途上国を専門とするNPOメディア「ganas」、経済崩壊で生活苦に陥ったベネズエラ人から学ぶ『命のスペイン語レッスン』(11期)の受講者募集
新しい国際協力のカタチ。ベネズエラの事情・文化も知れるし、受講者同士のオフ会も!
国民の95%以上が「貧困」に、およそ4分の1が「難民」になってしまった国があります。南米のベネズエラです。
ベネズエラでは経済が崩壊し、世界最悪のインフレがほぼ10年にわたって続いています。ウクライナ危機やミャンマーの軍政反対運動のような「派手さ」がないことから日本ではまったく注目されません。ですが、米国の通信社が毎年発表する「最も惨めな国ランキング」で6年連続1位になるほど事態は深刻なのです。
不運な境遇に生まれてしまったベネズエラの人たちを少しでも助けようと、途上国・国際協力に特化した非営利メディアの「ganas」(運営:NPO法人開発メディア)が3年半前に立ち上げたwin-winのプログラムが、経済崩壊で生活苦に陥ったベネズエラ人から学ぶ『命のスペイン語レッスン』です。第11期生の募集をこのほどスタートします。
第11期の受講期間は2023年11月8日~2024年4月30日のおよそ6カ月。ベネズエラにとどまるベネズエラ人からオンラインでスペイン語を学びます。レッスンはマンツーマンですので、スペイン語の初心者から上級者まで、ご自身のレベルにあったレッスンを受けられます。ベネズエラ人講師が頑張ってスキルアップしてきた結果、これまでの受講者からは「レッスンの質はお値段以上。同じようなレッスンを日本で受けたら10倍はすると思う」と好評を得ています。
『命のスペイン語レッスン』では、スペイン語を勉強できるだけではありません。大きな特徴のひとつは、受講者の皆さまからいただくレッスン料の大半をベネズエラへ送金することです。クラウドファンディングや寄付といった一過性の支援ではなく、「スペイン語講師」の仕事をきっちりしてもらい(すべての講師はスペイン語の教え方の訓練を受けています)、その報酬として毎月払うのがミソです。
おかげさまで2020年5月以来、3年半にわたってノンストップで継続できています。新しい国際協力のカタチ。
■ベネズエラの難民はシリアより多い
ベネズエラの経済はいま、どうなっているのでしょうか。
その国の経済規模を表す国内総生産(GDP)をみると、ベネズエラのGDPはわずか3年(2017~20年)でなんと半減しました。1人当たりに換算すると、驚くことに60年以上前(1960年ごろ)の水準に戻ってしまったのです。考えられますか? 極貧を含む「貧困層」の割合はいまや95%を超えます。
ベネズエラの2023年8月のインフレ率は年換算で422%(おそらく世界最悪)。ハイパーインフレが始まって以来、ベネズエラの通貨であるボリーバルの価値は99%失われたといわれます(数回にわたるデノミネーションでゼロをいくつとったのかわからないほど)。
想像しやすいように日本円にあてはめてざっくり説明すると、400万円だった年収が4万円に、100万円あった貯金が1万円に激減したということ。どうか自分事だと想像してみてください。こうしたありえないことが起きているのがベネズエラなのです。
経済が崩壊して以来、ベネズエラ国民のおよそ4分の1(2023年8月5日時点で約771万人)が難民として国外へ逃れました。520万人(2023年8月時点)といわれるシリア難民の数を上回ります。国際通貨基金(IMF)の予測によれば、ベネズエラ難民の数は2025年までに840万人に達するとも。ベネズエラでは紛争も、自然災害も起きていないというのに‥‥。
最近では、米国へ渡ろうとするベネズエラ難民が急増しています。ベネズエラから米国へは飛行機で飛んでも十数時間。それをバスや徒歩で目指します。その途中のコロンビアとパナマの間には、命を落とす危険がある悪名高いダリエン地峡(パンアメリカンハイウェーも通っていない密林・湿地地帯)が横たわっています。ここはおよそ10日間にわたって泥道を歩くしかありません。最低限の水と食料を担いで‥‥。
ベネズエラ人はこう口をそろえます。「難民になった知り合いをもたないベネズエラ人はだれもいない。ダリエンを越えるベネズエラ人もいまや珍しくない」と。
■世界で「最も惨めな国」に陥ったわけ
経済崩壊のきっかけを作ったのは、反米・社会主義を掲げたものの経済政策の失敗を重ねたチャベス前大統領(2013年に死去)と、その後継者のマドゥロ現大統領との見方が一般的です。
ベネズエラで何が起きたのか、を単純化して説明します。
チャベス前大統領は2000年代、貧困層にお金を回すために、外資系の石油会社を国有化したり(いわゆる資源ナショナリズム)、モノの価格を統制(安い価格にした)したりしました。一見すると、良さそうな政策に映るかもしれません。ところが結果は、想像を絶する最悪の事態(最大で200万%超のハイパーインフレ)を招いたのです。
外資系の石油会社を国有化したところ、新規の油田開拓や経営がうまくいかず、石油生産量は落ちていきました。2015年から2020年ごろまで続いた国際的な石油価格の下落と相まって、石油収入は激減。石油からの収入はベネズエラの国家収入のおよそ8割を支えていただけに、インパクトは半端ありません。
モノの価格を統制したら、どうなったのか。生産側からすると、モノを作っても儲からなくなりました。国内の産業はつぶれていきます。輸入への依存度は高まるばかり。結果として、ベネズエラ経済は「死に体」となってしまったのです。
財政赤字を埋めようと、国営の石油会社(PDVSA)の利益を増税などでより多く吸い上げたら、新規投資どころか、石油設備のメンテナンスに回すお金が不足。石油の生産量が減り続けていく悪循環に拍車をかけていきます。
ちなみにベネズエラは世界最大の石油埋蔵確認量をもつ国。なのにイランから2020年、ガソリンを輸入しました。ガソリン代はいまや、1リットル1~2ドル(150~300円)もします(正規の価格は50セント<約75円>ですが、この価格で手に入れるのは極めて難しい)。
国家財政が立ち行かなくなったため貨幣をたくさん刷り、その結果起きたのがハイパーインフレです。そこに追い打ちをかけたのが米国の経済制裁(簡単にいうと、米国企業と取引できなくなった)。国民の95%以上が貧困に陥り、国民のおよそ4分の1が難民として国を去ったのは前述のとおりです。
2000年代は「反米の旗手」ともてはやされたベネズエラは悲しいことに、米国の通信社ブルームバーグが毎年発表する「最も惨めな国ランキング」で6年連続1位になってしまいました。
■収入は1日たったの18円
ご存知ですか。ベネズエラの1カ月の最低賃金がわずか130ボリーバル(3.7ドル=約550円)であることを。30日で割ると1日12セント(約18円)。日本で言えば小学生のお小遣い並みです。
インフレが凄まじい(モノによっては日本並みか、それ以上の物価)ベネズエラで、これでは到底暮らしていけません。しかもこの金額で家族を支えないといけないのです。
世界銀行が定める貧困ラインは1日1.9ドル(約280円)。この数字を大きく下回るベネズエラ人の暮らしがいかに悲惨か、容易に想像できると思います。
ベネズエラの主食であるトウモロコシの粉は地方だと1袋(1キロ)1.5ドル(約224円)します。5人家族の場合、これは1回の食事でなくなる量。ですがこれだけで月収のおよそ4割を占めます。
困窮する庶民は1日1食に、または食べる量を減らしたり、収入を少しでも増やそうと家で食べ物を作って路上で売ったり、山へ金を掘りに行ったり(ゲリラが支配しているため治安が悪く、犯罪に巻き込まれることも)、ごみを漁って食べ物を探したりしてなんとか糊口を凌いでいます。
何とも言えない気持ちになるのは、経済崩壊で仕事を失った人たちを行政(市役所)が最低賃金(最近はこれに加えて、毎月20ドル<約3000円>程度のボーナスが出るそうです。と言っても合計でたったの3550円)で何人も雇っていること。雇ってもらう人たちは、わずかな収入でも毎月欲しいから、自分たちを困窮させた政府に対して「ノー」と言えなくなります。なんという皮肉。ある意味、口封じのやり方です。
■5日間ノンストップの停電も
ベネズエラでいま深刻なのは「停電」です。状況は悪化の一途。電力供給を優先的に受ける首都カラカスはともかく、地方だと、電気が1日に8回止まることもざら。ひどいときはノンストップで停電が5日続くこともあります。
水の供給も最悪。メンテナンス(お金がかかる)を長年怠ってきたツケから、停電していなくても水道がほぼ出ない場所がほとんど。どうか想像してみてください。水なしで過ごす地獄の日々を。
ベネズエラ政府がしきりにPRする国民への配給(CLAP)制度も十分に機能していません。コメやトウモロコシ粉、パスタ、砂糖、食用油などをカラカスでは1カ月に1回のペースで配るだけ(全員がもらえるわけではない)。にもかかわらずマドゥロ大統領は「危機は起きていない」と繰り返します。
ただ現実として生きていけない。だから難民として国を出る。これは否定できない事実です。
かといって政府を批判するとどうなるか。命の危険にさらされます(マドゥロ政権をSNSで批判するベネズエラ人のほとんどは国外に住んでいる人たち)。
国連人権委員会は2020年9月、マドゥロ政権が「司法を無視した処刑」「不法な拘留」「強制失踪(政府に拉致され、行方不明になること)」「拷問」にかかわっていると糾弾する報告書を出しました。
ベネズエラ国民を直接取り締まるベネズエラ国軍には、汚職で私腹を肥やす幹部も少なくないといわれます。マドゥロ政権が倒れない最大の理由は、こうした軍への配慮があるからです。汚職はますます増えていきそうです。
ベネズエラでは2020年12月6日、議会選挙が実施されました。ですが野党がボイコットしたため当然、与党は勝利。ただ投票率はたったの30%超でした。早い話、野党だけでなく、有権者も選挙をボイコットしたのです。独裁がますます強まるなか、「マドゥロ大統領に歯向かうと命を狙われる。ベネズエラ人の多くはもう諦めている‥‥」とベネズエラ人の多くはため息をつきます。
ですがベネズエラでは2024年、大統領選があります。それを踏まえて野党の統一候補を決める予備選挙がこの10月下旬に実施される予定です。ベネズエラ国民が期待する候補者の名前はマリア・コリーナ・マチャド氏。女性で、元国会議員です。反体制派の政治家がどんどん寝返るか、亡命していくなかで、現状を変える唯一の望みとなっています。
■国際社会からの支援は極端に少ない
ベネズエラへの海外からの援助は他国と比べて極端に少ないことも問題です。
チャベス、マドゥロ両政権が引き起こした経済崩壊、米国の経済制裁、国際社会からの支援が極端に少ないこと、コロナ禍、ウクライナ危機‥‥こうした要因が重なって、日々の食べ物にも事欠く「極貧層」の割合は増えるばかり。またコロンビアをはじめとする近隣国へ逃れるベネズエラ難民も増えるばかり。
世界から見放された国、ベネズエラ。ここが、ウクライナやシリア、ミャンマーなどとの決定的な違いです。日本のメディアが取り上げないこともあってか、日本のNGOで、シリアやミャンマー、ウクライナを支援するところはいくつかあっても、ベネズエラは聞いたことがありません。おそらくganasだけです。
窮地に追い込まれたベネズエラ人を助けるプロジェクト、それが『命のスペイン語レッスン』なのです。
といってもお金をただ渡すことはしません。ganasが提供するスペイン語講師の仕事をきちっとやることで、彼ら自身が責任をもって稼ぐのです。なぜなら寄付は永続的ではありませんし、ベネズエラ人にとってはスキルを身につけ、それを使って稼ぐことは長い人生で必須ですから。また、たとえ“国ガチャ”“時代ガチャ”に外れたとしても、ベネズエラ人には日本人と同じようにプライドがあります。
■だれも生まれる国を選べない
『命のスペイン語レッスン』は2020年5月に正式スタートしました。嬉しいことに、過去10回(合計3年半)で延べ718人(おかげさまでリピーターが多いです)の社会人・学生に受講していただきました。ベネズエラ人講師らの家族の生活は劇的に改善されています。心から感謝を申し上げます。
下は、彼らから届いた声です。
「4人家族の分の食料を買えるようになった。この仕事を続けることで、子どもの服や靴も買いたい」(第10期から加わった新しい講師)
「父が腎臓結石を患った。この仕事のおかげで半年分の治療費を出すことができた」(継続している講師)
「家族全員が普通に食事をとれるようになったし、家族の服も買えるようになった」(継続している講師)
「病気の夫のために薬を買えるようになった」(継続している講師)
「電気の供給を受けられるようになった(壊れていた機器を直した)」(継続している講師)
「井戸を掘ることができた(水が手に入るようになった)」(継続している講師)
(レッスン料の一部は、講師の家族ではない貧しい子どもたちや高齢者、障がい者へ服、サンダル、食事、薬などを渡すお金に使っています。また子どもを対象に、楽しみながら学べるワークショップも時々開いています)
第11期(2023年11月8日~2024年4月30日)は3~4人のベネズエラ人が講師を務め、それに加えて2人が教材を作る担当となる予定です。彼らにはそれぞれ支えないといけない家族がいます。
皆さま、苦境のなかを必死に頑張るベネズエラ人(スペイン語の講師を任せるので、優秀で責任感のある人を厳選しています)を応援していただけませんか。
絶対に忘れてはいけません。人はだれも生まれる国を選べないことを。悲しいかな、危機はウクライナやミャンマー、シリアだけではないのです。
世界最悪の経済危機がベネズエラで終わるまで、ganasは『命のスペイン語レッスン』をやめることはありません。
■『命のスペイン語レッスン』の3つのメリット
①スペイン語をマンツーマンで好きな時間に学べる!
②現地の政治・経済・文化も知れる!
③頑張るベネズエラ人を支援できる!
■これまでの受講者の皆さまの声(抜粋)
「今まで参加したことのある外国語教室の中で一番楽しい。先生のお人柄とプロ意識が質の高いレッスンに結び付いていると思う。ベネズエラのことももっと教えてほしいし、もっと聞くことができるようにがんばりたい」
「スペイン語が初心者の私に、先生は真摯に対応してくれたので、学習意欲が増した。お互いの国の写真を送り、それについての情報や考えを交換できたのは私にとって大変良い刺激になった」
「教え方がていねい。私は文法を一応かじっており、先生もそこを考慮して授業を進めてくれた」
「テキストとボイスメッセージのやりとりなので不安があった。でもボイスメッセージの音はかなりクリア。また写真も受信でき、問題なくレッスンできた。ビデオ通話のようなリアルタイムのコミュニケーションではないけれど、そのぶん、しっかり考える時間がもてるし、先生の質問にも落ち着いて答えられる。私にはこっちのスタイルがあっていた」
「先生の熱意がすごい。レッスンの日時が選びやすい」
「講師の質が高い。間違いをていねいに訂正してくれ、弱点を強化するような宿題を出してくれる。私はwritingを練習したいのでWhatsAppでのやりとりが適している」
「先生は受講生の状況をよく理解してくれて、初心者の私にはゆっくり基礎から教えていただけた。音声テキストも活用してスピーキング、リスニングの練習もできる。意思疎通が滞るときには、授業についてきているかを随時確認してくれる。また、受講する側も思いやりをもった返答をすることを心がければ、お互いに気持ちの良いレッスンを作り上げることができる」
「僕は読み書きよりスピーキングに慣れたくて、ボイスメッセージをテキストとあわせて使っている。先生はとてもフレンドリーで、話題や進め方などの要望に柔軟に対応してくれる。文法についても教材や例などを準備してくれているので助かる」
「とにかく先生が熱心に教えてくださるのでモチベーションが上がる。また授業中の練習・宿題はこちらのレベルをくみとってちょうどいいものを出してくれる」
「辞書を使いながらであっても、少し長めの文章が読めるようになったのがうれしかった! 先生から送られてくるベネズエラの食べ物や行事などの写真から、生活の様子を知れるのも楽しい」
「いままではスペインでしかスペイン語を学んでこなかったため、ベネズエラの文化や暮らしぶりに驚かされた。それでも遠い地で懸命に生きている人の姿を見て、心を動かされるものがあった」
「ベネズエラの政治や地理、文化をコンテンツに問題を出してもらえるのが良かった。スペイン語力を向上させるだけではなく、ベネズエラについても深く知れる」
「ベネズエラのインフレ、ドル取引の現状などを教えてもらった回が、ベネズエラ経済がよくわかり印象に残った」
「停電があったり、受講者のレッスンスケジュールの変更があったりして先生も調整が大変だと思う。そんななか、いつもきちんとレッスンをしていただいて感謝している」
「ボイスメッセージとテキストだけでの語学学習は初めてだったが、意味を調べたり、文章を考えたり、メモを取る時間が自分のペースでとれる」
「試験の前にはそれに応じたレッスン内容にしてくれたり、発表の機会があった時は自分の書いたテキストを見てもらったり、聞いてもらったりできる」
「気になるベネズエラニュースを講師にピックアップしてもらい、それを読みあうレッスンが良かった。ベネズエラの現状について知れる」
「他のスペイン語教室より、テキストや講師陣の授業計画など、質が高いと感じた」
「仕事が終わった後の夜遅い時間にレッスンを受けているが、ベネズエラの先生はいつも早朝。早起きしてレッスンしていただき、本当にありがとうございます!」
「教材が工夫されている。自分の弱い文法に関するレッスンをリクエストしたら、次のレッスンで教材を準備して取り上げてくれた」
「レッスンの質がお値段以上で圧倒的に安い。同等のレッスンを日本で受けると10倍すると思う」
「ベネズエラの文化について学べるのがいい。特にカーニバルのトピックはおもしろかった」
「ベネズエラの薬草や花のお茶の効用を当てるクイズは興味深かった」
■期間
2023年11月8日(水)~2024年4月30日(火)。ただし2024年2月1~7日はお休みさせていただきます。時間帯(日本時間)は7~12時、19~25時。この中から自由に選んで、予約していただきます。
■レッスン料(6カ月分)
・ganasサポーターズクラブのパートナー/サポーター: 2万円(1カ月当たり3333円)
・一般:2万5000円(1カ月当たり4166円)
・ライトプラン(お試しコース):1万5000円(1カ月当たり2500円)
■定員
100人(先着順)
■締め切り
2023年11月1日(水)
■申し込み方法
*上のリンク(グーグルフォーム)をクリックして手続きしてください。
■主催
特定非営利活動法人開発メディア(途上国・国際協力に特化したNPOメディア「ganas」の運営団体)
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