北米25市場のAIデータセンター立地評価、首位は新興のオースティン、シリコンバレーは最下位に 【A.T. カーニー】

クラウド大手は3〜5年分の容量を事前賃貸、電力制約が新設AIデータセンターのボトルネックに

KEARNEY

A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、AIデータセンターの立地選定に関するレポート「AIデータセンター立地魅力度インデックス」を公開しました。

本稿では、北米のデータセンター容量が20ギガワット(GW)を超え、さらに大規模な新設が計画される中、北米の主要25市場を6つの重要要因・18のパラメータで評価し、新設(グリーンフィールド)AIデータセンターの候補地を比較する包括的な枠組みを提示しています。

分析の結果、バージニアやシリコンバレーといった従来型ハブは必ずしも新設AIデータセンターに最適な立地ではなく、オースティン/サンアントニオ、アイオワ、モントリオールなどの新興市場が上位に浮上しました。総合スコアは首位のオースティン/サンアントニオが4.2である一方、シリコンバレーは2.9と25市場中最下位にとどまっています。

 

AIが設計要件を根本から変革、電力は一般家庭約10万世帯分・冷却はラック1台でエアコン約1,000台分

AIはデータセンターのインフラ要件を根本から作り替えつつあり、かつてない電力密度、特殊な冷却ソリューション、独自の運用パラメータを要求しています。従来型の施設は、GPUクラスターの極端な電力消費や、高密度ハードウェアに必要な特殊冷却に対応できるようには設計されていません。

具体的には、標準的な100メガワット(MW)級のAIデータセンターは一般家庭約10万世帯分に相当する電力を消費し、従来型(約2万世帯分)を大きく上回ります。また、AIラック1台に必要な液体冷却は家庭用エアコン約1,000台分に相当し、ラックあたりの計算能力は同じスペースで従来型の4〜5倍に達します。

こうした技術的な違いは、AIデータセンター投資にとって最適な条件を提供できる地理市場を直接左右します。本稿は、既存施設のAI向け改修ではなく、高負荷なAI計算ワークロードを支えることを目的に新設される専用施設に焦点を当て、立地魅力度分析の基盤としています。

 

図表1 AIデータセンターは従来型と大きく異なる――電力は約10万世帯分、冷却はエアコン約1,000台分

6要因・18パラメータで25市場を評価、総合スコアは2.9〜4.2に分布

本インデックスは、電力インフラと冷却要件、土地、ネットワーク接続性、労働市場、事業環境、気候・資源という6つの重要要因に整理した18のパラメータに基づき、各立地を標準化スコアで評価しています。持続可能性、水資源の利用可能性、自然災害リスクといった重要性が増す新たな要因も取り込み、既存のデータセンターハブと新興立地との間で意味のある比較を可能にしています。

評価の結果、首位はオースティン/サンアントニオ(4.2)で、フェニックス(4.1)、アイオワ(4.1)、コロンバス(4.0)が続きました。歴史的に市場を支配してきたバージニアは3.8、シリコンバレーは2.9にとどまり、重大な制約に直面する既存市場と、信頼性の高いインフラ・運用効率・成長ポテンシャルを兼ね備える新興立地との間に、明確な分岐が生じています。

上位の新興市場に共通するのは、強固な電力インフラと利用可能な土地です。オースティン/サンアントニオ回廊はAIデータセンター容量の事前賃貸(プレリース)率が最高水準にあり、アイオワは風力発電の主要生産地としての卓越した電力インフラと積極的な税制免除が評価されています。カナダのモントリオール/ケベックは、低コストの水力発電と州のエネルギー政策がもたらす価格安定性により、米国のエネルギー市場の変動に直面するAI企業にとって魅力的な選択肢となっています。

 

図表2 総合スコア首位はオースティン/サンアントニオの4.2、シリコンバレーは2.9で最下位

成熟ハブのバージニアは電力制約が壁に、立地の争いは中東・アジアへも拡大

一方、最も成熟したハブであるバージニアは、域内の接続密度が業界トップであるにもかかわらず、深刻な電力供給制約と地価の急騰により、事業者が代替地の検討を迫られる状況にあります。シリコンバレーも比類のない接続性とAI人材を有しながら、送電網制約、極めて高い地価、規制面の障壁により、大規模なAIデータセンター拡張は非常に困難になっています。

北米以外でも代替ハブの台頭が加速しています。中東ではGroqがサウジアラビアから15億ドルのコミットメントを確保してAI推論インフラを拡張し、フランスはUAEと共同で1GW級のAIデータセンターに300億〜500億ユーロを投資しています。韓国では約350億ドルを投じる3GWの巨大施設が計画されており、予定通り2028年に完成すれば世界最大のデータセンターとなる見込みです。

主要クラウド事業者はすでに今後3〜5年分の容量を事前賃貸しており、電力制約が成長の決定的なボトルネックとなる中、州・地方政府は電力インフラ投資、税制優遇、許認可手続きの迅速化を通じて誘致競争を活発化させています。本稿は、レイテンシー要件、持続可能性目標、展開規模といった事業者固有の要件と魅力度スコアを組み合わせることで、次のAIデータセンター投資に関する意思決定を支援する定量的な枠組みを提供します。

 

図表3 既存市場と新興立地で明暗、6要因別スコアの内訳

論考について

 レポート名:「AIデータセンター立地魅力度インデックス」(英題:AI Data Center Location Attractiveness Index)
URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/aI-data-center-location-attractiveness-index 

 

監修者

- 針ヶ谷 武文 日本代表 マネージングディレクタージャパン / シニアパートナー

東京大学教養学部卒業。大手通信会社で営業企画・事業企画・サービス開発を経て、A.T. カーニーに入社。通信・ハイテク・メディア企業を中心に、約20年の超えるコンサルティング経験を有する。事業会社における様々な組織横断での事業推進の経験を下敷きに、デジタルを始めとするトランスフォーメーション、海外事業戦略、新規事業戦略、事業ポートフォリオの再構築、事業ターンアラウンドのテーマを中心に地の足の付いた実効性の高いコンサルティングサービスを提供。

 

- 滝 健太郎 シニアパートナー

東京大学経済学部経済学科を卒業後、A.T. カーニーに入社。約10年のコンサルティング経験を有する。通信・金融機関・消費財を中心に、戦略~新規事業・R&D~M&A~マーケ・営業~オペレーション~コスト~人事・組織など、経営に係わる幅広いテーマを手掛け、特に、全社レベルでの大規模デジタルトランスフォーメーションを得意とする。

 

A.T. カーニーについて

 A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com

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会社概要

A.T. カーニー株式会社

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URL
https://www.jp.kearney.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー23階
電話番号
03-6890-5001
代表者名
針ヶ谷 武文
上場
未上場
資本金
-
設立
1926年09月