【調査報告】フルタイム正社員、働き続けても追い詰められる暮らし――シングルファーザー当事者の声から浮かび上がる、私たちの社会が抱える現実
働き続けていても、家族で十分な食事をとることが難しい――。
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)が、当団体運営のフードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭へアンケート調査を実施した結果、保護者の多くが日常的に自身の食事を削っているなど、切迫した実情が明らかとなりました。
ひとり親当事者の50代男性・誠さん(仮名)は、正社員としてフルタイムで働きながらも、物価高や十分でない賃金のもとで食事がままならず、1玉の千切りキャベツを家族で分け合う日もあったといいます。
本記事では、アンケート調査に加え、質的調査として行った当事者インタビューを通して、数字だけでは見えにくい暮らしの実態を可視化します。

アンケート調査から見えた「食」の実態
フードバンク「グッドごはん」を利用するひとり親家庭を対象に、グッドネーバーズ・ジャパンが2026年2月~3月に行ったアンケート調査[1]において、物価上昇が続く中での暮らしぶりを質問した結果、「非常に苦しい」「やや苦しい」を合わせた割合が約9割に及びました。
また、同質問で暮らしぶりが苦しいと回答した人に対し、物価上昇の影響により普段の生活でよくとっている行動を尋ねたところ、「自分(保護者)の食事の量や回数を減らす」が最も多く選択されました(複数回答)。

厳しい暮らしの中、日々の食事を犠牲にせざるを得ない実態が示されました。
数字の裏側を知るために――当事者へのインタビュー
こうした傾向は、アンケート調査だけでなく、質的調査として実施した個別インタビューからも確認されました。
グッドネーバーズ・ジャパンは2026年2月、当事者の状況を把握するため、フードバンク「グッドごはん」の食品支援を利用するひとり親家庭の誠さん(50代・男性)にインタビューを行いました。
関西圏で暮らす誠さんは、介護福祉士として正社員で働きながら、シングルファーザーとして高校生の娘さんを育てています。加えて、70代の母親と、重度の障がいと難病がある妹とも同居し、4人家族の生計を担っています。
働き続けても、生活は追い込まれていった
誠さんは週5日間フルタイムで勤務し、夜勤にも入る生活を続けています。
「長年、高齢者施設で働いています。定時で帰れることは滅多になく、夜勤は月に6回くらいあります」

誠さんは20代半ばから介護職に携わり、現在の職場では20年近く働いてきました。しかし、賃金はほとんど上がっていません。
「物価高の中でも、給料は変わらないままです。しんどいですけど、どうにかやっていくしかありません」
就労による手取りは月におよそ19万円。児童手当や児童扶養手当を受け取っているものの、物価上昇も重なり、家族4人分の生活費を賄うには厳しい状況が続いています。また、離別した元配偶者からの養育費の支払いはなく、家計を支える収入は限られています。
打開策が見えない現実
生活が苦しくなる中で、誠さんは自治体の窓口にも相談に行ったといいます。
「収入と支出について、市の窓口へ相談に行きました。役所の人と収支を確認したうえで、減免の制度なども検討されましたが、もう該当するものはないとのことでした。
ですので、収入を上げるしかありませんが、実際のところ、なかなか上がらない状態です」
誠さんは、収支や公的制度について自治体とともに確認をしましたが、生活費について、これ以上大きく調整できる余地は限られていたといいます。また、長年働いてきた職場で賃金が大きく改善する見通しは立たず、生活を立て直すための有効な選択肢を見出しにくい状況に置かれています。
誠さんのように、賃金が伸びず、物価上昇の影響を受けながら家計のやりくりに困難を抱えているケースは、決して少なくありません。
フードバンク「グッドごはん」を利用するひとり親家庭を対象に、グッドネーバーズ・ジャパンが実施した先述のアンケート調査では、就労している回答者のうち、昨年に職場で賃上げがなかったと回答した人が6割近くにのぼりました。

食を切り詰める暮らし
物価上昇が続く中で、家計の負担は増し、誠さんは自身の食事を後回しにする日々が続いていました。
食品支援を利用する以前、食卓に並ぶことが多かったのは、安価で量を確保しやすい食材でした。
「もやしとニラをスープにして、それでお腹を膨らませることもありました。それからキャベツを1玉買ってきて、家で千切りにして、それをみんなで分けて食べていました」
こうした食事は一時的な対応ではなく、生活の中で繰り返されてきたといいます。
「こちらの食品支援を利用するようになって、お米が食べられるようになりました」
個人の問題ではなく、構造の問題として
誠さんは、介護職として長年にわたり現場で働き、専門性を積み重ねてきました。しかし、正社員としてフルタイムで働いていても、家族が十分な食事をとれるだけの生活を送ることが容易ではない状況に置かれています。
本事例からは、働き方や賃金水準、物価高といった複数の構造的・社会的要因が重なり合うことで、個人の判断や努力のみでは解消が難しい状態が続き、その影響が日々の暮らしに及んでいることが示唆されます。
また、保護者がひとりで子育てを担う家庭では、次のような状況に直面するケースも少なくありません。
・働ける職種や時間に制約が生じやすく、収入を増やすための選択肢自体が限られやすい
・仮に、転職など環境を変える選択を検討した場合でも、収入が一時的に下がる、雇用が安定するまでに時間を要するなど、生活に直接影響するリスクを伴う可能性がある
生活がすでにぎりぎりの状態にある立場で、こうした状況やリスクを打開して暮らしを再建することは、容易ではありません。
このような状況は、決して個人の選択や努力の結果として生じているものではなく、社会構造の在り方によって生み出されている側面があります。その結果として、生活費の中でも比較的調整しやすい食費を削らざるを得ず、保護者が自身の食事を抜いたり、子どもに十分な食事を用意したくても難しい状況が、現実として生じています。
グッドネーバーズ・ジャパンでは、低所得のひとり親家庭を対象とした無償の食品支援を2017年より継続していますが、現場では支援を必要とする家庭の増加を強く実感しています。配付拠点の拡充や、支援世帯数の拡大は喫緊の課題です。
一方で、こうした支援を必要とする家庭が増え続けないためには、同じ社会の中で生じている困窮した暮らしの実態を知り、それを個々の家庭の問題として捉えるのではなく、社会全体の課題として認識することが不可欠だと考えています。その第一歩として、現実の暮らしに何が起きているのかを共有し、課題への理解と関心を広げていくことが求められています。
[1]認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の収入・暮らしの状況に関するアンケート」(2026年2月~3月実施)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000128.000005375.html
<アンケート調査結果の引用・参照に関するお願い>
本アンケート調査結果を引用・参照される際は、出典として当団体名称「認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン」を明記いただけますようお願い申し上げます。
また、同調査は、グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象に実施したものであり、日本のひとり親家庭全体を代表するデータではございません。つきましては、本調査結果を引用・参照される際には、この調査の対象範囲が伝わる形でご使用くださいますようお願いいたします。
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<フードバンク「グッドごはん」へのご寄付に関して>
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、フードバンク「グッドごはん」を通じて、低所得のひとり親家庭へ食品支援を行っています。より多くのひとり親家庭へ支援を届けるため、活動へのご寄付を受け付けております。ご関心をお寄せくださる方は、下記ページをご覧ください。
■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。
公式サイト: https://www.gnjp.org/
facebook : https://www.facebook.com/gnjapan
Instagram: https://www.instagram.com/gn_japan/
■ひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、延べ17万を超える世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における約30~40か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2025年12月時点(配付拠点数は月により変動)
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です
■フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象とした各種調査について
グッドネーバーズ・ジャパンは、フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象に実施してきた各種調査の一覧を、以下のページにて公開しています。
同調査では、食事・収入・子どもの体験・孤立の実態など、ひとり親家庭が直面する多様な課題について、定量・定性的に可視化しております。ぜひご覧ください。
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