特に現場では業務の属人化を強く実感している実態が浮き彫りとなりました。
【5】金融の経営層で「負担増」45.9%、DX効果に役職間ギャップ
過去3年以内にAI・RPAなどのDXツールを導入した企業に、導入後の「専門的定型業務」の負担変化を尋ねたところ、全体では「変わらない」が45.8%で最多となり、「増加」(32.7%)が「減少」(21.5%)を上回りました。金融業界でも「変わらない」が43.5%と最多でしたが、「増加」は37.2%と全体を上回り、「減少」は19.3%と下回り、DXによる負担軽減の実感は全体より限定的でした。

役職別に見ると、この傾向は金融業界でより顕著です。金融の経営者・部長クラスでは「増加」が45.9%と最も高く、課長・係長でも38.1%と全体の課長・係長(30.8%)を上回りました。一方、一般社員では「変わらない」が55.7%と過半数を占めています。
つまり金融業界では、DX導入後の負担について役職が上がるほど「増えた」と感じやすい構図が見られます。専門的定型業務の効率化を目的としたDX施策が、金融では必ずしも負担軽減に結びついていない実態が浮き彫りとなりました。
【6】DX導入後の“見えない負担”が顕在化、金融では管理職層でより顕著に
AI・RPAなどのDXツール導入後に発生した負担について尋ねたところ、全体では「ツールを使いこなすための学習」(46.4%)が最も多く、「複数ツールの使い分け・通知対応」(40.1%)、「新ツールと既存システムの連携」(39.2%)が続きました。金融業界ではこれらの割合がそれぞれ47.3%、43.5%といずれも全体を上回り、さらに「上司や顧客から期待されるアウトプット」も40.1%と高い結果となりました。金融業界では、DX導入に伴うツール運用や対外対応などの周辺業務の負担が、全体より大きい傾向が見られます。

役職別に見ると、この負担は特に管理職層に集中しています。金融の課長・係長クラスでは「複数ツールの使い分け・通知対応」が52.4%、「ツール学習」が50.8%と、いずれも全体平均を大きく上回りました。また、経営者・部長クラスでも「新ツールと既存システムの連携」(48.6%)や「ツール学習」(50.0%)が高水準となっています。一方、一般社員では「ツール学習」41.4%、「複数ツール対応」37.1%にとどまりました。今回の結果から、金融業界ではDX導入による直接的な業務効率化以上に、ツールの運用や調整などの周辺業務の負担が、特に管理職層に集中している構図が浮き彫りとなりました。
コメント:ゴウリカ株式会社 代表取締役 岡本 賢祐
今回の調査から、金融業界では「専門的定型業務」を巡り、経営層と現場の間で認識に大きなギャップが生じている可能性が見えてきました。経営層はこれらの業務を「専門性の高い重要な仕事」と捉える傾向がある一方、現場では「社内の他の人に任せにくい属人的な業務」と感じている割合が高く、同じ業務でありながら見えている景色が大きく異なっています。
さらに、DXツールの導入が進んでも、専門的定型業務の負担が大きく減ったと感じている人は多くありません。むしろツールの学習や複数システムの運用など、新たな業務が生まれているという実態も見えてきました。DXは業務効率化の有力な手段ですが、それだけで業務構造の問題が解決するわけではないということを示唆しています。
専門的定型業務は、手順がある程度決まっている一方で、企業ごとの慣習や人間関係、経験知が絡むため、単純に切り出したり自動化したりすることが難しい領域です。その結果、企業のなかで十分に整理されないまま現場に積み重なり、コア業務に集中する時間を圧迫している可能性があります。
こうした状況を改善するためには、AIやDXの導入だけでなく、業務の標準化や役割分担の見直しなど、業務構造そのものを見直していくことが重要です。外部の専門人材を活用しながら業務を再設計するなど、人と仕組みを組み合わせたアプローチが、生産性向上の鍵になると私たちは考えています。
【アンケート概要】
期間:2026年1月下旬
対象:日本の大企業(従業員規模 1,000人以上)のビジネスパーソン1,020人
業種:製造・物流、卸売・小売、金融
職種:営業、マーケティング、企画、人事
役職:経営者、部長、係長・主任、一般社員
金融業界 役職内訳:経営者・部長 103人
課長・係長 103人
一般社員 134人
【ゴウリカ株式会社について】
会社名:ゴウリカ株式会社
東京本社:東京都渋谷区渋谷1-10-9 MIYAMASU TOWER
関西支社:大阪府大阪市北区大深町6番38号グラングリーン大阪北館JAM BASE 8階
JAM-STUDIO 802号室
名古屋支社:愛知県名古屋市昭和区鶴舞1丁目2番32号 STATION Ai 内
代表者名:岡本 賢祐
資本金:100百万円
備考:2023年6月にフェムトパートナーズの支援を受けてMBOを実施し、コニカミノルタグループから独立
[事業内容]
マーケティング、DX、人事領域における合理化支援。
人手不足や生産性向上といった企業課題に対し、課題分析から改善策の設計・実装・運用までを包括的に支援します。
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GOURICA株式会社 広報担当(共同ピーアール内:瀬山、伊藤、村上)
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