リケンテクノス 新居浜工業高等専門学校との共同研究により、高反応性を実現する光触媒設計を確立 ~難分解性有機物の分解に向けた基盤技術~
リケンテクノス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:常盤 和明)は、
国立高等専門学校機構 新居浜工業高等専門学校(愛媛県新居浜市、校長:東海 明宏、以下、新居浜
高専)との共同研究により、高い酸化力・還元力を両立する光触媒設計を確立しました。
本技術は、光触媒の反応性を大幅に高めることで、従来は分解が難しかった難分解性有機物への対応を可能にする基盤技術です。今後は、PFASをはじめとする環境汚染物質対策や水処理分野への応用を
通じて、国内外で規制や監視が強化されている環境課題への貢献が期待されます。
本研究では、新居浜高専が検討してきた光触媒を基盤に、当社の界面設計・複合化技術を融合し、異種元素の導入や界面制御により、キャリア(光を受けて生じる電子と正孔)の挙動を制御・最適化することで、光触媒の性能を飛躍的に高める構造設計を構築しました。
具体的には、次の3段階の設計を通じて、光触媒の性能を左右する電荷移動の仕組みと、その制御方法を明らかにしました。
① ヘテロ接合(Type‑II)(異なる材料を組み合わせて電子と正孔(電子が抜けた状態)を分離する
技術[1])
② Z‑scheme(反応に不要な電荷を除き、強い電荷のみを残す構造[2])
③ S‑scheme(内部の電場により電荷を自動的に選別する最新構造[3])
従来のヘテロ接合型光触媒では、電子と正孔が分離しやすくなる一方で、両者が低いエネルギー準位へ移動することで酸化力・還元力が低下し、強固な有機結合を分解するために必要な高い反応性を十分に発現しにくいという課題がありました[1]。本研究では、この課題に対し、電荷を単に分離するだけでなく、反応に有効な高エネルギー電荷を活かす設計へと発展させました。こうした性能向上の背景には、材料の電子状態と界面特性の精密制御があります。
(1)Type‑IIヘテロ接合:電荷分離の実現
酸化鉄と酸化チタンのヘテロ接合により、電子と正孔の再結合を抑制し、安定した電荷分離を実現しました。一方で、この構造では電子と正孔がそれぞれ低いエネルギー準位へ移動するため、酸化力・還元力が低下し、強固な有機結合の分解には限界があることが知られています[1]。
(2)Z‑scheme:高エネルギー電荷の選択保持
Z‑scheme型の電荷移動は、反応に寄与しにくい低エネルギー電荷を選択的に再結合させることで、
高い酸化力・還元力を持つ電荷を維持する手法として広く知られています[2]。本研究では、この
機構を踏まえ、界面および電子状態の制御により高エネルギー電荷を効果的に活用する構造を設計しました。
(3)S‑scheme:内部電場による電荷選別
S‑scheme型構造は、異種材料界面に形成される内部電場によって電荷を選別する機構として提案されています[4]。

本研究では、この概念に基づき、界面における電位差と電子状態を制御することで、外部の媒介物を
用いずに電荷を選別できる構造を設計しました。
この結果、電荷分離と高い酸化力・還元力を両立し、極めて高い反応性を安定して発現できることを
明らかにしました。
本研究の本質は、光触媒において「電荷を分ける」だけでなく、「反応に有効な高い酸化力や還元力を持つ電荷を選択的に活用する」という考え方を具体化した点にあります。
このようなType‑II、Z‑scheme、S‑schemeを含む複合的な設計は、鉄系光触媒においても有効な戦略として体系化が進んでいます[5]。
本成果は、PFASをはじめとする難分解性有機物を対象とした次世代水処理技術への応用が期待されるものであり、実用化に向けた重要な基盤技術となります。近年、国内外でPFASに対する規制や監視が強化されているなか、高い反応性を有する光触媒の実現が重要な課題となっています。
本研究成果は、こうした課題の解決に貢献する技術基盤として位置付けられます。
実環境条件下での検証も進めており、材料設計、プロセス設計、モジュール設計を一体的に検討し、
実用化に向けた取り組みを加速していきます。また、地下水、河川水、井戸水および産業排水などを
対象に、水処理分野への応用可能性についても評価を進めるとともに、PFAS対策を含む将来的な環境規制対応や浄化技術の高度化に貢献できるよう、開発を推進していきます。
本技術は、従来の光触媒では難しかった難分解性有機物の分解性能向上に貢献する基盤技術として、
水処理分野での新たな技術展開につながるものと考えています。
リケンテクノスは、産学連携による共同開発を通じて、社会課題の解決に資する新たな分野の開拓と
技術開発に引き続き取り組んでまいります。
▼技術背景に関する主要参考文献
[1]Balapure, A.; Ray Dutta, J.; Ganesan, R.
Recent advances in semiconductor heterojunctions: fundamentals and charge transfer mechanisms.
RSC Applied Interfaces, 2024.
https://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2024/lf/d3lf00126a
[2]Qahtan, T. F. et al.
Advancements in heterogeneous photocatalysts: from classical semiconductors to cutting-edge S-scheme systems.
Springer, 2024.
https://link.springer.com/article/10.1007/s42247-024-00788-w
[3]Ghasemi, S. et al.
Recent progress on Z- and S-scheme photocatalysis: mechanistic understanding toward green applications.
Current Opinion in Chemical Engineering, 2025.
https://hal.science/hal-04862745v1/
[4]Charge-transfer dynamics in S-scheme photocatalyst.
Nature Reviews Chemistry, 2025.
https://www.nature.com/articles/s41570-025-00698-3
[5]Arif, N. et al.
Recent advances and perspectives on iron-based photocatalysts.
Journal of Materials Chemistry C, 2024.
https://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2024/tc/d4tc01062k
▼当社ホームページ
https://www.rikentechnos.co.jp/
▼国立高等専門学校機構 新居浜工業高等専門学校
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