デジタルツイン上に人の行動を高精度に再現する技術を開発し、英国ワイト島にてシェアードeスクーターの運用改善に向けた実証実験を開始

富士通株式会社

当社は、人々の行動を高精度にデジタルツイン上に再現することで、人々の行動の変化を予測し、施策の効果や影響を事前に検証可能とするデジタルリハーサル技術を開発し、英国でシェアードモビリティ事業を展開するBeryl(注1)社の協力のもと、英国ワイト島におけるシェアードeスクーターサービスの運用を改善する施策の導出を目指し、2023年4月1日より本技術を適用した実証実験を開始しました。
行動経済学とAIを組み合わせたデジタルリハーサル技術は、利益よりも損失を過大評価するといった人の行動における非合理性に加え、天候などの間接的な影響要因も含む実世界の人の行動に近いモデルをAIで生成し、実際の都市を再現したデジタルツインと融合させることで、天候や周辺環境などの条件変化や施策による人の行動の変化を予測し、高精度に検証することが可能になります。
実証実験では、ワイト島の各所に設置するシェアードeスクーター数の変更や、特定場所への返却による使用料の割引などの施策による人々の移動手段の選択の変化により、例えば車からeスクーターに乗り換えることによる地域のCO2排出量削減や移動者の利便性における効果、サービス運用コストへの影響などをデジタルリハーサル技術で事前検証します。本実証実験を通じて、Beryl社の事業への貢献や、車の使用による環境や社会への悪影響の低減などを通じたワイト島の交通政策や経済全体への貢献を目指します。
当社は、本実証実験で得られた知見をもとに、モビリティサービス事業者のサステナビリティ・トランスフォーメーションを支援するとともに、今後も、人文社会科学とデジタル技術を融合するコンバージングテクノロジーの取り組みを通じて、持続可能で公平かつ多様性のある社会の実現に貢献します。


本技術は、2023年4月20日(木曜日)に開催される「Fujitsu ActivateNow Technology Summit (Madrid)」、および2023年4月28日(金曜日)から4月30日(日曜日)に開催される「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合『デジタル技術展』」にて出展予定です。

 【 背景 】
近年、デジタル技術の進展であらゆる分野で世界がつながる中、社会課題が複雑に絡み合い、様々な分野において複数の観点で公平かつバランスの取れた解決策の立案が求められています。
当社は、複雑な社会課題の解決を支援するために、AIを含むICT技術に最新の行動経済学の知見を取り入れた技術群であるソーシャルデジタルツイン(注2)の研究開発を2021年より行っており、このたび、ソーシャルデジタルツインを構成するコア機能のひとつであるデジタルリハーサル技術を新たに開発しました。

【 デジタルリハーサル技術について 】
今回、AIによるビッグデータ分析と行動経済学の知見を融合し、状況に応じて変化する人々の行動を高精度に再現することで、施策による人々の行動の変化を予測し、施策の効果や影響を事前に検証可能とするデジタルリハーサル技術を開発しました。
行動経済学によると、人は事象が発生する確率の高低を過小評価する一方、損失を過大評価し回避する傾向があります(プロスペクト理論)。こうした非合理的な行動特性に加え、天候などの間接的な要因が個人の選択に及ぼす影響の特徴を様々な属性データや天候データを用いてAIに学習させ、人の行動選択モデルを開発しました。このモデルをデジタルツインと融合させることで、例えばイベントにおける周辺交通機関を利用する人の動線や、事故発生などによる交通状況に応じた人の行動の変化に伴う影響を、人の心理も踏まえたうえで高精度に事前検証することができます。

図1. 今回開発した行動選択モデル図1. 今回開発した行動選択モデル


【 実証実験について 】
1. 期間:
 2023年4月1日(土曜日)から2023年6月30日(金曜日)まで(7月以降も継続予定)

2. 内容:
 ワイト島におけるエリアごとの人口などの統計データや天気などのオープンデータ、ワイト島内の特定エリア間を移動した人数や時間帯といった人流データ、Beryl社より提供されたeスクーターの移動データを用いて行動選択モデルを生成し、デジタルリハーサル技術を用いた実証システムを構築します。
 本システムを活用し、地域住民をはじめとする人々の移動する時間帯や場所、ルートなどを予測しつつ、ワイト島内におけるeスクーターの配備場所や数の変更、特定の場所への返却による使用料の割引などの施策が、利用者の利便性向上に寄与しつつ、運用コスト削減や移動手段の選択変化によるCO2排出量削減を満たしているかを検証します。これにより、ワイト島における環境、社会、経済性の観点を踏まえて総合的に効果の高いシェアードeスクーターサービスの提供方法の導出を目指します。
 なお、本実証実験は、当社がLead Technical Partnerとして参画している英国のNational Digital Twin Programme(注3)において、英国ビジネス・通商省と協力して実施している広範な取り組みの一環です。英国ビジネス・通商省は、社会や経済、ビジネス、環境に貢献するデジタルツイン技術の開発を目的としており、National Digital Twin Programmeのもとでワイト島において技術実証を実施しています。

図2. デジタルリハーサル画面例図2. デジタルリハーサル画面例


【 英国下院 Bob Seely議員(ワイト島選出)のコメント 】
富士通によるワイト島での取り組みを強く歓迎します。富士通との関係はこの2年間続いており、我々はデジタルツインのパイオニアとして、現実世界とデジタルの仮想空間を組み合わせ、公共サービスや生活の質、環境を向上させるとともに、英国をリードすることを目指しています。テクノロジーとデジタルツインの限界を押し広げるため、富士通と引き続き協力していくことを楽しみにしています。

【 英国Cabinet Member for Infrastructure, Highways PFI and Transport. Phil Jordan議員のコメント 】
富士通との協力は、ワイト島の交通に焦点を当て、環境への影響を削減するためのデジタルツインの開発に向けた素晴らしい機会です。この実証実験は、Beryl社が運営するeスクーター事業と、その恩恵を得られる新技術を組み合わせて成功をもたらすものです。このデジタルツインを拡張してワイト島すべての交通手段を反映できるようにし、将来の交通手段の決定に役立てるために適用したいと考えています。今後の方針を示すためにより多くの情報を収集することで環境を改善し、住民や観光客にとってワイト島をより良い場所にできると思います。

【 商標について 】
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

【 注釈 】
(注1) Beryl(SMIDSY Limited の商号):本社 英国ロンドン、CEO Phil Ellis
(注2) ソーシャルデジタルツイン:実世界のデータをもとに、人や物の状態だけでなく、経済・社会の活動をまるごとデジタルに再現することで、社会の実態や問題発生のメカニズムを把握すると共に、多様で複雑化する課題の解決に向けた施策立案などを支援する技術群。
(注3) National Digital Twin Programme:2018年に英国政府によって設立された、デジタルツインによる英国の技術発展を目指すプログラム。

【 関連リンク 】
・富士通とカーネギーメロン大学、社会や経済における課題を解決するソーシャルデジタルツインの共同研究を開始(2022年2月8日プレスリリース):https://pr.fujitsu.com/jp/news/2022/02/8.html
・富士通CTOが語る、信頼性の高いデジタル社会づくりとは(2022年8月2日フジトラニュース):https://www.fujitsu.com/jp/microsite/fujitsutransformationnews/2022-08-02/01/

【 当社のSDGsへの貢献について 】

 

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。
 

 

本件が貢献を目指す主なSDGs本件が貢献を目指す主なSDGs


 
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会社概要

富士通株式会社

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URL
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業種
情報通信
本社所在地
神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1
電話番号
-
代表者名
時田 隆仁
上場
東証プライム
資本金
-
設立
1935年06月