【プレスリリース】『先進国における子どもの幸福度‐日本との比較 特別編集版』発表
日本の子どもの相対的貧困率 先進国で下から10番目
ユニセフは25日、国立社会保障・人口問題研究所との共著による『イノチェンティ
レポートカード11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較 特別編集版』を
公表しました。
※日本ユニセフ協会ウェブサイトよりダウンロードいただけます
http://www.unicef.or.jp/library/library_labo.html
ユニセフのイノチェンティ研究所は、先進国における子どもの状況をモニターし比較
することを目的として、2000年から『レポートカード』シリーズを公表しています
(テーマは毎回異なります)。本年4月、先進国の子どもの幸福度を、5つの分野に
おいて順位づけしながら考察した『レポートカード11 先進国における子どもの幸福度』
を公表しましたが、日本についてはデータが不足しており、総合評価の対象とされ
ませんでした。その後、国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏、竹沢純子氏が
イノチェンティ研究所と協力して、原文の『レポートカード11』に、比較できる日本の
データを追加して日本の順位を割り出し、日本の状況についての考察を加え、今回の
『特別編集版』の公表が可能となりました。
今回の報告書では、初めて、子どもの幸福度に関する5つの分野すべてにおいて日本の
データが含められました*。阿部氏は「本調査は、子どもの幸福度/貧困を、所得と
いう側面だけでなく、生活必需品の有無、健康、教育、日常生活上のリスクといった
分野でより直接的、多角的に測っている点でとても貴重なデータを提供しています。
今回初めて、日本が国際比較の卓上にのったことは、日本の子どもの状況を客観的に
捉える上で非常に重要であり、意義深いことです」と述べています。
*今回と同様のレポートは『レポートカード7』として2007年にも公表されていますが、
この時も日本は一部指標のみ取り上げられ、総合評価の対象外でした。
■総合順位ではオランダ、北欧諸国に次ぐ6位/分野ごとのばらつきが顕著
日本の子どもの幸福度は、31カ国を対象とした総合順位では、オランダと北欧4カ国
(フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)に次ぐ6位と、トップ
クラスでした。ただし、詳しくみてみると、それらの国々の状況とは少し異なること
がわかります。上位5カ国は、全ての分野でいずれも成績がよいのに対し、日本は、
2つの分野で1位になった一方で「物質的豊かさ」では21位となるなど、分野ごとに
順位のばらつきが大きかったのです。阿部氏は、「5つの分野の成績には全般的に
相関関係が認められるので、今回日本の成績がよかった分野も、将来的には悪化する
可能性もあり得ます。そのような注意喚起として今回の調査結果をとらえてほしい」
と述べています。
以下、分野別のハイライトです。
■【物質的豊かさ】 日本の子どもの貧困、先進国の中でも深刻
今回の調査で日本の順位がいちばん低かったのが、物質的豊かさの分野です。日本は
31カ国中21位(下から11番目)で、子どもの貧困の問題が、先進諸国の中でも深刻な
方であることが、あらためて明らかになりました。それぞれの国において貧困状態に
ある子どもの割合を示す「相対的貧困率」は、14.9%で、下から数えて10番目。また、
貧困の深刻度を示す「貧困ギャップ」では、さらに順位を下げ、下から6番目と
なっています。さらに、子どもの実際の生活水準を比較するために用いられた
「子どもの剥奪率」(8品目(本文参照)のうち2つ以上が欠如している子どもの割合)
においても、下から11番目と、相対的な所得の貧困、物質的剥奪のいずれにおいても、
日本は下位に位置づけられる結果となっています。
■【健康と安全】 低出生体重児出生率では最下位
健康と安全の分野については、日本の順位は31カ国中16位でした。子どもの死亡率や
予防接種率では上位だったものの、低出生体重児出生率(2,500グラム未満で生まれる
乳児の割合)で最下位だったことで、分野別の順位が引き下げられる結果となりました。
日本は、低出生体重児出生率が70年代後半から2000年代後半にかけ倍増した特異なケース
であることも、報告書は指摘しています。その理由としては、低体重の女性の増加、
若い女性の喫煙の増加、妊娠中に厳格な食事管理を行う傾向、所得格差の拡大などが
挙げられています。
■【教育】 ニート率、4.1%で10位
教育分野に関しては、日本は、学習到達度(PISAテスト)の順位がフィンランドに次ぐ
2位であったことなどから、分野別では、31カ国中で1位となりました。ただし、
高等教育を受けている15~19歳の割合と、就学・就労・職業訓練のいずれも行っていない
15~19歳の若者の割合(いわゆる「ニート率」)においては、どちらも10位と、中位の
順位となりました。
■【日常生活上のリスク】 いじめを受けたことのある子どもは27.4%で12位
日常生活上のリスクにおいても、日本は分野別で1位となりました。この分野を構成する
要素のうち、「健康行動」(肥満児の割合、毎日朝食をとる子どもの割合)においても、
また、10代の出生率と飲酒という、将来に悪影響を及ぼす「リスク行動」においても、
日本はトップクラスの順位でした(10代の出生率(4位)以外は1位)。この分野で唯一、
日本の順位が上位ではなかったのが、いじめに関する指標です。日本では、いじめを
受けたことがあると答えた13~15歳の子どもは27.4%で、30カ国中12位。日本の子ども
たちの経験しているいじめの問題は、他の先進諸国と比較しても小さくないことが
明らかになりました。
■【住居と環境】住環境については中庸
住居と環境分野では、日本は10位でした。住居については、1人あたりの部屋数、住居に
複数の問題(項目は本文参照)があると答えた子どもがいる世帯の割合のいずれの指標でも、
中位に位置づけられました(それぞれ15、17位)。一方、子どもがおかれた社会環境に
おける暴力の水準の指標として用いられた、年間の殺人発生数(10万人あたり)では、
日本は31カ国中2番目に低いという結果になりました。
■子どもを支援する政策の推進へ
今回の報告書の基になった本年4月発行の『レポートカード11 先進国における子どもの
幸福度』は、各国の状況を詳細に比較した上で、先進国の子 どもの貧困は避けられない
ものではなく、むしろ各国による政策の影響を受けやすい、ということを指摘しました。
「日本では本年6月、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立しました。本報告書が、
日本の子どもの貧困と幸福に関する政策や、子どもの貧困をモニタリングする仕組み
について、何らかの示唆を与えることになり、包括的に子どもを支援する政策の推進に
つながれば幸いです」と阿部氏は述べています。
■報告書で扱われている指標
報告書では、以下の指標について、各国の比較を行っています。
詳細は報告書をご覧ください。
※本報告書の冊子(2014年1月8日完成予定)をご希望の方は、
日本ユニセフ協会広報室までお問い合わせください。
■本プレスリリースに関するお問い合わせ
(公財)日本ユニセフ協会 広報室
TEL:03-5789-2016 FAX : 03-5789-2036 jcuinfo@unicef.or.jp
■報告書の内容に関するお問い合わせ
国立社会保障・人口問題研究所
阿部 彩(社会保障応用分析研究部長)、竹沢純子(企画部第3室長)
TEL: 03-3595-2984 FAX: 03-3591-4816 homepage@ipss.go.jp
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進
するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、
その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子ども
たちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのため
に活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの
任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会
のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ
活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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