NISAの認知・利用事情 ~NISA元年を終えて世間の浸透度は?~
三井住友トラスト・資産のミライ研究所がNISAに関するアンケート結果を公表
三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(所長:丸岡 知夫)(以下、ミライ研)は、1万人(全国の18歳~69歳)を対象とした独自アンケート調査を2025年1月に実施しました。この調査をもとに、2024年より始まった新しいNISAに関する分析を行いました。
1.NISA口座数は増加傾向、2024年は急伸
2022年11月に岸田内閣から発表された「資産所得倍増プラン」では、柱の1つに「家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる NISA の抜本的拡充や恒久化」が打ち出されました。ここでは、NISA口座数を当時の1,700万口座から、5年間で3,400万口座に倍増させる目標が掲げられています。
2024年に「新しいNISA」が始まり、1年が経過しました。口座数はこの1年で約2,125万口座から約2,560万口座へ約436万口座(約17%)増加し、国民の「貯蓄から投資へ」のマインドチェンジが伺えます。
【図表1】 四半期ごとのNISA口座数の推移(2019年3月末~2024年12月末※)

※2023年までのNISAは一般NISAとつみたてNISAの口座数の合計。2024年12月末は速報値
出所:金融庁HP 利用状況調査:NISA特設ウェブサイト:金融庁 (fsa.go.jp)
ミライ研では、2025年1月にアンケート調査を実施し、現在のNISAの「口座数」だけでは見えない、国民のNISAに対する認知・利用意向がどのようになっているのか、またこの1年でどのように変化したのかを分析しました。
2.資産形成制度としてのNISAの認知度は?
まず、「資産形成のための制度」としての認知度を確認しました。
1万人のアンケート回答者に「制度として知っているもの」を複数回答で選択いただいたところ、【図表2】のとおり、NISA制度の認知度が6割と圧倒的な結果になりました。資産形成の制度における認知度は、NISA制度がトップ、次いでiDeCo(個人型確定拠出年金)、財形・社内預金等が続いています。一方で、どの年代においても「この中にはひとつもない」との回答が3割程度存在し、認知度の格差がありそうなことが伺えます。
【図表2】 「資産形成のための制度」の認知度(複数回答可)

(出所)特に出所を示していない場合、ミライ研「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)よりミライ研作成
3.この1年でNISAの認知度や利用状況はどう変わった?
さて、新しいNISAが始まって以降、メディア等において「NISA」に関するテーマの露出も増加していますが、この1年でその認知度ならびに利用状況はどのように変化したのでしょうか。
ミライ研が、2024年1月に実施した調査データと時系列で比較すると、NISAの「認知度」は、全体で14.3%の伸びとなり、どの年代も10%以上の上昇、「利用者」は7.0%の上昇となりました【図表3】。年代別では、特に60代の認知・利用が1年で最も伸びていることが分かります。すでに利用者が多かった30代は、相対的に伸びが少ないものの、利用率は依然トップの状態です。
【図表3】 NISA制度を「知っている」「利用している」割合の時系列比較(2024年-2025年)

4.およそ3人に1人が、NISAを“利用している人”もしくは“利用意向がある人”
では、現在NISAを利用していない方の「利用意向」まで含めるとどうなるでしょうか。
同調査では、NISAを利用していないと回答した人に対し、「NISA制度を今後利用しますか」と聴取しました。すると、「利用済み+利用意向者」の総和は伸びている(30.8%⇒34.1%)ことが分かりました。
一方で、「利用しない・おそらく利用しない」旨の回答者も顕著に伸びている(29.0%⇒36.7%)ことが分かります。NISAを利用するのかしないのか、この1年である程度はっきりさせた人が相当数いることが伺えます。
【図表4】 NISAの利用者と未利用者における利用意向の時系列比較(2024年-2025年)

さらに、このデータを年代別に分析すると、18-29歳以下のNISA検討とNISA利用が最も進み、かつ、60代の「利用しない」層が顕著に多いことが分かりました【図表5】。
【図表5】年代別:NISAの利用者と未利用者における利用意向の時系列比較(2024年-2025年)

5.金融教育の経験やライフプランニングがカギ?
次に、保有する金融資産額と利用率・利用意向をクロス分析しました【図表6】。
これを見ると、18-29歳の一部を除き、どの年代も「資産額」が多いほど「NISA利用者/利用意向者」は多い傾向であることが分かります。年代間を比較すると、若年層は資産が少なくてもNISA利用が進んでいます。図表6の左側のグラフを見ると、資産額500万円未満の18-29歳の利用率と、資産額1,000万円~2,000万円の60代の利用率がほぼ同じであることが分かります。この傾向は、図表6の右側のグラフのとおり、「利用意向者」を含めても同様となっています。
【図表6】年代別:保有金融資産ごとのNISA利用者/利用意向者割合

もう一つ、顕著に差が出ているのが、「金融教育の受講経験」や「ライフプランニング」です。
【図表7】のとおり、どこかしらの“場”で、金融教育を受けた経験がある人は、NISAの利用済+利用意向ありの割合が、未経験者に比べて大きくなっています。特に、実際にNISAを活用できる年齢に達しているであろう、「短大生・大学生・大学院生・専門学校生」や「社会人」のタイミングで教育を受けた層は、NISA利用率が顕著に高い傾向がみられます。
また、【図表8】のとおり、「ライフプランを立てている人」は、そうでない人に比べて顕著にNISAの活用が進んでいます。自身の長期的な“家計のあり姿”を描くことで、そのプラン実現に向けたアクションとして「NISAを活用した資産形成」が選ばれているものと推察されます。
【図表7】金融教育を受けた時期(複数回答可)とNISA利用者/利用意向者割合

【図表8】ライフプランを立てている度合いとNISA利用者/利用意向者割合

2024年の「NISA元年」を終えて、国民のNISAに関する意識や行動が大きく変化したことが分かりました。
ここまでの調査結果から考察すると、NISAへの関心は、金融リテラシー関連の情報に接する機会を持つこと、ならびに将来のことに目を向けることが、大きなきっかけの一つになっていることが伺えます。
豊かな人生を送るにあたり、NISAの利用は「マスト」ではありませんが、お金に関する“学び”を得ることや、自身の将来設計を立ててみることが、「人生の経営者」として長期で有利な資産形成制度を活用するマインドの醸成につながっているものと推察されます。
◆上記の記事に加え、より多くのデータをまとめたミライ研のアンケート調査結果
「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)より
NISAの認知・利用事情 ~NISA元年を終えて、世間への浸透度はどう変化した?~
を資産のミライ研究所のHP(https://mirai.smtb.jp/category/report/2944/)に掲載しています。
是非、ご覧ください。

【本件調査概要】
(1)調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)
(2)調査対象:全国の18~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
(3)調査方法:WEBアンケート調査
(4)調査時期:2025年1月
(5)サンプルサイズ:11,435
(6)備考:端数処理の関係上、割合については合計で100%とならない場合があります
■記事内容、アンケート結果に関する照会先
三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所(清永)
E-MAIL:mirai@smtb.jp
すべての画像
- 種類
- 調査レポート
- ビジネスカテゴリ
- 銀行・信用金庫・信用組合証券・FX・投資信託
- ダウンロード