【2023年度】全国の高等学校におけるICT活用実態調査――「1人1台」端末配備の主流化と問われる活用場面の見きわめ
この調査結果を受け、旺文社では、各高等学校の実情に則した教育ICTサービスの提供と、活用のためのサポートに取り組んでまいります。
【調査実施要領】
調査テーマ |
全国の高等学校におけるICT活用状況についての調査 |
調査目的 |
高等学校現場におけるICT機器の導入ならびにICT関連サービスの活用状況の実態を調べ、 導入拡大・継続運用のための課題や、今後必要とされるサービス内容を把握する |
調査対象 |
旺文社独自リストに基づく全国の国公私立高等学校 計5,068校 *中等教育学校を含む/高等専門学校・高等専修学校を除く |
調査方法 |
対象校に対してアンケートDMを送付し、FAXおよびWebページにて回答を受け付け |
調査規模 |
全786校からのアンケート回答結果を分析 |
調査時期 |
2022年12月上旬~2023年1月上旬 |
調査発表日 |
2023年2月28日 |
※過去年度の調査結果は、旺文社HPよりご覧いただけます。
(2017年度版)https://www.obunsha.co.jp/news/detail/459
(2018年度版)https://www.obunsha.co.jp/news/detail/509
(2019年度版)https://www.obunsha.co.jp/news/detail/548
(2020年度版)https://www.obunsha.co.jp/news/detail/586
(2021年度版)https://www.obunsha.co.jp/news/detail/643
(2022年度版)https://www.obunsha.co.jp/news/detail/701
【調査結果サマリ】
▶生徒用のモバイルICT端末を導入している高等学校は88.6%、うち「1人1台」配備の割合は76.4%
生徒用のモバイルICT端末を導入している高等学校の割合は、回答校全体の9割弱(88.6%)に。BYOD※1・BYAD※2で端末を調達する学校も増加傾向。配備の内訳は「1人1台」の割合が7割超(76.4%)に急増しましたが、一方で運用やメンテナンスにかかる教員の負担も懸念されています。校内の無線ネットワークは8割以上(81.9%)の高等学校で授業利用が可能となりましたが、一部では通信品質についても向上が求められている状況です。
▶ICT活用に期待される「校内DX※3」の効果、環境整備の推進と同時に重要視される活用シーンの見きわめ
校務の効率化やペーパーレス化など、ICT活用には「校内DX」に大きな期待が寄せられています。また生徒用端末の利用には、「探究」や「情報」などの学びに不可欠であるといった意見や、学習効果向上への貢献を望む声も。さまざまなシーンでICT利用の可能性が増える一方、教員の意識として半数以上(54.3%)が「活用する場面の見きわめが課題」と答えるなど、実際の端末運用を考慮した上での現実解を求めようとする学校現場の動向がうかがえます。
▶高等学校におけるMEXCBT※4の利用率は4.5%、GIGAスクール構想※5が掲げる理想に対する現在地
文部科学省が掲げるGIGAスクール構想下で、「生徒向け1人1台端末」の環境構築が着実に進むかたわら、2021年12月より小・中・高等学校での稼働がスタートしたCBTシステム(MEXCBT:メクビット)の利用は、高等学校においてはまだ少数(4.5%)で認知にも課題があります。端末運用や通信環境の課題をクリアしながら、ICT活用の価値を本質的に享受するための方法が、高等学校でもまさに模索されている最中です。
※1 BYOD:Bring Your Own Deviceの略語。元々は企業などの団体組織において個人所有の端末を職場に持ち込み、業務目的の情報端末として運用するといった取り組み。
※2 BYAD:Bring Your Assigned Deviceの略語。学校が推奨・斡旋した機種の端末を個人が私費購入して持ち込み、授業活動などに利用するといった取り組み。
※3 DX:Digital Transformationの略語。デジタル技術の活用により業務プロセスを改善しながら、組織構造やスタイルなどに質的な変化をもたらすこと。デジタル化により、さまざまな分野で社会課題を解決することが期待されている。
※4 MEXCBT:文部科学省が開発したオンラインの学習システム。MEXT(文部科学省)とCBT(Computer Based Testing)を掛け合わせた呼称。生徒個人に最適化された学習内容の提供を目指して、2021年12月に運用がスタート。
※5 GIGAスクール構想:小・中・高等学校などの教育現場で先端技術を効果的に活用できるようにするため、文部科学省が推進する取り組み。児童・生徒各自がパソコンやタブレットといったICT端末を利用するための環境構築が進められている。
*後段に調査データのグラフをまとめて掲載しております。以下、対象のグラフもご参照の上でお読みください。
【調査結果】
■高等学校で浸透した「1人1台」のICT端末利用
全国の高等学校で導入・使用されているICT機器についての調査では、「生徒用のPC端末(タブレット型)」が68.5%、「生徒用のPC端末(ノート型)」が36.9%と、モバイル使用可能な生徒用ICT端末の回答が、いずれも昨年調査に引き続き高い割合となりました。両者回答を合わせて重複を除いたモバイルICT端末の導入率合計は88.6%に上っています。〈図1〉
また、生徒の私物端末を教育利用する「BYOD」や、学校が推奨した機種を個人が私費購入して利用する「BYAD」の割合も、41.0%に達して伸び続けています。(「生徒の私物端末(スマートフォン・PC等)」の回答割合)
これら生徒用モバイルICT端末の導入校に対して配備状況の内訳を調べたところ、「生徒1人1台配備」と答えた高等学校の割合は76.4%となり、GIGAスクール構想が掲げる「1人1台端末」の整備は、直近3年間で急激に進んだことがわかります。〈図2〉
■生徒用端末の配備増に伴う高等学校現場での課題
端末配備が進んだことは教員の意識調査にも表出しています。ICT端末活用における課題を聞いた調査では、「十分な端末数の配備」の回答割合が12.9%と、直近3年間で大幅に減りました。〈図3〉
一方で、端末台数の増加に伴う運用やメンテナンスに対する負担についての課題や、教員用端末の不足を指摘する声も上がりました。
<回答コメント例>ICT端末運用における課題
・「故障時の修理代負担、代替機の用意などの補償が大変」(石川/公立)
・「メンテナンスや台帳管理が煩雑であり、専門の担当者が必要」(東京/公立)
・「BYODでの利用の場合、生徒が持っているデバイスの種類が様々で、統一した指導が難しい」(千葉/公立)
・「生徒が充電をしてこない、タブレットそのものを忘れるなどが多発する。また、学習目的以外の利用が増えていくのが心配」(東京/公立)
・「教員に1人1台の端末が支給されていない」(大阪/公立)
■校内ネットワーク環境の整備と「通信品質」への課題
高等学校におけるネットワーク環境の整備状況についての調査では、「校内のどこでも無線でのネットワークを使用できる」(38.5%)と「校内の通常教室で無線でのネットワークを使用できる」(43.4%)の割合がさらに増えました。モバイルICT端末の配備と同時に、端末をオンラインで日常的に授業利用できる環境の整備が進んでいます。〈図4〉
一方で、端末活用における意識調査では、「ネットワーク環境の整備」を課題に挙げる割合が48.9%と一定数を占めます。〈図3〉 ネットワーク自体には繋がるものの、生徒が一斉に通信利用できないなど、ネットワークの「質」についても課題に上がっています。
<回答コメント例>校内ネットワークについての課題
・「Wi-Fiだと安定しない。PCの簡単なエラーでも授業に支障が出て関連業務がかなり増えた」(東京/公立)
・「校務用の有線LAN・生徒用の無線LAN共に、通信容量が不足しており、通信速度が非常に遅い」(神奈川/公立)
・「朝のホームルームでタブレットを使って小テストを実施したところ、ネット環境が重くなって実施できなかった。300人~900人が同時に使用しても使えるようなネット環境を期待する」(山口/公立)
・「回線の強化について課題点が多いと感じている。国レベルでの対応が不可欠だと思う」(大阪/私立)
■ICT活用による「校内DX」への期待と授業への貢献
ICTの必要性を感じるポイントについての調査では、「校務負担の軽減」(75.7%)、「教材のペーパーレス化」(69.4%)が昨年に引き続き高い割合となり、ICT活用による「校務DX」への期待がうかがえます。〈図5〉
コロナ禍の影響で休校措置が取られた2020年と比較しても、「リモートでの課題配信」(63.1%)、「生徒や保護者との連絡」(60.4%)などは回答割合が減っておらず、高等学校で恒常的なICT利用が定着していることが裏付けられています。
このほかICT活用に期待を寄せるポイントとして、授業展開の幅を広げて学びを深めることの意義や、2022年4月から共通必修科目となった「情報I」をはじめとする「情報科」授業での活用を挙げる意見も見られました。
<回答コメント例>ICTの必要性を感じるポイント
・「データ収集の迅速化、情報周知の効率化」(神奈川/公立)
・「総合的な探究の時間等でも、より深い学びができるのではないかと考えている」(福島/公立)
・「ネット検索による調べ学習や動画などによる学習環境の充実、学習サービスの活用による学力向上」(福岡/私立)
・「情報の授業での活用」(千葉/私立)
■ICT活用への手応えと効果的な利用場面の見きわめ
生徒用モバイルICT端末を導入している高等学校では、12.7%が「十分活用できている」、62.1%が「まあまあ活用できている」と答えており、全体の7割以上が利用状況に肯定的です。〈図6〉
一方で、端末活用における課題としては、「教員の活用スキルの引き上げ」(84.3%)が例年調査と変わらず最多でしたが、同時に「活用に適した場面の見きわめ」(54.3%)の回答割合が昨年から増えています。〈図3〉 「学校での活動を盲目的にデジタルへ置き換えるべきではない」と指摘する声も上がっており、高等学校では今、ICTを利用すべきシーンを本質的に見きわめる目が必要とされています。
<回答コメント例>ICTを活用する上での懸念
・「端末利用を推進するのはいいが、それが目的化する危険がある」(山形/公立)
・「何がしたいのか?何をさせたいのか?何をできるようにしたいのか?はっきりさせた方がいい」(東京/私立)
・「使い方によっては考える力をそいでしまう恐れもあるので、活用に効果的な場面を教員が見きわめる必要がある」(長野/公立)
・「タブレット端末を使わなくてもできることにあえて使う必要はない。効果的な活用法がまだ見つからず模索中」(神奈川/公立)
【総括】教育ICTの活用効果と価値向上に向けた課題
本調査では、文部科学省が掲げるGIGAスクール構想を受けて、高等学校におけるICT端末の導入状況と利用実態が質と量の両面で変化してきていることがわかりました。端末配備とネットワーク整備が進む中、学校現場では運用におけるさまざまな課題を抱えつつ、ICT活用の価値を本質的に享受するための方法が模索されています。
その中で、2021年12月より小・中・高等学校での稼働がスタートした文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)については、高等学校での利用はまだ4.5%に止まっており、公的プラットフォームの普及も今後の課題といえます。〈図7〉
今回の調査結果をもとに、今後旺文社では、各高等学校の実情と需要に応えられるような教育コンテンツ・サービスを提供し、教員向けに活用の実践例を交えたセミナーを開催するなど、教育の場をサポートする取り組みを進めてまいります。
■旺文社提供/学校向け教育ICTサービスのご紹介
<英単語マスタープログラム「タンゴスタ!for英単語ターゲット・英検でる順パス単」>
「タンゴスタ」は、英単語学習を支援するために開発されたICT活用サービスです。多くの高等学校に教材として採用いただいている英単語集「英単語ターゲット」・「英検でる順パス単」シリーズのコンテンツが搭載されており、学習の効率化と継続サポートによる生徒の英単語習得、ならびに、確認テストや評価管理の自動化による先生の負担軽減を実現します。
学校現場におけるICT環境の整備が進んでいることを受け、全国の高等学校での導入が広がっています。
●公式サイトURL:https://www.obunsha.co.jp/pr/tangosta
<ほしい問題に出会える「入試正解デジタル」>
「入試正解デジタル for School」は、旺文社刊行の書籍「全国大学入試問題正解」に掲載された大学入試過去問を検索できるWebアプリケーションです。検索機能を通して膨大な書籍収録情報から問題コンテンツを探す負担を軽減し、入試問題演習や授業で使うプリント作成、過去問の研究にお役立ていただけます。また、問題・解答・解説データはWordファイル形式でダウンロードができます。
現在は、英語・数学・国語・物理・化学・生物・日本史・世界史の8科目、最大8年分を掲載。学校のご利用目的にあわせて選べる2つのプラン「全科目セットプラン」と「科目プラン」を販売しています。無料体験版もお申込み受付中です。
●公式サイトURL:https://kakomon.obunsha.co.jp/
【会社概要】
学ぶ人は、変えてゆく人だ。
旺文社ブランドサイト
URL:https://www.obunsha.co.jp/pr/change/
社名:株式会社 旺文社
代表者:代表取締役社長 粂川 秀樹
設立:1931年10月1日
本社:〒162-8680 東京都新宿区横寺町55 / TEL: 03-3266-6400
事業内容:教育・情報をメインとした総合出版と事業
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