「バイオ炭」の茶園散布による温暖化対策効果の試験を開始
宮崎県と鹿児島県において地域資源の循環農業を推進。茶の生産性向上効果も併せて検証し、「バイオ炭」の有効性を評価。
近年、気候変動の影響や生物多様性、SDGsをはじめとする環境への意識の高まりを受けて、社会全体を持続可能なものにしていくことが求められています。こうした中、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するため、「みどりの食料システム戦略」を推進しており、農林水産業に伴う温室効果ガスの放出や、化石燃料由来の肥料の使用量を減らすといった環境負荷の低減策を掲げています。
この度、地域資源の循環による環境配慮型農業の確立に向けて、伊藤園とシン・エナジー、くしま木質バイオマス、堀口園及び鹿児島堀口製茶の5社は共同で、宮崎県串間市における未利用木材を用いたバイオマス発電の副産物として産出する「バイオ炭」を、隣接する鹿児島県志布志市にある茶産地育成事業の茶園で試験的に散布し、温暖化対策効果を評価する試験を2023年春より開始しました。
本試験は、くしま木質バイオマスが宮崎県串間市の大生黒潮発電所において産出する難分解性の炭素を含む炭「バイオ炭」を、堀口園及び鹿児島堀口製茶が展開する志布志市にある約50haの茶園で試験的に散布して影響を評価します。また、温暖化対策効果のみならず、茶園の土壌改良効果(透水性、保水性、保肥性、通気性など)を通じた茶の収穫及び品質に対する影響を評価し、茶の生産性向上にも貢献することを検証します。
「バイオ炭」の農地施用は、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」において、地球温暖化対策の手法として農地投入技術の開発を推進されている取組みです。関係5社は、この取組みを通じて地域の資源循環を推進するとともに、環境配慮型農業の確立による持続可能な茶農業の実現を目指してまいります。
(※)木炭や竹炭などが該当し、具体的な定義としては、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」とされています。(2019年改良IPCCガイドラインに基づく)
〇「バイオ炭」の特徴
「バイオ炭」は、木や竹など生物由来の資源(バイオマス)を加熱して炭化したものです。バイオマス資源が吸収したCO2を炭の中に閉じ込めるため、大気中への排出を抑える効果があります。また、「バイオ炭」は多孔質構造であるため、堆肥などと一緒に土壌に混ぜ合わせると、農作物の根の生育促進や肥料成分の吸収量の増加等が期待でき、土壌改良に役立ちます。
〇「バイオ炭」の茶園散布による温暖化対策効果試験の概要
くしま木質バイオマスは、宮崎県串間市の大生黒潮発電所において県内の未利用木材(スギ、ヒノキ等)を用いたバイオマス発電の副産物として難分解性の炭素を含む炭「バイオ炭」を産出しており、同発電所の運用管理と保守点検を行うシン・エナジーと協同して「バイオ炭」の農地施用の取組みを進めています。
本試験では伊藤園が中心となり、上述の「バイオ炭」を同発電所近隣の堀口園及び鹿児島堀口製茶が展開する鹿児島県志布志市にある茶産地育成事業の茶園で試験的に散布し、茶園における温暖化対策効果を評価します。また、施肥的効果、副次的効果などを合わせて検証し、地域資源の循環体系構築と環境配慮型農業の確立による持続可能な茶農業の実現を目指します。
関係5社の概要
伊藤園
お茶のリーディングカンパニーとして、茶産地育成事業を通じて持続可能な茶農業に貢献する技術の普及を目指す。
くしま木質バイオマス
宮崎県串間市所在、未利用木材から燃焼性ガスを抽出し発電する大生黒潮発電所を運営しており、副産物として「バイオ炭」を産出。
シン・エナジー
兵庫県神戸市所在、大生黒潮発電所の施工やメンテナンス実施、「バイオ炭」の利活用の推進協力。
堀口園及び鹿児島堀口製茶
鹿児島県志布志市所在、伊藤園の契約農家で大規模茶園を経営。どちらも大生黒潮発電所から車で30分程度。
【ご参考】伊藤園が取組む茶農業の技術開発
伊藤園は、茶農業の技術開発と普及に向けたロードマップを策定し、持続可能な茶農業に貢献する技術の普及を目指しています。
茶産地育成事業ホームページ「茶農業の技術開発」
URL:https://www.itoen.co.jp/tea_producing/tech/
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