先発医薬品(長期収載品)の選定療養化に関する影響実態調査
当社は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ『REZULT』を基に、先発医薬品(長期収載品)の選定療養化に関する影響実態調査を実施しました。
後発医薬品のある先発医薬品(以下「長期収載品」)の選定療養化は、厚生労働省が指定する対象品目が処方される際に、医療上特段の理由(医療上必要があると認められる場合及び後発医薬品を提供することが困難な場合)がない場合に、後発医薬品ではなく長期収載品を患者が希望した際、定められた費用を負担する仕組みとなります。対象となる後発医薬品の中で最も薬価の高い医薬品と長期収載品との差額の4分の1を患者が負担する仕組みで、2024年10月より導入されています。
当社では2024年8月に事前影響調査を実施し、調査レポート「2024年10月施行 先発医薬品(長期収載品)の選定療養化に関する事前影響調査(https://www.jast.jp/seminar/20909/)」を公開しております。
本調査では選定療養化導入前後の対象品目の処方動向、後発医薬品使用率、患者負担の変化について調査を実施しました。
【集計条件】
利用データベース:当社の保有するレセプトデータベース(約1,000万人 2025年4月時点)
調査対象:選定療養化導入前後の医科外来・調剤レセプトデータを対象に調査
調査期間:2023年10月~2024年12月診療分(15か月分)
※導入前後比較については、導入前:2023年10月~2023年12月、導入後:2024年10月~2024年12月のそれぞれ3か月間を使用(同時期を比較)
※長期収載品の対象品目は随時更新されているため、本調査実施時点より変更が生じている可能性があります
参考資料:厚生労働省 後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html)
【REZULTのデータソース】
・保険者由来のレセプトデータを中心としたデータベース
・健康保険組合、共済組合のデータを収載(新生児~働き世代中心)
・患者の追跡性に優れ、大規模病院~クリニック、調剤薬局、歯科と幅広く収載
目次
1 | 選定療養化前後の対象品目処方患者数の変化
2 | 選定療養化前後の後発医薬品使用率の変化
3 | 選定療養化後の患者負担の変化
1 | 選定療養化前後の対象品目処方患者数の変化
まず、選定療養化前後で対象品目を処方されている患者の状況について調査しました。
全体・年代別に確認しましたが、全体的に対象品目を処方されている患者が減少していることが確認できました。(図1)
全体では対象品目のいずれか1種以上を処方されている患者が37.3%だったのに対し、選定療養の導入後は患者の希望、医療上の理由合わせて30.0%と7.3ポイント減少しています。
特に0-4歳、5-9歳において15ポイント以上の減少が見られ、影響が大きかったことが伺えます。
これは、選定療養で支払う費用は助成金等の対象外となり、直接負担が増加することが影響していることも考えられます。
また、対象品目を処方されている患者の内、選定療養費を負担している患者(希望して処方を受けている患者)の割合も確認しています。
全体で長期収載品を希望して処方されている患者の割合は4.1%と、医療上の理由で対象品目を処方されている患者(同25.9%)と比較し限定的であることが分かります。
年代別にみると2.1%~9.9%と世代によって大きな差が生じており、40歳以上の患者で長期収載品を希望する比率が高くなる傾向にありました。年齢が高いほど長期間服薬しており、飲み慣れた医薬品から変えたくないという意識も働いているかもしれません。

【図1】選定療養対象品目の処方患者割合及び対象品目おける患者の希望による処方の割合
※長期収載品を希望しての処方と医療上の理由での処方が混在している患者については、患者希望として集計。
2 | 選定療養化前後の後発医薬品使用率の変化
次に選定療養化前後の後発医薬品使用率の変化に着目しました。
数量ベースで使用率を見ると、選定療養化後の2024年10月以降、後発医薬品の使用率が大きく増加していることが分かりました。(図2)
単純な費用負担だけではなく、選定療養化が医療機関・患者共に医薬品を見直す機会となったのか、選定療養対象品目以外においても先発品に若干の減少傾向が見られました。
次に使用率を医科入院外(以下「院内」)と調剤(以下「院外」)の調剤機関別に見てみました。(図3、図4)
後発医薬品使用率に差はあるものの、選定療養化導入以降については使用率が増加する傾向は院内、院外とも同様の傾向でした。
しかし、院内は月が進むにつれて段階的に増加、院外は10月から大きく変化するなど、調剤機関によって傾向が違うことが分かりました。
院内で調剤される場合は患者の希望で処方される割合は少なく、医療上の理由で処方される割合が大きいことが分かりました。
先発品と後発医薬品の適応疾患の違いや後発医薬品の流通状況、患者の体質等の複数の要因で差異が発生している可能性が考えられます。

【図2】長期収載品の選定療養化前後の後発医薬品使用率(医科入院外・調剤)

【図3】長期収載品の選定療養化前後の後発医薬品使用率(医科入院外)

【図4】長期収載品の選定療養化前後の後発医薬品使用率(調剤)
3 | 選定療養化後の患者負担の変化
最後に選定療養化後の患者負担について変化を調査しました。
対象品目のいずれか1つ以上を処方されている患者について対象品目における処方状況・患者負担の変化を調査しました。(表1)
対象品目を処方されている方の割合は前年と比較し80.7%と減少しており、対象品目を処方されている患者の内、選定療養費の負担に同意した患者は13.7%となっています。
負担額としては患者が希望した上で対象品目を処方されている場合、医療上必要と認められた場合と比較して3か月間で平均767円の負担増が見られました。
次に選定療養費の総額が大きい医薬品から上位5品目について確認しました。(表2)
事前調査と同様に上位2剤がヒルドイド(ローション・ソフト軟膏)となり、それぞれ5.1%、4.6%と事前調査よりも小さな比率となりましたが、2品目で9.7%と1割近くを占めています。
また、ヒルドイドを処方されている患者の割合としては前年と比較し49.6%、61.5%と大幅に減少していることが分かりました。
上位5品目における患者負担としては3か月で375円~874円と幅がありますが、いずれも従来の負担額から換算すると1.5倍以上と大きな変化が見られました。

【表1】選定療養化導入後の患者負担
※選定療養化後の患者負担:選定療養費+患者負担により算出
※従来負担:選定療養化が行われなかった場合の負担額を、対応する医療上必要と認められた場合の薬価を用いて試算
※計算結果には小数点以下が発生するため合計が合わない場合がある

【表2】選定医療費のシェア上位5品目における患者負担
※選定療養化後の患者負担:選定療養費+患者負担により算出
※従来負担:選定療養化が行われなかった場合の負担額を、対応する医療上必要と認められた場合の薬価を用いて試算
※計算結果には小数点以下が発生するため合計が合わない場合がある
今回は長期収載品の選定療養化の実態調査を行いました。
選定療養費の負担に同意した上で処方を希望している患者は限定的ですが一定数おり、医薬品の切替について難しさを感じさせます。
また、後発医薬品の使用率に大きな影響を与えており、影響は今後も継続する可能性が考えられます。
現状では医療上の理由から長期収載品を処方されている患者も多く、今後の後発医薬品供給や社会の動向により見直しや対象品目の追加も考えられるため、引き続き状況を注視していきたいと思います。
当社では、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、適正服薬(後発医薬品の利用促進等)に関して通知から効果分析まで行っています。
他にも、約1,000万人の匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニー(※1)などアドホックな分析やデータの販売を行っております。
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※1 患者が病気を認知し、医療機関へ受診、そして治療となるまでの一連のステップ
■本件で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」につきましては以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/
【本件に関するお問い合わせ】
日本システム技術株式会社
ヘルスケアイノベーション事業部
TEL:03-6718-2785
Mail:rezult@jast.co.jp
URL:https://www.rezult-lp.com/
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