マイクロプラスチックの魚類体内への取り込みを透明金魚を用いて可視化
静岡大学創造科学技術大学院・バイオサイエンス専攻・徳元俊伸教授の研究グループは、透明金魚(注1)を用いてマイクロプラスチック(MP)(注2)の魚類体内への取り込みの様子を継時的に観察し、マイクロプラスチックは主に鰓に蓄積し毒性を示すことを明らかにした。
【研究のポイント】
■ 解剖しなくても体内が観察できる透明金魚を実験に使用
■ 蛍光性のマイクロプラスチックを使用
■ マイクロプラスチックの体内への取り込みをリアルタイムでモニター
本研究では、全身がほぼ透明な約1ヶ月齢の透明金魚の稚魚と蛍光ラベルされた直径2マイクロメーターのマイクロプラスチックを用いることでマイクロプラスチックの体内への取り込みの様子をリアルタイムで観察することに成功した。
その結果、魚類では水中に存在するマイクロプラスチックに暴露された場合、まず鰓への蓄積が最初に起こることが明らかになった。鰓への蓄積が長期間続くと鰓組織が壊死して最終的には死に至る経過も観察でき、マイクロプラスチックの毒性を実証できた。
なお、本研究成果は、2026年3月23日に、Taylor & Francis Groupの発行する国際雑誌「Toxicology Mechanisms and Methods」からオンラインで発表された。
【研究者コメント】
静岡大学 創造科学技術大学院 バイオサイエンス専攻 徳元 俊伸
我々は先に樹立した透明金魚を用いて環境問題となっているマイクロプラスチックの影響を調べました。樹立まで長年を要した透明金魚を利用した研究がようやく発表できました。今後も透明金魚が様々な研究に役立つことを期待しています。

【研究概要】
マイクロプラスチック(MP)の影響を調査するため、透明な金魚(Carassius auratus)を用いた曝露実験を実施した。透明な1ヶ月齢の幼魚(図1)に、直径2マイクロメーターの蛍光標識マイクロプラスチックビーズ(FMP)を曝露させ、体内の取り込みを4週間(28日間)追跡した。投与期間中、FMPの局在を追跡するため、毎週、頭部、腹部、尾部の3部位の写真を撮影し、途中で死亡したものは死亡日を記録した。

【研究背景】
マイクロプラスチック(MP)は、野生生物や人間の健康に対する潜在的なリスクがあるとされ、世界的な生態学的懸念事項となっている。広く実証されているように、MPはさまざまな経路を通じて環境中に流入する。野外および実験室での研究によると、魚類は特にMPを摂取しやすい。魚がプラスチックを餌と誤認して食べたり、水中に浮遊しているものを偶発的に取り込んでしまったりなど、直接プラスチックを摂取する一次摂取、あるいはすでにプラスチックを摂取した獲物を魚が食べることで生じる二次摂取のいずれかを通じて摂取は起こる。このプロセスは「栄養段階移動」として知られており、水生食物網内でのMPの生物蓄積および生物濃縮を引き起こす可能性がある。そのため、食物連鎖全体におけるMPおよびナノプラスチックの存在量を監視するための、正確な検出法およびイメージング手法の研究の必要性が高まっている。
一方、我々はN-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)変異誘発法を用いて、透明な金魚系統の確立に成功している。本実験では、この系統を用いることでMPが水中から魚の体内に取り込まれる様子を解剖せずにモニターした。
【研究の成果】
本研究では、透明な金魚を用い、FMPsを併用することで、魚の体内におけるMPsの動態をモニタリングするバイオイメージング手法を用いた。FMPは鰓および損傷した鰓組織に高濃度に蓄積し、魚の死を引き起こした(図2)。この結果は、鰓が魚の体内においてMPによる損傷を最初に受ける組織であることを示している。今回の実験により、環境水中のMPが魚の体内に取り込まれるメカニズムや、魚の体に及ぼすMPの影響について貴重な知見が得られた。本研究は水中のMPがもたらす影響をより包括的に評価する一助となり、水生生態系におけるプラスチック汚染が及ぼす影響をさらに明確にした。

【今後の展望と波及効果】
MPが体内に取り込まれる様子が明らかになり、その危険性がより明確になった。今回は明確な効果を調べるために極めて高濃度での実験としたが、今後は環境中に実際に存在する低濃度での影響を調べる必要がある。
今回、実験モデルとしての透明金魚の有用性が示された。従来、魚類ではモデル生物としてゼブラフィッシュが広く用いられており、ゲノム編集技術の普及でさらに利用が広まっている。しかし金魚も実験動物として依然として明確な利点がある。それはゼブラフィッシュに比べ、金魚は体が大きいということである。神経科学の研究では脳の外科的手術を行う際、脳の大きい金魚の方が扱い易い。生理学の研究では、ホルモン濃度の変動を調べるために採血をする際、金魚の方が十分な量を採取できるとともに、金魚であれば、同一の個体から定量可能な量の血液を継続的に採取することも可能である。繁殖や飼育が容易であることを考慮すると、金魚は今後も重要な実験モデルであり続けると期待される。透明金魚はこれらの金魚の実験魚としての有用性に加え、今回の研究のように体内の状態をリアルタイムでモニターできるという大きな利点を持つ。今後、様々な研究分野での利用が期待される。
【論文情報】
掲載誌名: Toxicology Mechanisms and Methods
論文タイトル: Real-time monitoring of microplastic accumulation in fish bodies using transparent goldfish revealed initial attack on the gill
著者: Md Abul Bashar, Saokat Ahamed, Takumi Mouri, Md. Almamun Farid, Mohammad Maksudul Hassan, Yuna Uehara, Chihiro Yamamoto, Toshinobu Tokumoto
DOI: 10.1080/15376516.2026.2648855
【研究助成】
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) JP23K05830
【用語説明】
(注1)透明金魚:
体に模様が無く白色の金魚であるミューズを元にエチルニトロソウレア(ENU)による点突然変異誘発技術により開発された。幼魚の段階では全身が透明で体内の様子が解剖しないでも観察できる。成魚になるにつれ白色色素が目立つようになり半透明となる。今回の実験では用いなかったが、ゲノム編集技術で白色色素を合成できなくした高度透明金魚系統も作出されている。
(注2)マイクロプラスチック(MP):
直径5mm以下のプラスチックの総称。自然分解されず海に蓄積し、海洋生物や人体への影響(有害物質の吸着・食物連鎖による摂取)が懸念されている。
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