【提言】社会保障制度改革の中長期提言
「自律的な医療介護システム」への変革-来るべき「2040年問題」を乗り越えるために
株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:籔田健二、以下 MRI)は、高齢者人口がピークを迎える2040年を展望し、「自律的な医療介護システム」への変革に向けた医療介護制度改革と、実現に向けて必要な施策を提言します。
1. 背景・経緯
団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」が目前に迫っています。また、高齢者人口がピークを迎える「2040年問題」など、社会保障制度を取り巻く課題の解決に向けて残された時間は多くありません。一方で、政府主導により「医療DX」が急ピッチで推進されるなど、変革に向けた環境が整いつつあります。
制度改革の効果が出るまでには10年単位の時間が必要なことを考えると、これからの5年が、先送りされてきた制度改革を実現し、私たちの生活に必要不可欠な社会保障制度の持続性を確保するための最後のチャンスと言えます。
MRIは、こうした社会情勢の変化を好機と捉え、「2025年問題」、さらにその先の「2040年問題」を乗り越えるために、2030年までに実現すべき社会保障制度改革を提言します。
2. 概要・特徴
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MRIが実施した試算によると、医療や介護、年金、子育て支援等を含めた社会保障全体の給付費は、2015年の117兆円から、2040年には165兆円にのぼると見込まれます(図表1)。特に医療・介護給付費の伸びが大きく、2015年と比べ1.7倍の81兆円にまで膨らむ見通しです(図表2)。
図表1 社会保障給付費の将来推計
図表2 医療・介護給付費の将来推計
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社会保障のうち最も規模が大きい年金は、経済情勢に応じて給付額を調整し、5年に一度見直しを行うことで制度の持続性を確保する仕組みが取り入れられています。
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一方、医療介護費は今後も早いペースで増え続けることから、本提言では医療介護制度の持続性を確保することが最優先課題であると考え、医療介護制度の改革に焦点をあてました。また、今般とりまとめられた「こども未来戦略」の施策を実施するための財源の一部が、医療介護制度の改革によって確保されることも、今回われわれが医療介護制度に着目した理由の1つです。
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MRIは、医療介護制度の持続性を高めるべく、私たち国民と、医療・介護サービス提供者、そして国や保険者が「三方よし」となる構造への変革を目指した、「自律的な医療介護システム」の確立を提言します(図表3)。
図表3 自律的な医療介護システムの構築に向けた制度改革の全体像
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医療介護制度の持続性を高めるためには、政府が掲げている改革工程※の着実な実行が必要です。2028年までの改革工程の実行で見込まれる効果に加えて、本稿で提言した2040年までの改革を実行した場合の効果を新たに試算したところ、2040年には合計で7.3兆円の抑制効果が見込まれました。医療介護を必要とする人々の暮らしを支えていくためには、早期かつ着実に改革に向けた取り組みを推進することが必要不可欠です。
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その一方で、今回提示した改革のみで財政の健全化を図ることは難しいことも示されました。社会保障制度の持続性を高めるためには、「国民がどのように給付と負担を分け合うか」という具体的な議論を深めていくことが重要です。そのためには、社会保障制度に対する国民理解を促進する必要があります。
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MRIが実施した生活者向けアンケート調査では、若年層を中心に社会保障制度への関心・知識が乏しいこと、また多くの人が社会保障制度に対し、将来の負担への不安を抱えていることが分かりました。財政や国民負担等の将来見通しを示すだけでなく、将来の暮らしに対する予見性を高められるようきめ細やかな情報を提供していくことで国民の不安を解消し、制度改革に対する国民のコンセンサスを得ていくことが重要です。
※全世代型社会保障構築会議「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和5年12月22日)
詳細はレポート本文をご参照ください。
レポート全文
【提言】社会保障制度改革の中長期提言 [4.9MB]
https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/policy/i5inlu000000bgh3-att/20240614pec.pdf
3. 今後の予定
本提言をきっかけとして、国民の一人ひとりが社会保障のあり方について考え、議論を深めていけるよう、引き続き情報発信を行っていきます。また、制度改革実現に向けた具体策についても、さらに検討を深めていきます。
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