シリア:化学兵器調査で示された政治的努力を人道援助へ向ける時
シリアの化学兵器をめぐる多大な政治的努力が、10月11日の化学兵器禁止機関(OPCW)へのノーベル平和賞授与で改めて強調された。国境なき医師団(MSF)は、同様の努力が次に注がれる先は人道援助提供の問題でなくてはならないと訴えている。
シリア国内では多くの地域が現在も、政府当局や激しい戦闘による移動制限で全面封鎖の状態にあり、命を救うための人道援助から隔絶されている。例えば、国連およびOPCWの化学兵器調査団が訪れた首都ダマスカス近郊グータ西部および東部では、薬の枯渇や食糧不足による栄養失調が医療関係者から報告されているが、それに対する援助は届いていない。
また、アレッポ県ではアッ=サフィーラおよびアブー・ジリンと周辺の国内避難民キャンプが数日にわたり激しい爆撃に遭い、1万8000世帯が安全のため退避を余儀なくされた。MSFが治療した重傷者20人には子どもも多く含まれるが、爆撃は続いており、避難世帯とは接触できずにいる。
<見過ごされる人道援助>
化学兵器をめぐる政治的意志は速やかに全会一致の国連安保理決議に結び付き、数ヵ月間封鎖状態にあった地域への調査団立ち入りも受け入れられた。非常に対照的に、人道援助をめぐる政治的努力の不足で、アレッポ県やダマスカス近郊は援助から疎外され、必須医薬品も内戦の前線通過を妨げられている。
外国人スタッフのシリア派遣は内戦当初から人道援助団体にとって悩ましい問題だった。しかし国連とOPCWの合同調査団の場合は比較的円滑にすすみ、わずか数週間で50~100人の化学兵器調査員がシリア入りした。他方、2年半の内戦の過程で、国連の人道機関は2013年3月、100名いた人員の半減を余儀なくされ、現在も再補充できずにいる。
MSF事務局長のクリストファー・ストークスは、「シリアでは、ニーズの膨大な地域を化学兵器調査団が差し支えなく通行できる一方で、人道援助団体の手配した救急車、食糧、医薬品は差し止めに遭うという不合理な状況にあります。影響力のある国々が、化学兵器に関する取り決めについて議論を重ね、実践に移しました。そして調査団の迅速な派遣という前例ができたのですから、10月2日の人道援助に関する国連安保理議長声明も早急に実行に移されなければなりません。MSFもダマスカスの中央政府、反政府勢力、そしてこの内戦に対し何らかの影響力を有する各国に、人道援助従事者の安全かつ円滑な活動と、特にニーズの多い地域への速やかな人道援助提供を保証するよう求めます」と訴えている。
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