3つの手段を不況局面で比較、半導体企業に資産売却を含むキャッシュ創出を提言 【A.T. カーニー】
運転資本と回復局面への柔軟性確保へ、5つのデータと3つの評価手法で売却価値を最大化
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、半導体業界のキャッシュ創出に関する論考「半導体企業は、不況局面でどのようにキャッシュを創出できるのか」を公開しました。
本稿では、インフレの影響によりテレビやスマートフォンなど高価格帯の電子機器需要が落ち込む中、半導体企業が景気後退局面で十分な運転資本を確保し、回復局面で迅速に動く柔軟性を維持するためのキャッシュ創出手段を整理しています。
具体的には、資本構成に関する手段、オペレーション改革、トップライン成長という3つの選択肢を比較し、特に高い資本需要を持ち、まとまった初期キャッシュを必要とする企業にとっては、資産売却を含むリキャピタライゼーションが重要になり得ると指摘しています。
3つの手段を比較、資産売却は初期キャッシュ確保の選択肢に
半導体企業がキャッシュを創出する選択肢として、本稿は、負債・株式発行などの資本構成に関する手段、効率性向上を狙うオペレーション改革、新製品やテクノロジーライセンスを通じたトップライン成長の3つを挙げています。
負債発行や株式発行は迅速にキャッシュを確保できる一方、負債ではレバレッジ比率の上昇、株式では持分希薄化を伴います。もう一つの選択肢である設備、工場、事業ユニットの売却には、完全売却や一部売却、ジョイントベンチャー化など複数の形態があります。
多くの有形資産を保有する半導体業界では、非金融資産の売却が特に有望な手段になり得ます。ただし、景気後退局面で重要なのは、売却対象から最大限の価値を引き出すことであり、地政学的リスクを理由に資産を売却する場合でも同じ視点が必要です。
図表1 半導体企業が不況局面で検討すべき3つのキャッシュ創出手段

オペレーション改革とトップライン成長は有効だが、現金化には時間を要する
オペレーション改革では、ダイの高密度化による生産能力の向上、より安価な原材料の活用、歩留まりを高める製造イノベーションなどにより、高価な設備投資への依存度を下げられる可能性があります。
また、後工程の受託製造業者との関係を活用し、自社の設備投資や運転資本負担の一部を、取引量やマージンを提供する見返りとしてパートナーに移転できれば、地理的分散などの戦略目標と同時にキャッシュ創出を進める手段となり得ます。
トップライン成長は、キャッシュフローを増やす最も健全な方法である一方、実際の改善には時間がかかり、新製品が必ず収益化する保証もありません。コスト最適化も成果は比較的予測しやすいものの、現金化までには時間を要するため、初期キャッシュを必要とする企業では資産売却の検討が重要になります。
売却価値の最大化には5つのデータと3つの評価手法の組み合わせが必要
資産売却を検討する企業にとって第一歩となるのは、売却対象に関する包括的なデータの収集です。本稿は、工場を例に、工場パフォーマンス、市場環境、知的財産、マネジメント、ケイパビリティという5つのデータ領域を示しています。
工場単位の損益計算書や可能であれば貸借対照表は、収益性や財務健全性の把握に役立ちます。需給動向や技術進展、競争環境、地政学的動向は成長ポテンシャルを左右し、特許・商標、経験豊富な経営チーム、工場規模や使用技術も価値評価の重要な要素になります。
評価にあたっては、DCF分析、マルチプル法、資産ベース評価という3つの手法を相互に検証することが推奨されています。工場の状況、市場環境、利用可能なデータに応じて、特定の手法が評価レンジのアンカーとなり、他の手法が補完的な指針を与える役割を果たします。
図表2 資産売却価値の最大化に向けて収集すべき5つのデータと3つの評価手法

‒ 論考について
論考名:「半導体企業は、不況局面でどのようにキャッシュを創出できるのか」
‒ 監修者
西川 覚也 シニアパートナー
東京大学工学部卒。特許事務所を経て、A.T. カーニー入社。現在の技術軸に新しい技術軸を足して、需要を創造するM&A戦略、IoTを梃にした新しい価値の創造(ビジネスモデル、オペレーションモデル)を支援。
竹井 潔 プリンシパル
MITスローン経営大学院修了(MBA)。東芝(現キオクシア)半導体事業の経営企画部門で、事業戦略立案や海外企業との提携交渉に従事したのち、KEARNEYに入社。通信、ハイテク領域を中心に、全社戦略、事業ポートフォリオ変革、新事業開発、M&A戦略等のテーマを手掛ける。クロスボーダーのプロジェクトリードが可能。経済産業省 JAXA部会委員。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com
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