カリフォルニアでeコマースは医療の25倍、医療起点のドローン物流実装を提言 【A.T. カーニー】
医療配送で社会受容性を高め、eコマース需要で稼働率90%超を目指す余地
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、先進航空モビリティ(AAM)と配送ドローンによる物流変革に関する論考「医薬品から日用品まで――ドローンはいかに物流を変革し得るか」を公開しました。
本稿では、世界人口の約60%が都市に居住する一方、農村コミュニティでは医療などのサービスへのアクセス確保が課題となる中、小型配送ドローンが都市と農村を効率的につなぐ手段となり得ることを示しています。
ドローン配送の実装では、医療配送によって社会受容性を高め、緊急性の低いeコマース配送で余力を埋める統合運用が鍵となります。カリフォルニア州では、年間の医療ドローン対応可能市場が約2億7,500万ドルと評価される一方、eコマース全般は70億ドルと25倍の規模に上り、規模化に向けた組み合わせの重要性が示唆されています。
世界人口の約60%が都市居住、小型ドローンが物流変革の先陣に
現在、世界人口の約60%が都市に居住しており、わずか60年前には都市に住む人が世界人口の3分の1にすぎなかったことと比べると、都市化は大きく進んでいます。都市の急成長は経済発展や教育機会に寄与する一方、交通渋滞やインフラ負荷を生み、人口減少に直面する農村では医療などのサービスへのアクセスが課題となっています。
こうした課題に対し、電動垂直離着陸機(eVTOL)や配送ドローンを含む先進航空モビリティ(AAM)が、まず物流、次いで旅客輸送を変革する可能性があります。特に小型ドローンは、機体が小さいため安全リスクを抑えやすく、大半の荷物を配送できることから、荷物配送の先陣を切る公算が大きいとされています。
すでに小型ドローンは、医療物資、スペアパーツ、時間制約の強い書類など、緊急性の高い物品を配送できることを示しています。今後の課題は、こうした用途をeコマースへ広げ、需要の山谷をならしながら、社会受容性とユニットエコノミクスを両立させることです。
図表1 約60%が都市居住、医療配送を起点にeコマースへ拡張

カリフォルニアではeコマースが医療の25倍、統合運用が規模化の鍵に
医療配送とeコマース配送を組み合わせる意義は、市場規模の差にも表れています。本稿では、AAMの有望市場であるカリフォルニア州を例に、同州の年間医療ドローン対応可能市場を約2億7,500万ドルと評価しています。一方、eコマース全般は70億ドルであり、医療配送の25倍の規模です。
カリフォルニア州は、交通密度の高さ、海岸沿いで海上飛行が可能なことによる相対的に低い安全リスク、20の稼働中の臓器移植病院を有することから、AAMの潜在力が高いとされています。医療配送は人命を救う、または大きく改善し得るため、荷物価値も配送価格も高い一方、コールドチェーンや危険物分類など、より厳格なサービス期待も伴います。
それでも、医療とeコマースでは積載量と航続距離が近いため、機体のプーリングは実現可能とされています。例えば、ワクチンや書類は100グラム未満、肺や家電は数キログラム、都市内配送は5キロメートル、遠隔コミュニティ向け配送は300キロメートルといった幅で、用途をまたいだ運用設計が検討できます。
図表2 カリフォルニアではeコマース市場が医療配送の25倍

4つの医療領域と5原則、社会受容性と収益性の両立が焦点に
ヘルスケア分野では、医薬品の配送、都市部における血液サンプルとワクチンの輸送、遠隔コミュニティにおける血液サンプルとワクチンの輸送、移植用臓器の配送という4つの領域でドローン配送の機会が示されています。医薬品配送では、より高頻度の注文が資産稼働率を90%超へ押し上げ得る一方、薬局密度が高い地域では需要が経済性確保に不十分となる可能性もあります。
移植用臓器の配送は時間制約が極めて厳しく、大規模移植センターでは臓器輸送のために1便あたり1万〜4万ドルのチャーター便を使うことがあります。航続距離が許す範囲でドローンが一部を置き換えれば、医療提供者のコスト削減と事業上の優位につながり得る一方、保険料や安全データ、数百キロメートルに及ぶ航続距離が課題となります。
本稿は、医療配送と一般eコマースの双方に機体を提供する運航事業者が、先進都市で現在約75%とされる機体稼働率の引き上げ、営業利益率の改善、社会受容性の高いミッションに結びつくブランド効果を得られる可能性を指摘しています。その実装には、小さく始める、市場を賢く選ぶ、エコシステム関係者と早期に協働する、配送を賢くスケジューリングする、急速充電ステーションを追加する、という5つの原則が重要です。
図表3 4領域で機会と課題が並行、5原則で実装を加速

論考について
論考名:「医薬品から日用品まで――ドローンはいかに物流を変革し得るか」
監修者
崎田 隆弘 シニアパートナー
自動車・製造業、防衛・航空宇宙領域のコアメンバー。製品企画や開発、およびサプライチェーンを軸とした事業戦略やトランスフォーメーションを中心に従事。海外経験も長く、英語・日本語の両方でプロジェクトをリード可能。日本の国力・国際競争力の向上をテーマに日本、北米、欧州地域に渡って日系クライアントを多数支援。前職は他コンサルティングファームや大手商社にて、事業開発(日本と中国)やサプライチェーン変革などを深く経験。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com
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