埼玉工大、「もみ殻」を60%含むプラスチック製食器を共同開発
― コーワプラスの成形技術により成形、店舗で1年以上実使用、量産化・社会実装へ ―
埼玉工業大学(本部:埼玉県深谷市、学長:内山俊一、略称:埼工大、https://www.sit.ac.jp/)の工学部生命環境化学科 環境物質化学研究室、兼クリーンエネルギー技術開発センター長の本郷照久教授の研究チームと、コーワプラス株式会社(本社:埼玉県吉川市、代表:塩入英明 )は、農業副産物である「もみ殻」を60%含むポリプロピレン系プラスチック材料による環境に優しいプラスチック製食器の成形技術を産学連携により共同開発し、実用化に向けた検証を行いました。


現在、資源循環型社会の実現に向けて、石油由来プラスチックの使用量削減とマテリアルリサイクルの推進が急務となっています。特に国際情勢による原料価格の変動リスクを背景に、石油由来プラスチックの代替素材が求められています。
そこで本研究では、米の生産過程で大量に発生する「もみ殻」に着目しました。もみ殻を単なる処理対象ではなく、成形材料の主成分(60%)として活用することを目指しています。また石油由来成分の使用量を大幅に抑えることで、環境負荷低減に加え、原油供給の不安定化や価格変動による影響を軽減することが期待されます。
本材料は、重量比で、もみ殻60%、ポリプロピレン35%、相溶化剤5%から構成され、ポリプロピレンと相溶化剤を合わせた石油由来成分を40%に抑えています。コーワプラスの成形技術による射出成形を用いて、試験片やお皿などの成形品へ加工しました。
本研究では、成形品を粉砕・再成形する工程を最大4回繰り返し、4回の再成形後も引張強さを約92%、曲げ強さを約91%保持し、マテリアルリサイクルにつながる再成形性を確認しました。
本研究成果は、環境資源工学会発行の学術雑誌「Resources Processing」に受理され、掲載予定です。
【論文情報】Teruhisa HONGO et al., “Effects of Repeated Reprocessing on the Properties of a Rice Husk/Polypropylene Composite Containing 60 wt% Rice Husk”
また本材料で作製したお皿は、彩の国さいたま芸術劇場内のcafe PALETTEの店内で料理を提供する食器として1年以上使用されています。食洗機による洗浄を含む店舗での通常使用において、使用上の問題は確認されていません。
今後は本件で共同研究をしている株式会社タケエイ(本社:東京都港区、代表取締役社長:阿部 光男)と連携し、関東近郊地域のもみ殻を活用した量産化・社会実装を目指します。
〇本共同開発の要点
・ もみ殻を60%含むプラスチック材料を成形し、石油由来成分を40%に抑制
・ 4回の再成形後も引張強さ約92%、曲げ強さ約91%を保持し、マテリアルリサイクルにつながる
再成形性を確認
・ cafe PALETTEで1年以上使用され、今後はタケエイと量産化・社会実装への共同研究
技術開発の背景:石油由来成分の使用量削減と、農業副産物の高付加価値化
ポリプロピレンは、日用品、包装材、各種成形品に広く用いられる代表的な石油由来樹脂です。一方で、石油由来プラスチックの使用量削減、使用後の適切な処理、マテリアルリサイクルの推進は、資源循環社会を実現するうえで重要な課題となっています。とくに近年は、中東情勢などの国際情勢を背景として、原油やナフサ等の石油化学原料の供給・価格変動リスクが改めて意識されています。石油由来プラスチック材料をすべて直ちに代替することは困難ですが、農業副産物を材料の主成分として活用することにより、石油由来成分の使用量を抑えて、環境負荷低減と産業上の安定供給の両面で意義があります。
もみ殻は、米の生産に伴って大量に発生する農業副産物です。くん炭や畜舎敷料などとして一部利用されていますが、地域や発生量によってはさらなる有効利用が求められます。本研究では、もみ殻を単なる処理対象ではなく、成形材料の主成分として活用することに着目しました。成形材料の60%をもみ殻で構成することにより、石油由来成分の使用量を抑えながら、実用的な物性を備えた材料の開発に取り組みました。
■開発の概要と主な成果:もみ殻60%含有プラスチック材料の成形と再成形性を評価
本研究で用いた材料の配合は、もみ殻60%、ポリプロピレン35%、相溶化剤5%です。相溶化剤は、もみ殻とポリプロピレンをなじませる役割を持ちます。もみ殻のような植物由来材料は、そのままではポリプロピレンとなじみにくい性質がありますが、相溶化剤を加えることで界面を改善し、高いもみ殻含有率でも成形できる材料としました。これらの原料を二軸押出機で溶融混練してペレット化し、コーワプラス株式会社の射出成形技術で試験片およびお皿を作製しました。
さらに、得られた成形品を粉砕して再び射出成形する工程を最大4回繰り返し、再成形による物性変化を系統的に評価しました。初回成形した材料は、ポリプロピレン単体を上回る引張強さ・曲げ強さを示しました。また、4回の粉砕・再成形後も、引張強さは初期値の約92%、曲げ強さは約91%を保持し、弾性率にも大きな低下は認められませんでした。
この結果は、もみ殻を高い割合で含むプラスチック材料であっても、繰り返し成形して再利用できる可能性を示すものです。特に、剛性が重視される用途において、石油由来成分を抑えた成形材料として利用できる可能性があります。一方で、衝撃強さは再成形に伴って低下しました。そのため、強い衝撃が加わる用途ではさらなる改良が必要です。今後、用途に応じた材料設計、使用中の劣化や汚れの影響、使用済み成形品の回収・再資源化について検討を進めます。


■実使用での実証実験の実施:cafe PALETTEで1年以上使用
本材料で作製したお皿は、コーワプラスから彩の国さいたま芸術劇場内のcafe PALETTEに提供され、実際のカフェ営業において1年以上使用されています。お皿は店舗の食洗機で洗浄されながら使用されており、現時点で使用上の問題は確認されていません。この実証実験の実績から、本研究成果が研究室内の材料試験にとどまらず、日常生活の中で使用される成形品として利用できる可能性を検証したことになります。
■今後の展開:タケエイによる量産化・地域資源循環へ
今後は総合資源循環事業を展開するタケエイと連携し、もみ殻を高配合したプラスチック成形品の量産化に向けた取り組みを進めます。タケエイは、関東近郊地域農家のもみ殻を活用し、この材料の社会実装を目指します。本取り組みでは、大学の材料評価、コーワプラス株式会社の成形技術、株式会社タケエイの資源循環・量産化の取り組みを組み合わせ、地域で発生するもみ殻を環境配慮型製品として社会に戻す循環型ものづくりの実現を目指します。
■役割分担
・埼玉工業大学 本郷照久教授研究チーム:もみ殻60%含有プラスチック材料の物性評価、繰り返し再成形性の検証、材料としての有用性の学術的評価
・コーワプラス株式会社:もみ殻60%含有プラスチック材料の成形加工、お皿などの成形品の作製
・cafe PALETTE:実際のカフェ運営におけるお皿の長期使用
・株式会社タケエイ:もみ殻の資源循環およびプラスチック成形品の量産化・社会実装に向けた取り組み
参考情報
・埼玉工業大学 工学部生命環境化学科 環境物質化学研究室:https://hongolab.wordpress.com/
・埼玉工業大学 クリーンエネルギー技術開発センター:https://www.sit.ac.jp/clean_energy/
・コーワプラス株式会社:http://www.kowaplas.co.jp/
・株式会社タケエイ:https://www.takeei.co.jp/
・彩の国さいたま芸術劇場内 cafe PALETTE:https://www.saf.or.jp/arthall/facilities/playground/
■ 令和7年度彩の国埼玉環境大賞受賞
本郷教授が代表者を務める環境物質化学研究室は、埼玉県が主催する「令和7年度彩の国埼玉環境大賞」において「廃棄されるユリの茎からの和紙づくりと資源循環・環境教育の実践」の活動が評価されて大賞を受賞しました。
受賞者紹介リーフレット https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/277933/r7kankyotaisyo-jusyosya.pdf
<報道関係者からのお問い合わせ>
埼玉工業大学 法人本部 広報担当:佐藤
〒369-0293 埼玉県深谷市普済寺1690
TEL:048-585-6805(直通)
E-mail:t.sato@sit.ac.jp
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