大型資本プロジェクトの80%超が予算超過、契約モデル見直しが焦点【A.T. カーニー】
2029年までに北米データセンター支出は3兆ドル近くへ。共有リスク型契約が、予見可能な成果の実現を支える契約モデルとして注目
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、論考『大型資本プロジェクトには新たな契約ロジックが必要である』(英題:Large capital projects require new contracting logic)を公開しました。
本論考は、大型資本プロジェクトの成果を左右する要因が、市場環境だけでなく、プログラムの構造化、統治、実行のあり方にあると指摘しています。従来型の契約モデルは、リスクを発注者または請負者の一方へ切り分けることで、安定した環境では予見可能な成果を生み得ます。一方で、新技術、能力制約、圧縮された工期が積み上がる局面では、誘因の不整合を生み、実行を阻害する可能性があります。
大型資本プロジェクトの80%超が予算超過、遂行能力の逼迫が契約見直しを促す
本論考によれば、大型資本プロジェクトの80%超は当初予算を大きく上回っており、超過の大半は計画、統治、実行上の問題に行き着きます。市場要因は変動的であるものの、大型プロジェクトにおけるコスト・工期乖離に占める割合は少数にとどまるとしています。
資本投資は産業をまたいで、設計、建設、設備市場へ圧力をかけています。北米のデータセンター支出だけでも、2029年までに3兆ドル近くへ達すると見込まれており、発電、送電網更新、先端製造、物流ネットワークでも同様の成長が見られます。こうした環境では、従来の契約構造だけで予見可能な成果を確保することが難しくなりつつあります。

固定価格・上限額・工数精算型はリスクを片側に寄せ、協働を阻害し得る
従来の契約構造は、リスクを過度に、あるいは全面的に一方当事者へ割り当てる点で、この問題に寄与しています。固定価格契約と上限額契約(NTE)は実行リスクを請負者へ、工数・実費精算型契約(T&M)は発注者側へ負わせます。この分離は、協働と共同での問題解決を妨げる誘因を生みます。誘因が共有されないと、問題は重大化するまで見過ごされやすく、正式な是正報告や会議で表面化する頃には、解決策より責任帰属に重心が移りがちです。特に、新技術、なじみの薄い地域、初めての請負関係、制約の強い調達市場、工期主導の工程が加わると、調整負荷が高まり、軌道修正の時間幅が縮まります。

約600億ドル・300件超の分析で、共有リスク型は一桁台半ばの性能改善を報告
リスク共有型契約は、契約境界をまたいでリスクを移転するのではなく、計画段階から完工まで、発注者と遂行パートナーの成果を結びつけるモデルです。プロジェクト成果が目標を上回れば双方が利益を得て、下回れば双方が影響を引き受けます。
約600億ドルの資本投資に相当する300件超の共有リスク型インフラ・産業プロジェクトの分析では、低い失敗率と、一桁台半ばの性能改善が報告されています。こうした成果は、顕在化しつつある問題の可視化の早期化、共同意思決定の迅速化、実行破綻の減少と結び付けられています。もっとも、すべての案件で同じ契約モデルが最適になるわけではありません。設計が成熟し、技術がなじみ深く、調達市場に余力がある場合には、従来型構造でも予見可能な成果を生み得ます。条件が混在する場合には、リスク共有型が均衡の取れた説明責任を与える選択肢となります。

論考について
論考名:『大型資本プロジェクトには新たな契約ロジックが必要である』(英題:Large capital projects require new contracting logic)
監修者
笹俣 弘志 シニア パートナー
A.T. カーニー シニアパートナー、エネルギー・素材プラクティス東京リーダー京都大学工学部原子核工学科卒業、コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。規制改革や脱炭素化が進む電力・都市ガス、通信系・石油系などの新電力、電力・都市ガス事業に関連するメーカー・金融・官公庁などに対し、シナリオプランニングを含む事業環境分析、成長戦略、海外事業戦略、買収・提携支援を実施。再エネ・蓄電池・VPP 事業などに明るい。内閣府 エネルギー・環境会議 コスト等検証委員会委員(2011 年)、同・需給検証委員会委員(2012 年)、京都大学特任教授(2014 ~ 2016 年度)を歴任。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。世界40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。
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