GDP影響に2.3ポイント差、データ主権の選択肢【A.T. カーニー】

自由な流通モデルはGDP年0.6%押し上げ、制限モデルは年1.7%縮小の可能性

KEARNEY

A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、論考「データ主権の新潮流:自由なデータ流通と国家ガバナンスの均衡」を公開しました。本稿では、デジタル経済とAI活用が拡大する中で、各国政府が自国データへの統制を維持しながら、国境を越えるデータ流通の便益をどう確保すべきかを考察しています。

本稿では、データ主権を実現する二つのモデルとして、保存方法に一定の条件を付しつつ越境データ流通を認める「自由なデータ流通モデル」と、越境移転により厳しい制約を課す「制限的データ流通モデル」を比較しています。自由なデータ流通モデルはGDPを年率0.6%押し上げ、雇用率を約1%高める可能性がある一方、制限的データ流通モデルはGDPを年率1.7%縮小させ、雇用率を約2%低下させうるとされています。本文記載の数値から単純計算すると、両モデルのGDP影響には2.3ポイントの開きがあります。

GDP影響は2.3ポイント差:自由な流通モデルは年0.6%押し上げ、制限モデルは年1.7%縮小も

本稿では、データ主権を、国家が国境の内外で自国データに対して管轄権を行使する能力と整理しています。その実現方法として、データ移転を一定の条件下で認める「自由なデータ流通モデル」と、越境移転に厳しい制約を課す「制限的データ流通モデル」の二つを比較しています。

自由なデータ流通モデルは、デジタル貿易、生産性、イノベーションの改善に資し、GDPを年率0.6%押し上げ、雇用率を約1%高める可能性があるとされます。一方、制限的データ流通モデルは、国際貿易、生産性、対内直接投資の縮小などと結び付くとされ、GDPを年率1.7%縮小させ、雇用率を約2%低下させうるとされています。

背景には、過去20年間で、貿易やサービス提供が国境を越えたデータ共有・処理に依存するようになったことがあります。さらに、AIの開発・実装には多様で大規模なデータセットが重要な投入要素となるため、国境を越えるデータ流通を制限するローカライゼーション措置は、AI技術の進歩を意図せず阻害しうるとされています。

8つの便益・8つの影響:FDI1.7〜3.4%減、制約性1ポイントで価格0.6%上昇も

自由なデータ流通モデルを採る国は、企業による海外市場向けサービス開発、海外イノベーターや研究者との協働、サービス価格の低下、サービス品質・利用可能性・多様化の向上、対外政策や外交関係の改善など、八つの便益を享受しうるとされています。たとえば、データ制約性指数で「やや制約的」から「開放的」へ1ポイント動くと、関連分野の価格は0.6%低下しうるとされています。

一方、制限的データ流通モデルでは、データに依存する遠隔サービスへの地場企業のアクセス、サービスの手頃さ、クラウド市場の魅力、グローバルなセキュリティ基準・プライバシー基準への適合、サービスの多様化、国際協力、通商関係、対外政策・外交関係などに影響が及びうるとされています。制限的データ流通モデルでは、対内直接投資が1.7〜3.4%減少する可能性が高く、国境を越えるデータ移転に大きく依存する分野は、長期で3.5%縮小しうるとされています。また、データ制約性指数が1ポイント変わると、関連分野の価格は0.6%上昇しうるとされています。

本文では、制限的データ流通モデルにも一定の便益があるとしつつ、対象データの類型や国の福祉・安全保障との関連性に応じて、必要な制度設計は異なるとしています。たとえば、両モデルにおいて機密政府データのローカライゼーションが求められる一方、民間部門の個人データや専有データについては、自由なデータ流通モデルでは適切な法的措置の下で越境流通しうるのに対し、制限的データ流通モデルでは通常ローカライズされるとされています。

3つの判断軸と5つの実装策:制限は少数ユースケースに絞る設計へ

各国がデータ主権モデルを選択する際には、国家ビジョンと国家目的、エコシステム成熟度、政治的考慮という三つの要因を検討する必要があります。国家ビジョンには、デジタル経済の成長、対内直接投資の位置づけ、将来の規制対応力、国家安全保障上の目的が含まれます。エコシステム成熟度には、市場規模、ICTインフラ、データセンター能力、国内クラウドサービスの供給力などが含まれます。

本稿では、自由なデータ流通モデルが、自国データに対して管轄権を行使する能力を維持しつつ、越境データ流通の便益を可能にする均衡点になりうるとの見方を示しています。自由なデータ流通モデルを導入しようとする政策立案者と政府には、信頼を伴う自由なデータ流通を可能にし、国境を越えるデータ移転制限を国家安全保障上の利益や特定の国家目的に資する少数の固有ユースケースに限定することが求められます。

加えて、個人データ保護法の整備、知的財産保護の強化、サイバーセキュリティとレジリエンス基準の執行、志を同じくする国々との国際協力枠組みの構築も、検討すべき対応として挙げられています。これらは、越境データ流通の便益を確保しながら、プライバシー保護、知的財産保護、サイバーセキュリティ、法執行目的でのデジタル証拠へのアクセスといったデータ主権上の目的を支えるものです。

 

-       論考について

 論考名:「データ主権を読み解く:越境データ流通と国家の統制をどう両立するか」   

URL: https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/demystifying-data-sovereignty 

 

-       監修者

滝 健太郎 シニアパートナー

東京大学経済学部経済学科を卒業後、A.T. カーニーに入社。約10年のコンサルティング経験を有する。通信・金融機関・消費財を中心に、戦略~新規事業・R&D~M&A~マーケ・営業~オペレーション~コスト~人事・組織など、経営に係わる幅広いテーマを手掛け、特に、全社レベルでの大規模デジタルトランスフォーメーションを得意とする。

 

A.T. カーニーについて

A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:KEARNEY)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。

https://www.jp.kearney.com/

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会社概要

A.T. カーニー株式会社

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URL
https://www.jp.kearney.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー23階
電話番号
03-6890-5001
代表者名
針ヶ谷 武文
上場
未上場
資本金
-
設立
1926年09月