テクノロジーと市民科学が変える海洋プラスチックごみ対策〜スマホアプリとAIを活用した参加型ごみ拾いの可能性〜 ウェビナーを10/4開催
本ウェビナーでは、市民、研究者や学生、政府機関および自治体の政策担当者を対象に、スマートフォンアプリやAIなどの科学技術を活用した海洋プラスチックごみの調査や研究についてわかりやすくお伝えします。市民が参加しやすい形でのごみ拾いやごみの実態把握を促進する取り組みについてもご紹介します。また、海洋プラスチックごみの削減に向け、科学的根拠に基づいた効果的な対策や取り組みについて話し合い、課題の現状と最前線の取り組みについて理解を深めることを目指します。
日本がリードする海洋プラスチックごみ対策とその課題
日本は、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて国際的な取り組みを主導する国の一つです。2019年のG20大阪サミットでは、世界に先駆け2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」(※1)を提唱ました。2024年末までの策定に向けて協議の続く、プラスチック汚染に関する国際条約の策定に向けた政府間交渉委員会(INC)においても重要な役割を果たしています。
海洋プラスチックごみ問題は、人類の活動に起因して環境中に流出し、生態系に深刻な影響を与えています。しかし、その状況は経済・社会活動、インフラ、地理的・気候的条件、自然災害などにより大きく変動し、非常に複雑かつ予測困難な「VUCA」(※2)を伴う状況にあります。
海洋へのごみ流出を防ぐために、ビーチクリーンや河川、市街地での地域清掃、「ごみ拾い」活動が、学校や地域団体、企業、NPO・NGO、市民個人により行われています。しかし、どこで、どのような種類のごみが、どれだけ回収されているのか、その実態は明らかになっていません。海洋プラスチック問題を解決するためには、発生源の7〜8割を占めるといわれる陸域でのごみの分布やごみ拾い活動の実態を把握し、その効果を測定・促進することが不可欠です。
一方で、スマートフォンやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのテクノロジーが世界中に浸透し、生成AIをはじめとしたテクノロジーも加速度的に進化しています。こうしたテクノロジーの進歩を、海洋プラスチックごみ問題を含む環境問題の解決に向けて、市民の参加と理解を得ながら、どのように活用していくかが課題となっています。
大学・研究機関、企業が連携し、市民科学の普及・活用を目指す
このような状況の中、鹿児島大学の加古真一郎教授、九州大学の磯辺篤彦教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の松岡大祐グループリーダーらの研究チームは、世界132カ国で利用されているごみ拾いSNS「ピリカ」を通じて市民から投稿されるプラスチックごみの画像を解析し、環境中のごみの種類や分布を可視化・定量化するシステムを開発しました。この研究成果は、国際学術誌「Waste Management」に査読付き論文として掲載されています。
このウェビナーでは、アジア経済研究所の小島道一上席主任研究員を基調講演にお迎えし、世界の海洋プラスチックごみ対策の政策動向や、アジア太平洋地域を中心としたテクノロジーの活用状況を概観します。また、上記のシステム開発に携わる研究者から、海岸漂着プラスチックごみやマイクロプラスチックを含めた最新の研究状況を紹介します。そのうえで、SNSユーザーによる実際のごみ拾い活動から得られた気づきを共有し、海洋プラスチックごみの発生源や環境中での分布実態の把握、市民の理解と参加を促進するための科学的根拠に基づいた対策について議論します。
<概要>
テクノロジーと市民科学が変える海洋プラスチックごみ対策
〜スマホアプリとAIを活用した参加型ごみ拾いの可能性〜
開催日時 2024年10月4日 13時30分〜15時00分
開催場所 オンライン(Zoomを使用予定)※開催後オンライン公開予定
対象 一般市民、研究者、政策担当者など
参加人数 100名(予定・事前登録制)
参加費 無料
使用言語 日本語
プログラム予定(敬称略)
※一部変更になる場合がございます
基調講演(15分)
世界の海洋プラスチックごみ対策・技術の潮流とごみ拾いの役割
アジア経済研究所 小島道一 上席主任研究員
1990年慶應義塾大学経済学部卒業。同年アジア経済研究所(現、JETROアジア経済研究所)に入所。96~98年海外派遣員としてカリフォルニア大学バークレー校農業資源経済学科に在籍(修士号取得)。2018年3月から2020年9月まで東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)に出向し、海洋プラスチックごみナレッジセンターを立ち上げる。アジ経済研究所に帰任後も、ERIAの海洋プラスチックごみナレッジセンターの事業についても担当している。
経済産業省廃棄物・リサイクル小委員会委員、環境省中央環境審議会特定有害廃棄物の輸出入などの規制の在り方に関する専門委員会委員、バーゼル条約の「有害廃棄物などの環境上適正な管理に関する専門家作業グルー
プ」委員、一橋大学大学院経済学研究科非常勤講師などを務める。
研究事例紹介・ごみ拾い活動実態報告(各7分)
1. SNSアプリによる市民科学と画像解析AIを組み合わせた街中ごみ量の可視化
鹿児島大学 加古真一郎 教授
2007年東海大学大学院博士後期課程単位取得退学。九州大学学術研究員、愛媛大学特任助教、鹿児島大学准教授などを経て、鹿児島大学大学院理工学研究科教授。博士(工学)。専門は海洋物理学。
東アジア縁辺海における海洋循環や海洋が励起する大気応答について、人工衛星データの解析や海洋循環モデル・領域大気モデルを用いて研究を行っている。近年は海洋プラスチック汚染の研究にも取り組み、ドローンやウェブカメラと画像解析AIの組み合わせによる海岸漂着物の高精度な定量化、スマートフォンアプリとAIを活用した街中のごみ量可視化システムの開発など、革新的な手法を用いた研究などを展開。また、鹿児島大学大学院理工学研究科の寄附講座である「街・海・宇宙からみるプラスチックごみ監視システム研究講座」において講座責任者を務めるなど、研究・教育面で重要な役割を果たす。
2. リモートセンシングとAIによる海岸漂着プラスチックごみ定量化の可能性
JAMSTEC 松岡大祐 グループリーダー
2008年愛媛大学博士課程修了。2009年から海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤務し、2022年より付加価値情報創生部門地球情報科学技術センターデータサイエンス研究グループのグループリーダー兼上席研究員。鹿児島大学大学院理工学研究科の特任教授も務める。専門は情報科学。
地球科学ビッグデータの解析や可視化に機械学習を応用する研究に取り組む。特に、深層学習を用いた気象・海洋シミュレーションデータの分析、海岸漂着ごみの検出・分類などの研究で成果を上げる。科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者(2017-2021年)、ムーンショット型研究開発事業に参加。日本シミュレーション学会研究賞(2021年)可視化情報学会功労賞(2023年)を受賞している。
3. マイクロプラスチック研究の最前線と分布状況の見える化
九州大学 磯辺篤彦教授
1988年愛媛大学大学院修士課程修了。九州大学助教授、愛媛大学教授などを経て、九州大学応用力学研究所教授。博士(理学)。専門は海洋物理学。海洋プラスチックごみ研究の第一人者として、環境省の研究プロジェクトや、国際協力機構と科学技術振興機構の研究プロジェクトでリーダーを務める。
国内では環境省・海岸漂着物対策専門家会議の座長、国外では国際科学会議・海洋科学委員会・海洋プラスチックごみ作業部会や、国連環境計画・科学諮問委員会の委員。環境大臣賞環境保全功労者表彰(2018年)、内閣総理大臣賞海洋立国推進功労者表彰(2019年)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2020年)を受賞している。
4. SNSアプリによるごみ拾い活動とSDGs達成への貢献
ごみ拾いSNSユーザー代表 中西正治
2014年より住友商事サステナビリティ推進部部長代理として、環境マネジメントシステム運用事務局、環境関連法令対応を担当。2011年6月~2014年6月、住友商事東北株式会社の非常勤取締役にも従事し、震災復興支援も担当する中で、ごみ拾いボランティアを2011年7月から開始。2019年よりごみ拾いSNSピリカも活用し、原則毎日のごみ拾いと発信を行う。
日本要員認証協会マネジメントシステム審査員評価登録センター(JRCA)登録環境マネジメントシステム主任審査員の資格を保有。日本品質保証機構(JQA)認定ISO14001主任審査員としても審査業務に従事している。
休憩(ごみ拾いSNSの使い方・画像解析に適した投稿方法)
パネルディスカッション・質疑応答(20分)
テーマ「海洋プラスチックごみ対策へのテクノロジーの活用と参加型ごみ拾い活動の課題と可能性」
(登壇者: 研究事例紹介者、活動実態報告者、モデレーター: 小島道一上席主任研究員)
お申し込みはこちら https://corp.pirika.org/seminar/form-shiminkagaku.html
●ウェビナーに参加される際は、可能な限りお部屋の空調機の適正管理、照明などの過剰使用を抑制いただき、
CO2などの温室効果ガスの排出削減・省エネルギーにご協力ください。
●廃棄物の発生抑制のため、資料の印刷・送付は行いません。
●可能であれば、ごみ拾いSNSピリカによる地域清掃・ごみ拾い活動にご協力ください。
※1 2019年6月に開催されたG20大阪サミットにて宣言
※2 Volatility (変動性)、Uncertainty (不確実性)、Complexity (複雑性)、Ambiguity (曖昧性)
■一般社団法人/株式会社ピリカについて
科学技術の力であらゆる環境問題を解決することを目指し、2011年に大学の研究室で非公式のプロジェクトとして始まり、同年に法人化。様々な環境問題の中でまず第一歩目としてごみ(特にプラスチック)の自然界流出問題に注力しています。
ごみ拾いSNS「ピリカ」は2011年にリリースし、現在132の国と地域から累計3.7億個のごみが拾われています(2024年9月25日現在)。累計ありがとう数は約3,000万、ごみ拾い活動を通じて多くのコミュニケーションが生まれています。自治体や企業による清掃活動の可視化と促進を目指す「見える化ページ」などの導入も拡大しています。
また、流出ごみを計測する共通基準を生み出すべく、路上ごみの量や分布を定量的に計測する方法として「タカノメ」、さらに独自のマイクロプラスチック流出量を調査する「アルバトロス」を開発。アルバトロス調査により、海洋・陸のごみの流出状況をオープンデータで発表し、課題発見と解決に向けた協業・連携を展開しています。流出ごみ対策や資源化などのコンサルティングも新たに開始し、科学技術の力であらゆる環境問題解決を目指すべく、様々な連携・パートナーシップを通じて事業を展開しています。
2021年第1回環境スタートアップ大賞にて「環境大臣賞」受賞。2023年第6回日経ソーシャルビジネスコンテストにて「大賞」受賞。
会社概要
社名:株式会社ピリカ(英名 Pirika, Inc.)
※ピリカはアイヌ語で「美しい」という意味の言葉です。
所在地:東京都渋谷区宇田川町2−1渋谷ホームズ1308
事業内容:ごみ拾い促進プラットフォーム「ピリカ」/ごみ分布調査サービス 「タカノメ」/ 環境問題解決のための調査・研究
設立年月日:2011年11月21日
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