若手農業従事者90人に聞いた「農作業と熱中症に関する実態調査」 結果を発表
~90%以上が「夏の暑さが働き方に影響」と回答~
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:渡邊 一洋)が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトは、全国農協青年組織協議会(JA全青協)(本社:東京都千代田区、会長:北川 敏匡)協力のもと、若手青年農業従事者90人を対象に、「農作業と熱中症に関する実態調査」を行いました。結果は「熱中症ゼロへ」プロジェクト公式サイト 熱ゼロ研究レポート( https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab14 )で2025年 6 月 5 日(木)に公開します。すべての調査結果は、本ページで公開しています。
●「農作業と熱中症に関する実態調査」サマリー
① 夏の暑さにより作業環境や働き方、作業時期に影響があったと感じた人は、90%以上。
具体的には、1日の休憩頻度を増やす、作業時間帯をずらす、作業時間数を変更するなど、暑さを避ける人が多かった。
② 熱中症に注意が必要だと感じるシーンは「重労働や1人になりやすい環境」。
草刈り作業や薬剤散布のとき、エアコンの効いていないトラクターで作業するとき、個人農家やハウス内での水やり作業時などが挙げられた。
③ 暑さにより農畜産物自体への影響を受けたと感じた人は約95%。「暑さにより、農作物の収穫量が減った」と回答した人は約77%。
1. 夏の暑さによる働き方の変化、90%以上が影響を実感


直近2年程度の夏の暑さについて、作業環境や働き方、作業時期への影響があったと回答した割合は、「とても影響を受けた(68.9%)」、「やや影響を受けた(22.2%)」と、合わせて約90%に上りました。具体的な影響について聞いたところ、暑さを避けるため「1日の休憩頻度を増やした」が最も多く72.0%、続いて「1日の作業時間帯を前後にずらした」が58.5%、「1日の作業時間数を変更した」が39.0%と、働き方への工夫がみられました。
2. 熱中症に注意が必要だと感じるとき、「草刈り作業」や「薬剤散布」など1人作業になりやすいシーンに注意

農作業中、農作業後において熱中症に注意が必要だと感じる人の中で、注意が必要な具体的なシーンや理由について詳しく尋ねたところ、草刈り作業や薬剤散布などの重労働のとき、エアコンの効いていないトラクターで作業するとき、個人農家やハウス内での水やり作業などの1人になりやすいとき、などが挙げられました。熱中症予防において、周囲の人が変化に気付くことのできる環境づくりも課題のひとつです。
3. 農畜産物自体への影響、約95%が実感 特に生育・収穫量に影響の声


夏の暑さについて、農畜産物自体への影響はどの程度受けたと感じるか聞いたところ、「とても影響を受けた(65.6%)」、「やや影響を受けた(28.9%)」と、合わせて約95%が影響を受けたと回答しました。具体的には、暑さにより「農畜産物の収穫量が減った」が76.5%、「農畜産物の生育が不十分だった」が64.7%と、農畜産物の「生育・収穫量」に関して影響を感じていることが分かりました。
その他の回答では、害虫の被害が大きかった、果実の日焼け、樹上でのドライフルーツ化、高温障害などの意見も挙がりました。
■農作業と熱中症に関する実態調査 調査概要
【調査方法】 インターネット調査
【調査対象】 全国農協青年組織協議会(JA全青協)の各県域委員長・会長等の若手青年農業従事者
【サンプル数】90人(20代~50代)
【調査時期】 2025年3~4月
※調査結果は、端数処理のため合計しても必ずしも100%とはならない場合があります。
【農作業時の熱中症予防のポイント】
気象庁によると※、日本の平均気温はさまざまな変動を繰り返しながら上昇を続けており、特に1990年代以降、記録的な高温となる年が多くなっています。農作業をする方や、個人で園芸を楽しまれる方などを含め、暑い環境で長時間作業する場合は熱中症に注意が必要です。特に、屋外で直射日光を浴びる環境や、高温多湿な環境下になりやすい「ハウス」・「畜舎」・「選果場」・「農業用車」などで作業をする場合も、予防・対策を徹底してください。天気予報や暑さ指数(WBGT)を確認し、水分補給、適度な塩分補給を心がけ、こまめに休憩をとることが大切です。防護服などを着用する際は、ファン付きウェアなどの暑さ対策アイテムも積極的に活用しましょう。
熱中症予防・対策には周りの人が、体調をこまめに気にかけることも大切です。作業する際はなるべく2人以上で行うようにし、時間を決めて連絡を取り合うなどお互いを見守る環境を作りましょう。もし熱中症が疑われる作業者を発見した場合は、すぐに応急処置を行い、病院などの医療機関へ連れていきましょう。
「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは「熱中症は未然に防げる気象災害」を2025年度のテーマに、引き続き早めの熱中症対策を呼びかけてまいります。
【熱中症ゼロへ 熱中症について学ぼう:こんな人は特に注意!「屋外で働く人」】
https://www.netsuzero.jp/learning/le06
【熱中症ゼロへ 熱中症について学ぼう:応急処置のポイント】
https://www.netsuzero.jp/learning/le03
【熱中症ゼロへ 熱ゼロ研究レポート】
https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab14
※出典:気象庁ホームページ(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2024/index1.html)
【この先の気象傾向】
日本気象協会所属 気象予報士/防災士/熱中症予防指導員
久保智子
6月の気温は、北日本や東日本、沖縄・奄美で平年より高く、西日本で平年並みか高いでしょう。6月中旬には、西日本や東日本の広い範囲で梅雨入りする見込みで、湿度が高く、蒸し暑く感じられる日が多くなりそうです。湿度が高いと、汗が蒸発しにくく、体の中に熱がこもりやすくなるため、熱中症の危険度が高まります。曇りや雨でも油断せず、綿や麻など通気性の良い素材の服装を選び、こまめに水分をとるなど、熱中症対策を心がけましょう。

■「熱中症ゼロへ」プロジェクトとは
熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、一般財団法人 日本気象協会が推進するプロジェクトです。2013年夏のプロジェクト発足以来、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核に、熱中症に関する正しい知識と対策をより多くの方に知ってもらう活動を展開してきました。活動13年目となる2025年は「熱中症は未然に防げる気象災害」をテーマに、熱中症の予防啓発活動を実践します。激甚化する暑さや熱中症への防災意識を高め、さまざまな働き方や生活に合わせて、暑さに備えるための情報発信を強化します。
■一般財団法人 日本気象協会について
日本気象協会は、民間気象コンサルティング企業の先駆けとして1950年に誕生しました。防災・減災や洋上風力発電の分野以外でも、気象データを活用した商品需要予測や電力需要予測、気候変動対策などのコンサルティングを通じ、気象データのビジネスでの利活用を提案しつづけています。所属する気象予報士の数は350人を超え、日本最大級の規模を誇る気象の専門家集団として企業のESG投資やSDGs活動への支援も積極的に展開中です。
・「熱中症ゼロへ」は日本気象協会の登録商標です。
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