【関西外国語大学】外国人材の受け入れが急速に進むビジネス現場の課題を探る「日韓異 文化ビジネスコミュニケーション実践フォーラム」が開かれました
日韓の研究者・実務家が、多文化職場づくりに向けた課題と解決策を議論しました
日本と韓国のビジネスの現場が直面している外国人材受け入れの急速な進展をめぐる課題を探ろうと10月3日、日韓の研究者が一堂に介する「日韓異文化ビジネスコミュニケーション実践フォーラム」が関西外国語大学(大阪府枚方市)で開かれました。

日韓異文化ビジネスコミュニケーション実践フォーラムは、「国際ビジネスコミュニケーション学会」と「韓国ビジネスコミュニケーション学会」による日韓学術交流の一環として、日韓文化交流基金の助成を受けて開催しました。外国人材の採用が急速に進む職場ではさまざまな問題が生じており、日本と韓国の専門家が、研究と実務の両面から議論し、外国人材と共に働いていくことができる職場づくりに向けて課題解決への糸口を探りました。
厚生労働省の外国人雇用状況によると、日本の外国人労働者数は2025年10月末時点で約257万人に達し、2008年の約5.3倍となりました。一方、韓国でも、企業の72%が外国人材を採用中または採用予定と報告しています(KOWORK, 2025)。外国人材を〝迎え入れる〟段階から、〝ともに働ける〟職場をいかにつくるかという段階に入っています。
「KOWORK」は韓国で働きたい外国人と、外国人材を採用したい韓国企業をつなぐ「外国人就職プラットフォーム」を運営している企業です。
フォーラムを通じて日本と韓国は「高コンテクストなコミュニケーション」「上下関係を重んじる組織文化」「文化の橋渡しを個人の善意や献身に頼りがちな構造」といった極めて近い課題を抱えていることが改めて分かりました。同時に「理念の共有」「書面化と明確化」「組織的な支援の設計」といった互いに学び合える具体的な方策も示されました。
大会実行委員長を務めた関西外国語大学の姜京守教授は「15年目を迎えた韓国ビジネスコミュニケーション学会との交流の節目に、韓国の先生方をお迎えできたことを大変うれしく思います。ご助成を賜りました公益財団法人日韓文化交流基金に心より御礼申し上げます」と謝辞を述べ「日韓の研究者と実務経験者が議論を重ね、両国の多文化職場が抱える課題がきわめて近いことを改めて実感しました。多くの留学生が学ぶ本学でこのフォーラムを開催できたことにも、大きな意義があったと考えています」と話しています。

歓迎の辞

菊池清明・関西外国語大学学長
フォーラムの開会に先立ち、菊池清明学長が英語で歓迎の挨拶を行いました。菊池学長は「国内外の研究者が一堂に会し、ビジネスにおける異文化間コミュニケーションについて議論を交わす機会は、国際的な研究交流の象徴です」と述べました。
基調講演
■チョン・ミニョン准教授(慶熙大学校)/職場を機能させるための「見えない仕事」がある

慶熙大学校のチョン准教授は、「Who Makes Diverse Organizations Work? – The Invisible Work Behind the Diversity Transformation」と題して英語で基調講演しました。チョン准教授はまず、自身が担当する学部の授業では受講生60人のうち53人(88%)が留学生で、国籍は28か国にのぼると紹介しました。そのうえで、多様な教室や職場が機能するためには、誰かが調整し、翻訳し、仲介しなければならず、それこそが「見えない仕事」であると指摘しました。
韓国企業では外国人材の採用が広がる一方、採用後の課題として「組織文化とチームワーク」「韓国語でのコミュニケーション」「職務能力の評価」が挙がっています。チョン准教授は、既存のやり方の活用と新しい可能性の探索を両立させる「両利き(ambidexterity)」の考え方を用いて、多様性のマネジメントには相応の負担が伴い、その負担が十分な権限を持たない中間管理職に偏っていると論じました。さらに、こうした負担が「リーダーになることへのためらい」を生み、多様性を支える人材そのものが離れていく危険性を、自身の研究に基づいて示しました。
結論としてチョン准教授は、「文化の違いに対応できる人材をいかに育てるか」から、「見えない仕事を担う人々にとって包摂が持続可能な組織をいかに設計するか」へと転換すべきだと提言しました。そして「私たちは多様性を受け入れている。しかし、受け入れることは理解することと同じではない」と締めくくりました。
研究報告

■村田和代教授(龍谷大学)/人手不足の補填から転換を
村田教授は、職場談話研究の立場から報告しました。日本の外国人労働者数が17年間で5.3倍に拡大し、国籍別ではインドネシアが2021年からの4年間で4.3倍に急増している現状を紹介しました。そのうえで、「人手不足の補填」から「多文化共生の職場コミュニケーションの構築」への転換が求められていると問題を提起しました。
ニュージーランド企業と日本企業の会議談話の比較や、在日外国人など66人へのインタビュー調査からは、敬語や上下関係、曖昧さの使い分けといった職場の暗黙のルールが、外国人社員にとって大きな障壁になっていることが明らかになりました。こうしたルールは日本人にとっては当たり前で、気づきにくいものです。
一方、外国人社員を雇用する企業の調査から、全員が発言する朝礼、母語の同じメンターの配置、企業理念の勉強会といった事例を紹介しました。ある参加者は「会社の理念が共通言語なんです」と語っており、多文化職場における理念共有の意義を端的に示すものでした。
■チャン・ヘジョン教授(慶熙大学校、韓国ビジネスコミュニケーション学会会長)/持続可能な多文化職場に向けた制度対策を
チャン教授は「Invisible Labor: How High-Context Culture Challenges Diversity Management in Korean Organizations」と題して英語で報告しました。チャン教授は、暗黙の手がかりに頼る高いコンテクストなコミュニケーションや根強い非公式ネットワークといった韓国の職場文化が、海外から来た人材との間に摩擦を生んでいると分析しました。

韓国ではこれまで、こうした文化の溝を埋める役割を、個々の中間管理職の「見えない仕事」と個人的な犠牲に頼ってきました。チャン教授は、IT・Eコマース、製造業、銀行業の事例をもとに、1人のリーダーに頼る多様性マネジメントの限界を明らかにしました。そのうえで、持続可能な多文化職場に向けた制度的な対策として、書面を優先した文書化、DEI指標の正式なKPIへの組み込み、全構成員を対象とした双方向の適応研修の義務化の3つを提言しました。

■松岡徹治さん(大阪公立大学、元パナソニック)/多文化職場では明確さこそ優しさ
海外勤務の経験が豊富な松岡さんは、パナソニックでの実務経験に基づいて報告しました。松岡さんは「多文化職場だからこそ、文化の違いの解釈に没頭するよりも、5W1Hを明確にして仕事を着実に進めるほうが効果的な場合がある」と述べました。そして、「空気を読む」のではなく「空気に頼らない」多文化職場づくりの重要性を説きました。
また、パナソニックの「企業は社会の公器である」という理念を、日本文化の押し付けではなく、国や文化を越えて共有できる企業倫理として位置づけました。そのうえで、多言語教材による新入社員研修や、節目ごとに原点に立ち返る理念研修などの事例を紹介しました。「信頼は文化理解だけでなく、迅速な返信や約束の履行といった日々の行動から生まれる」と述べ、「明確さは冷たさではない。多文化職場においては明確さこそが優しさである」との言葉で結びました。
パネルディスカッション

講演、報告を行った4人によるパネルディスカッションが英語で行われました。「多文化共生社会を支える日韓ビジネスコミュニケーション/教育・実務・人材育成の連携に向けて」をテーマに、会場の参加者を交えて活発な議論が交わされました。
【お問い合わせ先】
関西外国語大学 広報部
電話: 072-805-2817(日・祝除く午前9時~午後5時)
E-mail: press@kansaigaidai.ac.jp
■ 関西外国語大学
公式サイト https://www.kansaigaidai.ac.jp

「GO FOR it! 語学の、その先へ。」
関西外国語大学は、世界55カ国・地域の432大学(2026年10月現在)に広がる海外ネットワークを活かし、年間約1,300人の学生を海外へ送り出しています。大阪府枚方市にある2つのキャンパスでは年間約1,100人の留学生を受け入れており、日常的な国際交流が行われています。
語学力をベースに、文化や政治、経済など「+α」となる多様な専門分野を学ぶ教育体制を整えています。学生個々人の興味・関心に応じた、米国公認会計士の資格取得をめざす教育プログラム「USCPA Pathway Program」などの多様な学修を展開。学生は語学の先にある専門性を身につけ、これからの時代と社会の要請に応える確かな力を育んでいきます。
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