「Gomez IRサイトランキング2023」の発表について
~「コニカミノルタ」が総合第1位を獲得!~
企業の持続的成長と中長期的な価値の向上に向けて、株主や投資家との建設的な対話の果たす役割は益々重要視されており、2023年3月には東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」や「株主との対話の推進と開示について」等の要請を公表しました。これらの要請に応える上場会社の情報発信は、統合報告書や自社ウェブサイト等を活用してこれから本格的に開始すると予想されますが、方針や実施状況等を既に現時点で自社ウェブサイトに掲載するケースも増えてきています。また、引き続きサステナビリティへの取り組みに対する社会的関心と期待は強く、日本においては、法定開示が開始した人的資本関連の情報を中心に、ウェブサイトでも情報発信の拡充が顕著です。
アフターコロナの状況において、各種説明会の動画掲載やオンライン開催等を実施する上場企業は引き続き増えており、オンラインプラットフォームを重視する企業姿勢は明確です。一方で、多くの上場企業が、情報発信やそれらに付随する業務の効率性向上に試行錯誤している様子もうかがえます。サステナビリティを主に情報発信への期待が年々加速度的に高まるなかで、統合報告書を公表する上場企業は800社を超え、企業によってはサステナビリティレポートやTCFDレポート等の専門レポートも発行しています。ウェブサイト(HTML)と統合報告書や各種レポートとの役割分担や相互活用について、より望ましい新しい在り方への模索が続いていると言えるでしょう。上場企業においては、社会的関心や制度動向を踏まえながら、効果的かつ効率的な情報発信に向けた積極的な取り組みが引き続き期待されます。
当社は国内の上場企業が提供するIRサイトの使いやすさや情報の充実度の評価を目的としてランキング調査を行っており、今回で17回目の発表となります。調査項目は「ウェブサイトの使いやすさ」「財務・決算情報の充実度」「企業・経営情報の充実度」「情報開示の積極性・先進性」の4つの切り口から、主要ユーザーである投資家の視点に基づいて設定しており、これらを当社アナリストが評価を行い、総合的に優れたIRサイトのランキングを決定します。
「Gomez IRサイトランキング2023」上位10社は、次のようになりました。
※「Gomez IRサイトランキング2023」(2023年12月21日発表)
※11位以下の総合ランキング結果はGomezのウェブサイトをご覧ください。
※前回順位は、「Gomez IRサイトランキング2022」(2022年12月22日発表)に基づきます。
【ランキング上位企業の評価理由】
コニカミノルタが総合第1位を獲得しました。
ユーザー視点での様々な工夫が凝らされており、とても使いやすいウェブサイトです。分かりやすいメニュー構成、タイトルやデザインに加え、充実した検索機能により、必要な情報にたどりつけるウェブサイトと言って良いでしょう。前年に比較してサイトパフォーマンス(表示速度)も更に一段と改善されており、全方位的に細やかな改善や改良を常に重ねている証跡と言えるでしょう。2024年4月から合理的配慮が求められるウェブアクセシビリティについても方針を掲載しています。
財務・業績情報も充実しており、財務数値、各財務諸表や財務補完情報の掲載にとどまらず、チャートジェネレータを搭載し、過去10年分のデータのダウンロードが可能です。チャートジェネレータには、注目度の高いROE、ROIC、PBR等についても掲載されています。
総合第2位は、前年に続き、伊藤忠商事となりました。
豊富な情報量とマネジメントからの強いメッセージ発信の両立を実現している優れたウェブサイトです。なかでもサステナビリティ情報については圧倒的な情報量を誇ります。東証要請を踏まえ、株主・投資家との対話における成果の具体例も既に掲載済みです。統合レポートでは、マネジメントメッセージ等主要なコンテンツはHTML化されているため、PCはもとよりスマーフォン等のデバイスでもストレスなく閲覧できます。また、充実した個人投資家向けページは構成や見せ方に工夫が多く、多くの企業の参考になるでしょう。
総合第3位はソフトバンクとなりました。
従来から人的資本に関する情報をいち早く掲載するといった先進的な取り組みが活発で、動画も積極的に掲載しています。ウェブサイト上では、株主総会や決算説明会等にとどまらず、記者会見等も含めて数多くの種類の動画を閲覧できます。業績分析では、一般的な経営成績の概況の文章の掲載ではなく、グラフとあわせて変動要因を具体的に説明しており、個人投資家・株主を対象により深く理解してもらうための工夫が見られます。英語での情報発信も大変充実しており、日本語サイトとの同期も実施済みです。
【総評とIRサイトのトレンド】
・319社を2023年「IRサイト優秀企業」に選定
「Gomez IRサイトランキング2023」のノミネート企業384社のウェブサイトのうち総合得点6.00点以上に贈られる「IRサイト優秀企業」に、本年は319社が選定されました。
本年の傾向としてまず挙げられるのは、人的資本の開示の制度化に伴い、関連項目に関する情報発信が急速に拡大した点です。また、スキルマトリックス、TCFDガイドラインに沿った情報発信に代表されるここ数年で急速に注目度が高まった情報については、引き続き高い達成率の伸びを示しています。このように、幅広く全体的に情報発信を拡充するというよりも、社会的要請や関心の高い項目について集中的に対応する傾向が顕著です。
また、統合報告書を公表している上場企業においては、報告書全体をHTML化する意欲的なケースから、PDFのみの提供に絞るケースまで様々な対応や取り組みが見られ、AIでの読み込みを考慮した対応にも違いがあります。統合報告書内のコンテンツの活用の仕方についても、ウェブサイト(HTML)と統合報告書(PDF)で同一のトップメッセージを掲載するケースや、従来は統合報告書内だけにあった社外取締役のメッセージをウェブサイトにおいてもユーザーが気づきやすい位置に個別に掲載するケース等、企業ごとの工夫が見られました。一方で、統合報告書内のコンテンツを図としてウェブサイトに張り付けるだけの処置でとどまっているケースも少なからずあり、この場合は、視認性が低いためにユーザーは文字情報として読み取れないことも多く、AI等も含めた各種検索にも対応しないリスクが高いため、改善が必要と言えるでしょう。
Cookieポリシーや同意管理への対応は、前年に続き拡大中です。
・メニューやナビゲーションに関する工夫やアクセシビリティへの配慮
企業のウェブサイトは、スマートフォンをはじめ様々なデバイスへの対応等、社会的トレンドやユーザーの使い勝手の観点から細やかな改良に継続的に取り組んでいます。
今回のノミネート企業(384社)において、ナビゲーション構造により同一階層コンテンツの横移動ができる企業は375社(97.7%)、パンくずナビゲーションにより現在位置確認と上位階層への移動ができる企業は380社(99.0%)となっており、ほぼ全ての企業が達成している状況です。さらに、半数以上の194社(51.3%)がページ下部に関連リンクを設置し、ウェブサイト内でのユーザーの回遊を促しています。
268社(69.8%)の企業は、ナビゲーションに関連する箇所において文字色と背景色のコントラストを十分に確保しており、多様なユーザーが利用するウェブサイトとしてアクセシビリティに配慮しています。一方で、2024年4月から合理的配慮が求められるウェブアクセシビリティに関連して、アクセシビリティポリシーを掲載する企業は現時点では69社(18.0%)にとどまります。
・2023年3月「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」等の東証要請に対する対応状況
株主との対話について、東証要請に対応するレベルまで具体的に掲載している企業は、現時点では31社(8.1%)ととどまりました。また、具体的な要請に応じた情報発信までは至っていないものの、ROEを掲載する企業は276社(71.9%)、BPSを掲載する企業は160社(41.7%)となっており、段階的な対応や検討状況にある企業の姿がうかがえます。また、ウェブサイトにおいて、従来のトップメッセージを活用、もしくは新たにCFOメッセージ等を設け、東証要請を念頭に自社の考え方を説明する企業が増えているのもここ最近の特徴的な傾向です。
・サステナビリティ情報の拡充
グローバルナビゲーションに、「サステナビリティ」「ESG」等のメニューを有する企業は、前年の318社(84.1%)から大幅に増えて363社(94.5%)に達しています。200社(52.1%)の企業は、サステナビリティトップページに直近3ヶ月以内のサステナビリティに関連するニュース等を掲載しており、各企業の細やかな情報発信への取り組みが確認できるでしょう。
TCFDのガイドラインに沿った情報開示を掲載している企業は214社(55.7%)となり、過半を超える企業が情報を掲載している状況です。スキルマトリックスを掲載している企業は160社(41.7%)と前年から30社以上増加する結果となっていますが、一方で各社外取締役・独立役員の具体的な選任理由を掲載する企業が微減となっています。
人的資本に関連する情報は、先行して情報の掲載が進んでいる女性管理職比率(時系列データ)の220社(57.3%)を筆頭に、男性の育児休業取得率が173社(45.1%)、男女間の賃金比が78社(20.3%)と情報掲載が急速に拡大しています。
・ウェブサイトを活用した株主総会や個人投資家向けセミナー等に関する情報発信
アフターコロナにおいては、ウェブサイトを代替・補完的に一時活用する従来の傾向から、より積極的に活用しようとする明確な企業姿勢が見られます。例えば、コロナ渦において株主総会の動画配信を実施する企業は大幅に増加してきましたが、本年も157社(40.7%)と、前年よりさらに10社増加する結果となりました。さらに、41社(10.7%)の企業は、質疑応答のパートも動画配信しています。オンラインでの個人投資家向けセミナーを開催する企業も、前年の120社(31.7%)から129社(33.6%)と増加しています。
・英語による情報発信の充実
プライム市場銘柄を中心に英語による情報発信の強化が期待されており、英語による情報発信についてはほぼ全ての評価項目で達成企業数が微増となっています。なかでも、サステナビリティ情報の英語での情報発信が進んでおり、グローバルナビゲーションに「Sustainability」等を有する企業は、前年の323社(85.4%)から354社(92.2%)となりました。また、Corporate governanceについて掲載している企業は360社(93.8%)にのぼります。TCFDガイドラインに沿った情報掲載をしている企業は、前年の161社(42.6%)から、本年は195社(50.8%)と過半を超える結果となりました。
【トピックス】
(1)IRサイト優秀企業2023
IRサイト優秀企業:金賞(全39社)
IRサイト優秀企業:銀賞(全141社)
IRサイト優秀企業:銅賞(全139社)
Gomezのウェブサイトをご覧ください。
(2)ランキングアップ企業
今回のIRサイトランキングにおいても、ウェブサイトのリニューアル、コンテンツの拡充や新規機能の追加等により、前回調査と比較して格段に充実したIRサイトが数多く見られました。そのなかでも特に大きくスコアを伸ばした企業は次の通りです。
前回調査からスコアを大きく伸ばした企業
(3)業種別ランキング第1位企業
※前回調査から第1位企業の変更があった業種
【調査概要】
【評価方法】
【Gomezについて】
Gomezは、インターネット上で提供されるサービスを中立的な立場から評価・分析し、インターネット利用者の利便性向上とEコマース市場などの拡大に貢献するための情報提供・企業向けのアドバイスを目的とし、消費者・企業双方に対して利益となる情報を掲載しています。
Gomezを運用するゴメス・コンサルティング本部は、BBSec が2021年7月にモーニングスター株式会社より事業継承しております。
【BBSecについて】
BBSecは、ITセキュリティの診断・運用・保守・デジタルフォレンジックを手掛けるトータルセキュリティ・サービスプロバイダーです。「日本のITネットワークを世界一堅牢にする」をコンセプトに、2000年11月の設立以来、高い技術力と豊富な経験、幅広い情報収集力を生かし、大手企業、通信事業者から IT ベンチャーに至るまで、様々な企業のITサービスをセキュリティ面でサポートしています。
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