自治体のスポーツ担当部署、「首長部局」への移管が進む。運動部活動の地域連携・地域移行は複数部署で取り組む傾向。
1,187自治体のスポーツ行政の実態調査 -スポーツ振興に関する全自治体調査2024-
「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する笹川スポーツ財団(東京都港区赤坂 理事長:渡邉 一利 以下、SSF)は、「スポーツ振興に関する全自治体調査2024」の調査結果を発表しました。
スポーツ庁設置から約10年が経過し、社会情勢の変化に伴うスポーツ施策の転換がみられ、スポーツ行政の機能的・効果的な推進が期待されています。本調査は地方自治体のスポーツ施策の実態を把握し、各地域におけるスポーツ推進の一助となるデータの収集を目的に実施しました。1,187自治体から回答を得た調査結果では、スポーツ担当部署の実態やスポーツ推進(振興)計画の重点テーマなどが明らかとなりました。また、2015年調査との比較やスポーツ行政の喫緊の課題である運動部活動の地域連携・地域移行の進捗状況なども調査しています。
▼公式ウェブサイト
https://www.ssf.or.jp/thinktank/regional/municipality_2024.html

<調査結果のポイント>
【スポーツ担当部署】
● 都道府県:「首長部局」87.2%(2015年調査44.7%)、「教育委員会」12.8%
● 市区町村:「首長部局」22.7%(2015年調査15.2%)、「教育委員会」77.1%
● 障害者スポーツは、都道府県、市区町村ともに障害福祉部署からスポーツ振興部署へ統合・移管が進む
【スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲット】
● 「子どものスポーツ」が都道府県95.7%、市区町村84.8%ともに最多
【休日の運動部活動の地域連携・地域移行の取り組み状況】
● 担当部署は6割強の市区町村で2部署以上、全国の3割程度が地域連携・地域移行に取り組む
※首長部局:地方公共団体の組織の中で、首長の指揮監督を直接受け、行政業務を担う部局。人事権は一般職員に及ぶ。一方で、教育委員会や警察・消防部局などは首長部局には含まれず独立した組織として位置づけられる。
<研究担当者コメント>
近年の地方自治体におけるスポーツ施策は、スポーツによる交流人口の増加や健康増進などスポーツ以外を所管する部署との連携が必要な取り組みが増えている。また、調査結果をみるとスポーツ推進計画の重点テーマは子どものスポーツが最多であったが、住民の健康増進や施設・環境の整備、高齢者・女性のスポーツなど取り組むべき施策は多岐にわたる。スポーツ担当部署の首長部局への移管は、部署間連携の促進や複数部署が関わる際の迅速な意思決定など行政運営の効率化につながり、効果的な施策の展開を可能にすると考えられる。
さらに運動部活動の地域連携・地域移行では、6割を超える市区町村で2つ以上の部署が担当していた。地域連携・地域移行を実施中の市区町村は3割、検討中を含めると8割となり、そのうち半数近くは地域のスポーツクラブが主体となる運営を検討している。現在のスポーツ行政には、限られた人員で効果的な事業の実施が求められている。自治体が地域で実現したいスポーツのあり方を明確にし、行政内外を問わず最大限の効果が期待できる連携先の検討が重要である。
【笹川スポーツ財団 シニア政策オフィサー 鈴木 貴大】
<主な調査結果>
■スポーツ担当部署
2024年調査の都道府県は「教育委員会」が12.8%、「首長部局」が87.2%、市区町村は「教育委員会」が77.1%、「首長部局」が22.7%であった。2015年調査の都道府県では「教育委員会」が55.3%と約半数を占めたが、2024年調査では9割近くが「首長部局」であり、都道府県のスポーツ担当部署は教育委員会から首長部局へ移管した。
市区町村では「教育委員会」が2015年調査より7.2 ポイント減少、「首長部局」が7.5ポイント増加した。市区町村の人口規模別にみると、「1万人未満」では「教育委員会」が99.0%と、ほぼすべての自治体で教育委員会がスポーツ行政を担っている現状が明らかになった。「50万人以上」の自治体では「首長部局」が92.3%であった。
図表1. スポーツ担当部署(都道府県/市区町村)

図表2. スポーツ担当部署(市区町村・人口規模)

障害者スポーツの主たる担当部署は、都道府県では「首長部局(スポーツ関連)」57.4%、「障害福祉関連部署」38.3%、「教育委員会(スポーツ関連)」と「その他」が2.1%であった。市区町村では「教育委員会(スポーツ関連)」42.7%、「障害福祉関連部署」36.5%、「首長部局(スポーツ関連)」12.7%であった。2015年調査と比較すると、「障害福祉関連部署」の割合が都道府県では89.4%から51.1 ポイント、市区町村では54.5%から18.0ポイント減少した。約10年で障害者スポーツの主たる担当部署は、障害福祉からスポーツ振興部署への統合・移管が進んでいる。
■スポーツ担当部署の専任職員数
スポーツ担当部署の専任職員数をみると、都道府県では「20人以上」が63.8%と最も高く、「10~19人」が27.7%、「5~9人」が6.4%、「3~4人」が2.1%となった。市区町村では「1~2人」「3~4人」「5~9人」がそれぞれ3割弱であり、「0人」を含めると約9割の自治体が10人未満であった。スポーツ担当部署の専任職員数は都道府県、市区町村ともに2015 年調査から大きな変化はみられなかった。
■スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲット
スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲットは、都道府県、市区町村ともに「子どものスポーツ」が最も高く、それぞれ95.7%、84.8%であった。都道府県では「競技力の向上」91.5%、「障害者のスポーツ」85.1%が続き、市区町村では「スポーツ施設・環境の整備」が77.4%、「住民の健康増進」が76.8%で高い割合を示した。「競技力の向上」は都道府県では2番目に高く91.5%、市区町村では7番目の53.6%、「住民の健康増進」は市区町村では3番目の76.8%、都道府県では同率7番目の59.6%であり、都道府県と市区町村で重点テーマ・ターゲットに違いがみられた。
図表3. スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲット(都道府県/市区町村:複数回答)

■運動部活動の地域連携・地域移行の担当部署
地域連携・地域移行の主たる担当部署をたずねたところ、都道府県、市区町村ともに「教育委員会の学校関連部署」が最も高く、それぞれ46.8%、60.4%であった。「教育委員会のスポーツ関連部署」は都道府県、市区町村ともに3割程度であり、合計すると都道府県では78.7%、市区町村では89.4%となり、多くの自治体で地域連携・地域移行は教育委員会が主導している。
地域連携・地域移行に関わりのある部署数は、都道府県では「1部署」が21.3%、「2部署」が61.7%、「3 部署以上」が17.0%であった。市区町村は「1部署」が33.2%、「2部署」が62.3%、「3部署以上」が4.5%であった。都道府県、市区町村ともに「2部署」が最も高く6 割以上の自治体が複数の部署で地域連携・地域移行に取り組む実態が明らかとなった。「2部署」の主な組み合わせは「教育委員会の学校関連部署」と「教育委員会のスポーツ関連部署」、「教育委員会の学校関連部署」と「首長部局のスポーツ関連部署」の2つが多い。
図表4. 運動部活動の地域連携・地域移行の担当部署数(都道府県/市区町村・人口規模)

■休日の運動部活動の地域連携・地域移行の取り組み状況
休日の運動部活動の地域連携・地域移行の取り組み状況をみると、都道府県では「地域のすべての公立中学校で実施している」8.5%、「地域の一部の公立中学校で実施している」70.2%、「現在検討中である」19.1%、「実施しない」2.1%であった。市区町村全体では「地域のすべての公立中学校で実施している」18.9%、「地域の一部の公立中学校で実施している」14.1%と、両者を合わせる33.0%となり、全国の3割程度の市区町村が地域連携・地域移行に取り組んでいる状況が確認できる。
<スポーツ振興に関する全自治体調査 2024 調査概要>
【調査対象】全国すべての地方自治体におけるスポーツ担当部署(都道府県47件、市区町村1,741件、合計1,788件)
【回収率】回収数1,187(回収率66.4%)
都道府県:回収数47(回収率100.0%)、市区町村:回収数1,140(回収率65.5%)
【調査時期】2024年8月16日~2024年9月30日
【調査方法】郵送法による質問紙調査。調査票回収は、インターネットおよび電子メール、FAX、郵送にて実施。
【調査項目】スポーツ担当部署、スポーツ推進計画、スポーツ指導者バンク、スポーツボランティアバンク、 運動部活動の地域連携・地域移行、小学校体育、公共スポーツ施設など
【調査体制】鈴木貴大 笹川スポーツ財団 政策オフィサー
松下由季 笹川スポーツ財団 シニア政策オフィサー
宮本幸子 笹川スポーツ財団 政策ディレクター
吉田智彦 笹川スポーツ財団 シニア政策ディレクター
※肩書は調査当時のもの
笹川スポーツ財団「行動するスポーツシンクタンク」
公益財団法人 笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ分野専門のシンクタンクです。国、自治体のスポーツ政策に対する提言策定や、スポーツ振興に関する研究調査、データの収集・分析・発信、自治体との共同実践研究などを通し、スポーツで社会課題を解決します。
理事長 : 渡邉 一利
所在地 : 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
設立 : 1991年3月
目的 : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容:
・生涯スポーツ振興のための研究調査
・生涯スポーツ振興機関との連携事業
・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL : https://www.ssf.or.jp/
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