戦略実行の「加速装置」は機能しているか ——外部活用の成否は発注側の設計で決まる

日本の上場企業CxO・経営企画責任者向け第5回 意識調査結果を発表(4)

ローランド・ベルガー

株式会社ローランド・ベルガー(東京都港区、代表取締役:大橋 譲、以下「ローランド・ベルガー」)は、日本の上場企業CxO・経営企画責任者200人を対象に、生成AI時代における戦略実行の難しさについて「第5回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」を実施いたしました。

生成AIによって戦略を「描く」コストが劇的に下がったいま、企業価値を分けるのは戦略を描く力ではなく、描いた戦略を実行し成果に変える力です。本シリーズでは、生成AI時代における「戦略実行」をテーマに、なぜ戦略は実行されないのか、着手・完遂できる組織は何が違うのかを、調査データから解き明かします。

第1回|経営課題の重心は「策定」から「実行」へ
第2回|戦略実行を止めるのは「決められない組織」
第3回|鍵は「アジャイル組織」への移行
第4回(本稿)|外部協力会社を「加速装置」として使いこなす

なお、前回「第4回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」については、 こちら をご覧ください。

調査結果の主なポイントは2点です。
① 外部協力会社の活用は一般化しており、「起用したことがない」とする企業は1割にとどまる。一方で、期待通りの成果を継続的に得られている企業は3割未満にとどまり、多くの企業が“使いこなし”に課題を抱えている。

② 外部活用の成否を分けるのは、外部の能力だけではなく、発注側の設計にある。具体的には、発注側のオーナーシップと、プロジェクトの目的・優先順位に関する共通認識(経典)の有無が成果を左右する。さらに、戦略策定と実行を分断しない組織に求められる設計は、権限設計・経典・外部活用の3点に集約される。

*本調査における好業績企業とは、本調査において、競合と比較した時の自社の売上成長率に対する認識を「競合より良い」と回答した企業、業績不振企業は「競合より悪い」と回答した企業を指します。

① 協力会社の活用は一般化しており、「起用したことがない」とする企業は1割にとどまる。一方で、期待通りの成果を継続的に得られている企業は3割未満にとどまり、多くの企業が“使いこなし”に課題を抱えている。

第1回から第3回にかけて、戦略の実行から完遂に至るまでに必要な組織インフラについて論じてきました。

第一に、意思決定権限と役割の明確化です。これが定義されて初めて、プロジェクトを主体的に推進するリーダーシップが機能し、組織は自律的に動き始めます。

第二に、プロジェクトに関わる関係者間での認識統一です。なぜ取り組むのか、現在どの段階にあるのかといった基本認識が揃っていなければ、組織として十分な推進力は発揮されません。そのためには、重要情報を一元管理し、関係者の目線を揃え続ける「経典」の存在が不可欠です。

これらは、変革を動かすための社内インフラにあたります。そして、その上に位置づけられるのが、戦略実行を加速させるための外部協力会社です。外部協力会社は、あくまで組織の実行力を補完し、加速する存在であり、その機能は社内の設計が整って初めて発揮されます。

現在では、多くの企業が外部協力会社を活用しており、自社だけで戦略実行を完結させるケースは少なくなっています。「外部協力会社を起用したことがない」とする企業は1割にとどまり、外部活用はすでに一般化していると言えます。

一方で、期待通りの成果を継続的に得られている企業は3割未満にとどまっており、「活用しているが、使いこなせていない」という状況が広く見られます。

② 外部活用の成否を分けるのは、外部の能力だけではなく、発注側の設計にある。具体的には、発注側のオーナーシップと、プロジェクトの目的・優先順位に関する共通認識(経典)の有無が成果を左右する。さらに、戦略策定と実行を分断しない組織に求められる設計は、権限設計・経典・外部活用の3点に集約される。

外部協力会社の活用において課題として最も多く挙げられたのは「外部のスキルや貢献度の不足」でしたが、同時に、内部メンバのスキルやオーナーシップの不足を指摘する声も少なくありません。

しかし、これらは別々の問題ではなく、表裏一体の関係にあります。外部協力会社の成果は、外部の能力のみに依存するのではなく、発注側がどのように目的や役割、期待成果を定義し、プロジェクトを推進するかという設計に大きく左右されます。

特に重要なのは、発注側が主体的にプロジェクトをリードし、その中で外部協力会社に委ねる役割と期待値を明確にすることです。目的や優先順位が曖昧なままでは、外部協力会社は本来の力を発揮することができません。

さらに、 第3回 で示した通り、プロジェクトにおける共通認識が十分に醸成されていなければ、外部と内部の認識のずれが拡大し、実行のスピードと質の低下を招きます。そのため、関係者が常に立ち戻る共通基盤としての「経典」を整備し、意思決定と情報共有を一体で運用することが不可欠です。

外部協力会社を「加速装置」として機能させるためには、外部に依存するのではなく、発注側が責任を持って組織設計を行い、外部を組み込むことが求められます。

シリーズ総括|「実行の壁」を越える組織とは

全4回を通じて明らかになったのは、生成AI時代における競争優位が、「戦略を描く力」から「戦略を実行し、成果に変える組織能力」へと明確に移行しているという点です。

第1回 では、経営課題の重心が戦略の「策定」から「実行」へと移り、生成AIの普及後も実行率は大きく改善していない実態を示しました。

第2回 では、実行を止めている要因が戦略の質ではなく、「誰が決めるのか」が曖昧な意思決定構造にあること、そして現場リーダーが変革リーダーとして機能するかどうかが成否を分けることを明らかにしました。

第3回 では、戦略策定と実行を切り分けず、実行しながら戦略を更新し続ける「アジャイル組織」への移行と、その前提となる共通認識基盤である「経典」の重要性を示しました。

そして第4回では、外部協力会社を加速装置として機能させるためには、発注側の責任設計が不可欠であることを論じました。

これらを踏まえると、戦略実行力は個人の能力や努力によってではなく、組織の設計によって規定されるものであると言えます。すなわち、(1)誰が何を決めるのかを明確にする権限設計、(2)関係者の目線を揃え続ける「経典」の運用、(3)外部協力会社を加速装置として機能させる発注側の責任設計——これらを一体として設計し、戦略と実行を分断せずに回し続ける仕組みを構築することが不可欠です。

戦略を策定してから実行するのではなく、実行しながら学び、修正し続ける。この運用を可能とする組織を設計できるかどうかが、これからの企業価値創出を左右する決定的な要素となります。

本調査の結果を受け、ローランド・ベルガーの企業変革支援チームの責任者でシニアパートナーの田村誠一は、次のように述べています。

「戦略の賞味期限が短縮する中で、『策定してから実行する』という前提は成立しにくくなっています。求められるのは、戦略と実行を一体で回しながら更新し続ける組織です。重要なのは、個々の施策ではなく、権限・責任・情報・リーダーシップを横断した“設計”として捉えることにあります。」

ローランド・ベルガーの企業変革支援チームでプリンシパルの神谷洋次郎は、次のように述べています。

「戦略実行力は、個人や外部の能力ではなく、組織の設計によって決まります。具体的には、権限設計、『経典』による共通認識の運用、そして外部協力会社を加速装置として組み込む発注側の責任設計を一体で構築することが重要です。これらを通じて、実行しながら学び、修正し続ける仕組みを経営に組み込むことが前提となります。」

調査概要

  • 調査時期:2026年5月

  • 調査機関:ローランド・ベルガー

  • 調査方法:インターネット調査

  • 調査対象:全国、男女、20~70代、上場企業に属するCxO・経営企画責任者(CEO等の経営者/役員、または経営企画本部長/部長クラス)

  • 有効回答数:200名

企業変革は、企業や組織が将来に対応できるよう導くことを目的とするものですが、変革を統括することに加え、組織、人材、およびステークホルダーとのコミュニケーションといった、企業変革に密接に関連する現場における豊富な専門性が求められます。ローランド・ベルガーは、引き続き、あらゆる経営手法を活用しながら、継続的な企業価値の向上に繋がるよう日本の企業を支援してまいります。

著者

田村 誠一(シニアパートナー)

  • 変革参謀として、経営層と協働する企業変革支援に精通。

  • 官民ファンドで投融資責任を負い、投融資先企業の再生と変革を主導。

  • 経営実務を経験(元JVCケンウッド代表取締役副社長、元ニデック専務執行役員)。JVCケンウッドではCSO/CFOとして中長期戦略策定と実行、事業COOとして事業再構築と実行を主導。ニデックでは買収事業(欧米中)の成長を現地経営陣とともに主導。

兼子 佑樹(シニアプロジェクトマネージャー)

  • 変革参謀として、経営層/現場メンバと協働する企業変革支援に精通

  • 京都大学卒業後、日系シンクタンクを経て、ローランド・ベルガーに入社

  • 通信/IT、電子電機、製造業等を中心に、新規事業開発、事業戦略立案・実行支援など多様な機能軸でのご支援経験を保有

コンサルティングに関するお問い合わせ

ローランド・ベルガーの企業変革支援チームは、事業構造や財務構造の再構築、抜本的な収益改善、企業再生・変革を手掛ける業界横断型専門チームとして、クライアント企業の変革に向けた各種支援を行っています。

弊社お問い合わせ、または、お電話(03-4564-6660)にてご連絡ください。

ポッドキャスト配信

■ローランド・ベルガーは、ポッドキャストの音声によるビジネス番組「変革参謀 -当事者が語るリアル-」の配信を2025年6月に開始いたしました。経営コンサルタントながらも変革をリードしてきた『当事者』としての視点を持つ田村、野本(非常勤)の2人が「企業変革とは何か」「企業変革のリアルとは」について語り合うトーク番組です。

■大企業からスタートアップまで、すべての企業経営者、ビジネスリーダーを支えビジネスの手助けとなる発見や示唆を提供することを目的としています。詳細はこちらからご確認ください。

配信予定
- 毎週木曜 7:00 AM
配信先
Spotify 
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PRESIDENT Online: なぜ今、企業に"変革参謀"が必要なのか。人を、組織を、本気で動かすための極意とは

ローランド・ベルガーについて

ローランド・ベルガーは、世界有数の経営コンサルティングファームとして、幅広い業界と手法に対応するサービスを提供しています。本社をドイツのミュンヘンに置き、1967年の設立以来、あらゆる業界における、変革、イノベーション、そしてパフォーマンス向上における専門性と実行力に高い評価と信頼を得ています。すべてのクライアント支援でサステナビリティを両立させる理念を持ち、持続的な企業・経済の発展に向け取り組んでいます。
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"その決意、前へ" 

ローランド・ベルガー日本法人は、クライアントの現場と共に「変革参謀」となり、企業変革・PMI/バリュークリエーションが進んでいく状態を醸成し、日本企業の経営と変革の実現を支援しています。

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会社概要

URL
https://www.rolandberger.com/ja/Japan.html
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 35階
電話番号
03-4564-6660
代表者名
大橋譲
上場
未上場
資本金
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設立
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